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聖坡。
彼の名前を口に出してみても、彼は現れない。

もう1週間。
やっぱり気まずくなって顔出せなくなったのかなぁ…。
別に、好き、ぐらいさ、友達同士でも言うし………多分。


もしかしたら、人付き合いが嫌いな聖坡はそう言葉に出されるのも、するのも、とても苦手なのでは…?そう思った。

内心、あの「好き」は俺が言ったのか聖坡が言ったのかわからない…。恥ずかしながら、俺も口走ったかどうか記憶があやふやなのである。だからこそ、俺からもアプローチしづらい。


俺も人付き合いは得意ではない。だからこそこのチミチミとした草むしりをやっていられるんだろうし、友達というカテゴリーはよくわからない。

イジイジしてても仕方ないのかもしれないけども…。
ブチブチ、雑草をむしる。昔はどの雑草を抜くべきなのが最適かむしってたのに、今ではなんでも生えてるもの抜きまくってる。もう花の芽とか抜いちゃってるんじゃないのか、これ。…いや、それは流石にだめだろ。

ダメだ、頭の中がむしゃくしゃして、収まらない。待っててもアイツは来ないし。

チャイムが鳴る。
昼休みの終わりを告げる音だ。今日も聖坡は草むしりにこなかった。




なんだか今日は廊下が騒がしかった。
次の授業が始まるから普通は教室の中でおとなしくしている生徒達がザワザワとしているのだ。

「あ、翠」
「太一。どうしたのこれ」

太一がザワザワとしているクラスメイト達を押し除けこちらへやってきた。

「それが実はさ、春山聖坡が事故に遭ったらしくてさ、今病院に……」



は?
事故…??


頭の中が真っ白になった。
聖坡が事故?なんで?病院?容態は?アイツは?無事なの?いま、どこに。





俺の頭の中は真っ白から真っ暗闇に包まれた。

どこにも星が見当たらなくて、俺には手の届かない場所へ遠く遠くどこか行ってしまうのだ。

星、星が欲しい。
暗闇は怖い、嫌だ、星が欲しい。


「俺が翠に星をとってきてあげるね」

聖坡。
聖坡はあるの?
聖坡には星が欲しくないの?





○○○○○○○○

「聖坡」

聖坡はベッドで眠っていた。
彼が交通事故に遭ったのは本当だったらしく、頭には包帯がぐるぐると巻かれていた。

「聖坡…」

聖坡の髪色は相変わらず真っ白で、色素がすっかり抜け落ちた色だった。
綺麗な顔もそのままで、目だけが開かず、ただ眠っていた。


聖坡のくれた星が瞬き出す。
一つは体温を感じて瞬きだし、一つは透けたガラスから金色を瞬かせて。


「聖坡、俺もキミに星をあげるね」

聖坡の手にそっと、星を触れさせた。
俺があげられる星は歪で何か特徴的なものでもなく、綺麗な形にはできなかったけど、俺のあげられるものを、あげるよ。


白い髪を掻き分けて、頬に触れる。

そっと唇に触れた。


冷たくしんなりとした唇が体温を移し、薄く柔らかいが、やんわりと開いた。


息を感じる。

顔をそっとあげれば、泣いた顔をした聖坡がそこにはいた。


「星を、どうやって?」

聖坡は涙をこぼしながら俺の作った星を握った。




「キミは星の作り方を知っているかい?」



きらきらぼし(上)・完



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