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「……うるせえよ。アンタの方が不快なんだよッ!!!」
「!?っあ、ぐっ!!」


迷わず幸の首めがけて、摩っていた手を振り出した。
細くて白い首筋を両手の指で絡めとり、キツく抑え込む。


「…ッイ、っか、や、や、めろ…っ!」
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいッ。お前が死ねよ!お前みたいなのが、死ねばいいんだよ!!」


死ね、みんな死ねばいいんだよ。さっさと死ね。

ギュウッと力を込めれば、幸の薄い喉仏が上に上がった。
幸は下手くそな呼吸とブサイクな声を漏らし、急に発汗しては、汗滴をぼたぼたと流した。


「…ッ、か、ハッ、はな…ぇよ…ッ、ヒィ、ッグ、ゥッ」

幸が小さく吼えるが、苦しそうに顔を歪めて、呼吸はまともにできないくせに口から唾液を垂らす。

「ッひ、は、っぅぐ、はっ、や、ぁろ……ッ」


幸の顔色はどんどん赤くなり、曇り、青くなり、白くなっていった。


それとは反対に俺の頭の中はチカチカ真っ赤になって黒くなってを繰り返す。
興奮状態で、アドレナリンが止まらない。
俺はただ目の前の幸の首を圧迫し続けた。



「ッ、ハッ…!この甘ったれた状況がいつまでも続くと思うなよ!ヒコたんにはお前みたいなのが1番いらないんだよッ!!」


幸の顔直近で叫んだ。
指先がブルリと震え、幸が大きく目を開いた。


「ヒキュ、ッ…」

不自然な鳴き声と、ピクピク首元が痙攣した。


…そのまま死ねよ。



そう思った時だった。

ガチャリ、と金属音が聞こえた。

そのまま施錠を外す音が聞こえ、すぐさまギィッと木が軋む音がした。


「あれ?裕理いる?」

リビングのドア越しに、明るく爽やかな声が響いた。
この状況に場違いなほど穏やかな声だ。

「え…ヒコた、」
「…ッ、ぐ、!!」

ヒコたんの声に気が緩んでしまった。

幸の首を絞めていた手が弱まり、その隙に幸は思いっきり浮いた足で俺の腹を蹴り殴った。

「………っぐァァア!、!」

鈍痛が突然腹を襲い、痛みのあまり、幸の首を離した。
ダンッと押されるように俺はそのまま後ろへ、拘束を外された幸は地面へと急速落下した。

ガタガタガタッ、と人間と床にぶつかる鈍い音と床が振動を立てる。


「…!裕理!幸!どうしたんだ!?」

バタバタとかける音ともにヒコたんが現れ、別方向に倒れ込んだ俺たちを見て驚いた声を上げている。

「…っあ、ィ、はっ、な、なんでもない…喧嘩しただけ…っ、ハ」
「幸、なんでもないわけないだろ…!裕理、お前起き上がれるか?」

幸は未だに咳き込んで、目元に涙を浮かべているが、自力でゆっくりと立ち上がる。
一方、俺は幸の足が入った位置が当たりどころ悪く、痛みで倒れ込んだままだ。くそ、くそ、クソッ。痛くて、辛い。

ヒコたんが駆け寄ってきてくれて、なんとか身体を支えてもらいながら身体を起こす。
腹の痛みを堪えながら、浅く息を吐いた。

幸が立ったままこちらを見つめる。


「ッ…、今日言ったこと、忘れないでよ」
「は、はぁ、っは、…うるさいっ…」


絶対、ヒコたんから離れるものか。誰がなんと言おうと、俺にはヒコたんだけなのだ。ヒコたんにも俺しかいらない。

抑えた横腹はズキズキと痛かったが、俺は幸が部屋から出て行くまで彼をずっと睨み続けた。





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