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来はそのまま仕事がろくに手付かずで次の日を迎えた。
朝貴を泣かせてしまった後悔感とあの時朝貴が言った同情ではない気持ちがなんなのかもう一度知りたかった。
いつものように家の庭を箒で履き掃除をする。朝貴には午後、部屋前の花壇に行って会おう。来はそう決めて、掃除に徹した。

日は真上に来ておりそろそろ昼飯の時間になる頃合いだった。
見知れた使用人が黒い服を纏った複数名の男達と歩いている。客人だろうか?俺は失礼の当たらないよう頭を下げた。通り過ぎるまで下げ続ける。来は下を向いて足が遠くへ行くのを待った。
しかし、客人の黒い革靴が俺の前で砂利音を立てて止まった。
「おい、そこのお前、顔を上げろ」
俺は大人しく言われた通りそのまま顔を上げた。そこには黒い軍服に身を包んだ3人の男達が使用人の前に並んでいた。真ん中の男が声を上げる。
「お前、何者だ」
「こ、ここで働いているものです」
凄んだ言い方に驚きながらも答える。
「本当か?それにしては髪色も目の色も変だな。最近異国人が街を出回り迷惑行為を繰り返している。お前もその1人じゃないのか」

俺は違うと首を振った。伸びた茶髪は少し癖っ毛で赤い瞳と奇妙な見た目をしているが、着物を着て先ほどまで竹箒で掃除をしていた。見かねた使用人も彼は最近勤めだした者なんですよと弁解してくれた。
真ん中の男はフン、っと不満げに鼻を鳴らしたが、「まあここの家の主人に聞けばすぐわかるだろう」と言ってそこへ案内するよう使用人へ命令した。
基本的には家の管理は朝貴がしている。使用人もよく把握していて、俺の話が出てもすぐ対応してくれるだろう。そう思って箒を握りしめ、昼へ向かおうとした。
その時だった。使用人が「旦那様!」と声をあげた。
振り向けば、使用人と軍服の3人の男が庭に立っており、殊夜が黒い着物姿で肩に灰色の羽織をかけて縁側に立っていた。久しぶりに見た殊夜は髪を下ろしていて、綺麗な鼻筋や切れ長な目元は昔のままだったが少し気の疲れたような顔をしていた。
軍服の男達が声をかける。
「旦那様、こんにちは。お休み中に申し訳ありません。最近異国人たちが街へやってきては悪さをしているのでそれの見回りにきました」
殊夜は髪をさらりと流して冷淡な顔でそれはご苦労様ですと声をかけた。殊夜は面倒くさいと思ったのか後ろへ引っ込んでしまおうと部屋の襖に手をかけたが、あの真ん中の男がそれを止める。
「実はですね、先ほど使用人と言う異国の者を見つけまして。茶髪に瞳が赤い背の高い男なのですが、知っていますか?」
殊夜は機嫌悪そうに眉をしかめたが、襖を開きながら答えた。
「老人のような白髪に赤い目のした男は知っていますが、茶髪の人間は知りません。私は忙しいので、これにて失礼」
軍服の男は「それだけで十分です。ありがとうございました」とニタリと笑った。

それからはあっという間に軍服の男達に捕まり、腕を後ろに回されて縄できつく縛られた。誰も助けてくれる者はいない。彼らは政府から命を受けた軍の者たちだったからだ。口元もその縄で縛られる。雑な藁が頬にピリピリ当たり痛い。乱暴に男達に掴まれ、来は反抗する。しかし激しく拳で殴られ、気を失いかけながら屋敷の外に出されて荷車に積まれてしまった。

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