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部屋へ入れば蒼がベッドの上で上半身裸でズボンの前を開けていた。下着が間から垣間見えている。

呆然とした空を見ているのにも関わらず、蒼は笑って言った。
「ねえ、見て?俺はオメガを抱かなかったし、発情もしなかったよ。
俺はあんなアルファ達とは違ったんだよ、兄ちゃん」
蒼は立ち上がり、嬉しそうに空へ近寄って抱きしめた。蒼の肌が直接空に触れる。悦とした声音で蒼は空の頭を優しく撫でた。

「これで証明できた…兄ちゃんをもう一人ぼっちにはさせない、やっと自信が持てたんだ。
もしオメガが現れても見向きもしないし、運命の番なんか現れても殺してやる。兄ちゃんのずっとそばにいる。他のアルファが何かしようとしたって俺が兄ちゃんを守ってあげる」
蒼のアルファの空気が体を刺激する。ピリピリと体が逆立つ感じがし、背中にドロドロとしたものが這い上がった。空は拒絶感でいっぱいだった。
「兄ちゃんやっとこれで一緒にいられる」
しかし、空の腰に触れていた蒼は熱くなった。
硬くて大きくなった感じに空は嫌でもわかってしまう。空の顔は真っ青だろう。
蒼も、察してしまった空に気づいたのか、耳元に唇を近づけ優しくささやいた。
「兄ちゃん、好きだよ」







蒼の目なんか見なきゃよかった。

蒼の目を見たら俺はもう『アルファ』には逆らえない。全身の服を脱ぎ捨てられ、蒼ごとベッドの上にもつれこむ。いつもにおう蒼のアルファの香りを全身にまとい、空は体を震わせた。
蒼は空の後ろをいきなり漁った。細い穴に指は入らない。蒼はベロリと自分の指先を舌で舐めあげるともう一度後部へ指を突き立てた。
蒼の雄は赤くどくどくしく大きくなっていた。先ほどまで見えていなかった蒼の性に空はクラクラしてしまう。
後部には指は入っていて中の形を確かめられるように指を添わされた。
「はぁ、兄ちゃんの中こんなになってたんだ…すごいエロい……」
クイっと指を曲げられ、うっと空は声をあげた。不快感は拭えないが、徐々に後部は熱くなっている。空の体は蒼の香りと指を確かめているようだった。
「兄ちゃんが和正さんとヤッたときは本気でぶっ殺してやろうかとおもったよ。でも、兄ちゃんがあまりにもエロくて、すげー興奮した。毎日兄ちゃんのセックス動画見て抜いたよ」
押し曲げていた指は次第にどこかのツボを狙うよう空の内部を押し始めた。ギュッギュとされる感覚に空はビクリビクリと体を震わす。
「兄ちゃん、ここ弱いんでしょ?和正さんは器用だったけど兄ちゃんがどうしてほしいかは読めてなかったよね。ここ、もっと欲しかったんでしょ?」
グリグリと力強く指を押しいられる。空はその勢いにひゃあっと声を上げて体を震わした。じわりとペニスの先端が漏れる。
「我慢汁出てきたね。前と後ろ同時が良かったんでしょ?」
そう言って垂れた汁を開いた手で指になすりつけ扱き始め、アナルに入れた指はある一点を擦るように動かされる。
ぎゅうっと体を詰めるような快感に空は目からいっぱい涙がこぼれた。
気持ちいい、きもちいいっ…。
「あっ、あっあっ…」
声を漏らすと体がほぐれて快感に身を委ねられる。蒼が空に顔を近づけ、空の漏らす息を吸った。
「きもちいい?俺どんな風にしたら兄ちゃんがきもちいいのかばっかり考えてたんだよ。他のやつになんか浮気しないし、オメガの発情期が来ても勃てない。初めては絶対兄ちゃんとやるって決めてた」
ギュッと強くペニスを掴まれ、ああっと空は大きく声を上げた。
「でも兄ちゃん他の男とキスもセックスもしたね。学校で扱きあいなんてほんと変態。個室の隣で聞いてた俺のこと考えてよ」
クスリと笑って蒼は唇へキスした。
ジュッジュッと唇を吸われ、アナルの中の指はより強く空を攻めた。
「ぅぐぁっああっ…」
「ほんと殺したい。あんなにダメって言ったのにアルファに触らせるし、すぐ和正さんについて行くし…捨てられて落ち込んでるのもムカつく」
蒼は空のペニスを掴んだまま、後部だけ指を強く押し入れ激しく動かした。
「でも兄ちゃん、やっとわかってくれたね。俺ずっと兄ちゃんしか見てなかったんだ」
蒼の動きに、空はこの感覚を知っていた。
「い、いっちゃ、イッちゃう…!!」
「いいよ、イッて。兄ちゃんがイクとこ見せて」
ぐりっと押されて、空は体全身を震わせた。そのまま先端から勢いよく精液が飛び散る。突き刺さった指を締め付けるように後部が締まって伸縮する感覚が空もわかった。 

パタリと体をベッドに上に落とす。手も足も震えていて、息は荒い。蒼は空の唇へまたキスをして、体を密着させた。
濡れた熱い感じが尻縁に触れる。
「あぁ…やばいなぁ、早く入れたい…。オメガの膣なんて気持ち悪くて触れなかったのに、兄ちゃんの中はめちゃくちゃ突っ込みたい……」
意識が朦朧としながら、本当に蒼はさっきの男とセックスどころか局部すら触れなかったんだなと思った。
グイッと両足を持ち上げられ、蒼が入口へ先端を触れさせる。和正のよりは太くはないが長くて、大きな亀頭に空は息を呑んだ。
グリグリと先端へ押し入れられる。久々の感覚にパタパタと汗が空から落ちたが、慣れてもいる感じに体が緩まり先端が収まっていく。
じわじわと後ろに埋め込まれているのを空は感じて、ああ、気持ちいいなとだけおもった。

案外すんなり入ってしまった空の中をぎゅうぎゅうと蒼が押し込む。
「はぁ、兄ちゃ、すっげえ、きもちっ…」
空も和正と違う蒼の形に心臓をドキドキとさせた。
蒼はゆっくりと腰を動かしたが、ハァと強く呼吸をして、次は勢いよく腰を貪り始めた。ガツンガツンと打ち付けられる腰と蒼の雄に空は大きく喘ぐ。自分の快感に身を委ねた蒼の動きはそこまで気持ちよさはなかったが、蒼の匂いだけで空はとても興奮した。
激しい水音が響き始め、ベッドはギシギシと大きくなる。
空はただあっあっと声を漏らして呼吸を紡いでいた。そうすると、蒼は少し空から体を離し、空の体を反転させた。
正常位からバックの体勢にされ、枕に顔をつけた空は腰だけ持ち上げられ、強く一発腰を打ち付けられた。
「〜〜〜っああ?!」
体がビクビクと震え上がる。その瞬間蒼もビクリと体揺れた。しかし、次に蒼は空の腰を抱えて同じ場所を責め始めた。
急にこの体勢になると空は意識が真っ白になり始めた。先ほどまでの余裕が一切なくなる。蒼のカリが空の奥を擦りあげて、中がキュンキュンと熱い。
「っくそ…っ、兄ちゃん好きだ、好き、好きっ…」
「あ、ああっ、だ、だめっっ、ほんとに、きもち、きもちいいっ…からぁっ…!!」
しかし、蒼は聞かずにガンガンと空の奥を掘り進める。強烈な快感に空は何も見えなかった。
しかし、唐突に顎を持ち上げられる。蒼の熱い体が覆いかぶさってキスをした。うなじをベロベロと舐められる。
それは不毛な行為だ。空はオメガじゃない。
空はただ舌の這う感覚に気持ちよさだけを得た。
そして、蒼は前と同じように空のうなじに歯を立てた。


「ったぁいい!!!!」
かぶりついたまま蒼は腰を攻めたてる。空には何も快感なんてなくて、体が大きく揺すられる。本当にケモノになってしまったみたいだ。
番を結ぶ契約行為の『まねごと』に空は涙が出た。

どっぷりと中に蒼の精液が流し込まれた。初めて、腹が熱くなりビチャビチャと腸内を汚される感じに快楽のなくなった空は気持ち悪さを覚えた。
蒼はふうふうと空の背中で息を荒くしている。グッと空の体を抱え込んで、まだ長い射精感覚を味わっていた。

空は冷え切った体で絶望だけを感じた。底知れない背徳感と、傷ついた首後部に、蒼の息遣い。何もかも手遅れだと思った。
なのに、アルファの匂いは空の体を熱くさせる。

「兄ちゃん好きだ、兄ちゃんだけだ…。他のアルファにもベータにもオメガにもやらない、俺だけの兄ちゃん……」



「抱きしめて」
そう言葉にされた空は『アルファ』の香りに従うまま蒼を抱きしめた。









***************





いつしか、空が泣けば蒼は謝った。

「俺がアルファでごめんね」と。





また、もう一ついった。
「でも兄ちゃんがベータでよかった」


…オメガだったら別のアルファの男に番にされてたかも知れないからね。本当によかった。アルファなんかをたぶかしちゃう『ベータ』で。


そのことを聞いたとき空は、本当に頭おかしいなと笑えてしまった。







…結局、蒼がずっと望んでいたことはなんだったのだろうか。

アルファに縛り付けられる空なのか、それともアルファに縛られない空なのか。







『アルファに傷付けられる兄ちゃんはもう見たくないよ』
蒼はそう言って優しく抱きしめた。




しかし、蒼の唇が触れたうなじに、空は正解を見出してしまった気がした。







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