・・・



「達明それシャンプーだよ」
俺はほっぺたをゴシゴシと撫でていた手を止めた。
「まじ?」
「うん、洗顔フォームはこっちだよ〜」
はい、塗ったげる〜なんて言って、洗顔剤を手に取り出し、流真は俺の頬につけた。

そのままつけんな、泡立ててからにしろよ。

「いや、そういうことじゃない」
「なにが?」
流真は残った洗顔剤を俺の胸周りにつけながらこちらを見た。そのまま平たい俺の胸を揉みしだいている。眠気疲労マックスの俺はチベットスナギツネのようなほっそい目で流真を睨んだ。
「お前なんで一緒に風呂入ってんの」
「今日はセックスなしだからお風呂一緒に入ろうかな〜って」
「は?なにその理由。入ってくんな。……てか、おいっ、ちくびいじるのやめろ…っ」
「もうたってきた〜達明最近敏感?ちょっぴり膨らんできたよね」
「は…っ?!それはおまえのせい…っ」

んっ!
おもむろに強い力で乳首を摘まれ、意図せず高い声が上がってしまう。洗顔剤でぬるぬるとした乳輪はより気持ち良さを誘発してきた。

「気持ちよさそう〜でも、もうちょっと痛い方が好きだよね?」
「まっ、やめっ、今日はやらないって」
「セックスはやらないよ〜」

ね?

流真の熱い艶かしい息が唇に真っ向からかかり、そのまま顔を傾けて彼の唇が俺とひっついた。俺の唇と流真の唇を互いに挟み合い、流真はそのままおし食べてしまう。男にしては柔らかい流真の唇は俺をとろけさせるのには十分だった。

やべえ……ねむい……。

ぐじゅぐじゅと唇や歯茎を舌でいじり上げられ、熱は身体中から発し始めた。それなのに俺の思考は眠気で包み込まれ、どんどんどこかへ置いていかれて目の前の綺麗な顔もピントが合わなくなって消えていく。
最後に見えた流真のホクロは少し茶だった。






********

少し強めの衝撃が顔に走った。
顔がガクンと嫌な感じに揺れて俺は思わず目をひん剥いた。
「いたっっっっ!!!」
「あ!達明起きた〜…!!大丈夫?これなんだかわかる?」
「………に…」
指を二本立ててピースした流真は泣きそうな顔をしていた。少し間抜けな絵面である。そんな顔とポーズで写真は撮らないで欲しい。
俺は寝転んでいた体を無意識にゆっくり起こしあげた。寝起きのよく回らない頭で周りをキョロキョロすると、ここは風呂場ではなかった。
見慣れない真っ白すぎる壁に素直な疑問が出てくる。

「ここ、どこ…」
「達明倒れたから病院来てるの」
「は?病院?」
ナースコールしたからお医者さんすぐ来るよ、そう言いながら流真はさするように頭を撫でてくる。
俺の発言を無視して流真は頭を撫で続けてくるからなんだかイラッとして手を払いのけた。そのときガラガラと部屋の扉が開く。ピンク色のナース服を着た看護師が現れ、本当に病院だったんだと思った。流真は立ち上がると、そのまま慣れたようにペラペラと看護師と話し始めた。
やけに冷静に大人な様子で対応する流真はいつもの馬鹿げた下半身男の面影が全くなく、俺はとてつもなく違和感を感じた。
しばらくぼんやりと彼らの様子を見ていると、急に落ち着いた顔をした流真がフッと振り返った。
「今からお医者さんのところ行くよ」




3年ぶりの病院は消毒液の鼻につく匂いでいっぱいで、なんだか変な心地がする。

「達明さん、偏った食事よる体調不良ですね。思い当たる節ありますか?」

メガネをかけた白髪が少し混じった男性医者はこちらを見た。診察室には俺と流真と医者、あと看護師で計4人が中にいた。

「達明は激辛料理ばかり食べるんですよ」
そう流真が勝手に答えると、医者はああ…と言う納得の顔をした。

「確かに胃が炎症起こしてますね。あと肛門の方も荒れてるんじゃないですか?」
「あっ、違いますね。それはセッ「そうかもしれないです!!!胃が弱いのに無理して食べちゃってて〜!!!」
「胃腸が弱いのに刺激物ばかり食べるのは良くないですよ〜。お尻の方はチェックはしてませんが、下痢などは肛門を傷つけてしまうので
痔になりやすいですよ。気をつけてください。一応胃腸薬の薬処方しますので。食生活は見直してください」
「す、すみません〜〜!」

フガフガと流真がなんか言っているが俺は必死にやつの口を押さえ込んで、医者にペコペコと頭下げた。医者に気づかれないように、流真に目の圧で「余計なこと喋るんじゃねえぞ」とガンを飛ばす。


「あとはストレスを溜め込むのも良くないですね。充分な睡眠と運動、そして食生活を見直してください。倒れてそのまま入院してしまう方もよくいらっしゃいますからね。次の検診は2週間後にしますから、お薬と体調管理に気をつけてください」
「す、すみません…」
「えっ、達明ストレスあるの?」

目をくりんと驚かせて流真が覗き込んでいる。

ストレスはてめーのせいだ、性欲ばか。
毎日セックスざんまいで、ながーいピロートークにベタベタ俺の体を触りまくっては好き勝手に抱き枕にしあげ、寝込みやがる。そこの呆けた顔したお前だ、お前。

俺とセックスしてそのまま寝る流れが習慣化してしまった流真はついに俺の家へ住み始めた。

おかげで流真のペースに乗せられてばかりの俺はゆっくり休める間もなく、一人の時間もだいぶ減った。もうなんせセックスがしつこい。本当に、なんなんだこいつ、なんで元気なんだ、なんで毎日こんなお盛んなんだ。
あ〜しつこすぎるの思い出してイライラしてきた。

医者は俺の苛立った様子に気づいたのか、イライラするのも厳禁ですよと注意されてしまう。理不尽だ。



俺と流真はそのあと診察室を出され、そのまま薬局で薬を受け取り、タクシーで家に帰った。
どうやら風呂場で倒れた俺は流真によって急いで救急車で病院へ搬送されたようで、部屋に戻るとバスタオルなどが散らばっていた。

俺はとりあえず部屋の中を片付けようと落ちたバスタオルを拾い上げる。
しかし、流真はそのまま覆いかぶさるように俺を抱きしめて頬に顔を擦り付けた。

「本当に生きててよかったぁ。はぁ〜あ、安心したらセックスしたくなってきた」
「は?!お前さっきまで医者が言ってたこと忘れたのか?!」
「覚えてるよ〜。でもさぁ、俺心臓ドッキドキしたんだよ〜?まさか達明がお風呂場でぶっ倒れるなんて、イカせすぎて失神した女の子の時より焦った〜」

体温あったかいなぁ〜なんて硬くふくらんだ股間部を押し付けてくるのは俺を心配してた奴がやる行動じゃない。


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