「ひこたん、どこ…?ひこたん、ひこたん、ひこたん……」
携帯は真っ黒の画面のまま。どうして出てくれないんだろう。嫌われた?いつも電話かけるから呆れられた?
都合良いタイミングで俺の危機に気づき、助けにきてくれる人間なんているわけない。
なのに、俺はヒコたんにそれを期待している。
それは、彼が俺の世界であり、一番であり、神であるからだ。俺の世界には彼が神様として存在しているのだ。彼は俺のことをわかってくれてるはずなのだ。彼しか俺のことを受け入れてくれないのだ。
…あーあ、嫌われちゃったんだ。
ぽっかりと心に穴が開く。
ここが世界の終わりだよ、と告げている。
はぁ。俺なんで生きてるんだろ。
『みんなに嫌われてるんだからいい加減わかれば?なに期待してんの?思い上がりすぎでしょ』
『ヒコたんが自分のものになると思った?自分のために助けに来てくれると思った?ばーか。そんな人間いるわけねーだろ。そんな都合よくいつもやってこねーよ』
『もーいいじゃん?死ねば?死んだら楽になるよ。死んだら俺がいらないこともわかって、万々歳だね』
あー……死ぬか。
もう、立ち上がる気力もない。
このまま、ここで野垂れ死んじゃうか。
そう思考を停止した。
「えっ!?だれ!?って、ゆりちゃん!?何やってんの、こんなところで!?」
あ….?
体育座りして地面に座り込んでいた。
雨にザーザーと打たれ、髪も身体もビッチョリ濡れた状態でギロリと声のする方を見る。
「うわっ、全身びしょ濡れで道のど真ん中に座ってなにしてんの?…………あ、もしかして、雨に打たれて失恋濯いでた的なやつ…?」
そう言って、傘を差し出し俺の顔を覗き込んでくる駿喜。
てめえ、空気読めよ。死ね。