本編ミヤビルートの続きです。
本編同様、過激表現の他、マヤが輪姦されるシーンがあります。苦手な方はご自衛よろしくお願い致します。
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「勇維、おすわりして」
シャラシャラと鎖の音が鳴って、首が思いっきり引っ張られる。
ひれ伏せていた体は無理矢理起き上がらさせられたことによって酷く痛み、首がキツくしまって吐き気を催す。
「勇維、ほら」
ぺたりと膝を床につけ、上半身は起き上がらせると、雅は嬉しそうに頭を撫でた。
「この後どうするんだった?」
雅は子供を諭すような優しい声をかける。まだ機嫌がいいみたいだ。
俺は殴られすぎて痛む口の中から舌を差し出す。
従順な態度を示す俺に雅は微笑むと、そのまま舌に吸い付いた。生暖かい濡れた感触が舌を覆い、そのまま口の中へ侵入する。なんとも言えない心地に、「いつか舌を噛みちぎってやる」と覚悟決めた。
嫌悪、憎悪、羞恥、拒絶感…。
様々な感情が今までの自分を飲み込んでいき、黒く汚く塗り潰していく。雅はそんな俺を知っているのかそれとも知らないのか、ただ俺の中を貪り続けた。
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少し冷えついた空気で目を覚ました。
ギシ、ッと歪いたスプリングを響かせ、体を起き上がらせる。白のシーツに薄生地の掛布。まるで囚人や奴隷のような扱いだ。
もう何日間閉じ込められたかわからないが、どこにも出られないことをこの長い間のうちに悟った俺は大人しくベッドから降りた。
ジャラジャラと金属音が擦れて鎖が地面をする音も慣れた。
置かれた水汲みを取り、タライに入れて顔を洗う。食事は気まぐれで雅が持ってくるため、いくら空腹が来ても耐えるしかない。せめて、自分が『おかしく』ならないように、一般的な人間の動きの模倣をする。しかし、部屋にはなにもないから、顔を洗う、体を動かすと終わればやることはなくなってしまった。結局簡易ベッドに潜り込み、シーツを被った。
真っ暗になった中で何度も何度も思い起こす。
アイツは殺さなければいけないほど憎む相手だと。あんな苦しい生活を負わされ、こんな所に閉じ込められ、そしてあんな恥ずかしいことをやらされ…。こんな人生を送らされたのは自分ではなく雅のせいだと責任転換する。そうでなければ、もう俺の心は保てなかった。全部俺のせいだなんて……。
ドアの開く音が鳴った。
今日は随分早く来たようで、空腹で死にそうになるのを防ぐことができた。
シーツを取り、ベッドからやってきた人間の様子を確認する。
髪はもう銀色ではない。
黒染めでもしたんだろう。髪先まで全て黒色になった雅はこちらを見ると、美しく微笑んだ。
美しい笑みは騙されそうになる。きゅっとキツく自分の腕を摘んで、惑わされないように戒めた。
「勇維、おはよう。今日もよく眠れた?」
「…は、い。雅さん…」
喉が乾いて掠れた声が出る。
雅は俺に近寄ると、俺に回り込むようにベッドの端へ座った。
「それは良かった。今日は一日いられそうなんだ。2人でゆっくりしよう」
そう頬を撫でられて、俺は喜ぶことも悲しむこともできなかった。
雅と2人きりということは、嫌でもあんな恥ずかしいことをさせられる。一方で、ただ1人でこの部屋に一日中いるのも頭がおかしくなりそうだった。
俺は答えるかわりに、目を瞑って頬に寄せる手に頭を預けた。雅はそれに機嫌を良くしたのか頬の撫でる手を止めなかった。
……この手が俺を殴った。この手が俺に辱めをさせた。この手が多くの人を苦しめた。
忘れてはならない。どんなに優しく触れようとも、この手は許されてはならない手。
じっと俺はその手で頬を撫でられ続けた。
食事はいつも通り雅の手で食べさせられた。
初めの頃は雅からのものは食べたくなくて頑なに拒否していたら、水やものは食べさせられない上に、痛みが分からなくなるほど顔を殴りつけられた。失神して、3日ほど眠り続けていたらしい。
それからご飯は食べるようにしている。
雅との食事を終えると、少しだけ会話をした。雅が話すことを淡々と聞くだけだが、聞きたくなくて前無視をしたら、柱に裸で縛り上げられて放置された。抵抗すれば首を絞める。もう嫌と言うほど学んだ。
雅からの他愛ない話を聞き、そうかと想像だけを膨らませる。もう外は春の香りに包まれ、桜が綺麗に咲いているそうだ。
見てみたい。そう呟けば、「来年見に行こうね」と雅は答えた。
それから雅は俺を抱きしめ、可愛がる。これが一番俺は耐えづらかった。
甘く優しく髪や肌にキスされ、ゆっくり服を脱がされる。少しでも拒否をすればすぐ暴力をふるわれ、機嫌の悪い雅の相手を永遠にせなばならない。
首筋やうなじにキスを落とされ、息が漏れそうになった。雅も同じように浅く息を漏らすと、こちらを振り向くように指示した。
振り向けば、熱を持った雅がこちらを見ている。
太腿には硬くなったものが触れて、熱くなっていた。もうなのか、早い…。
雅は俺の顔を掌で優しく触れると、顔を近づけた。
目を瞑り、彼からのキスを受ける。
柔らかくて質の良い形をした唇だが全く甘くなく、雅のキスは何度も心臓を締め付けるような感覚にさせる。いつでも心臓を握り潰せると脅されているようだ。
そのまま舌が上唇を舐め、口を開けろと合図される。大人しく開くと、熱い舌が口いっぱいに蹂躙し、舌先だけでなく内頬や歯筋を舐めあげられた。
雅はそのまま俺の服を剥ぎ取る。もともと薄い病院の患者服みたいな格好でもあったからあっという間に脱がされた。
裸にされると、自分で見てもわかる生々しい鬱血痕に気分が悪くなる。雅は以前つけたそのキスマークをまた深く色付ける様に痕を残していく。
「…ねえ、勇維。おすわり」
囁くように命令される。心臓をまたキツく締め付けられる感覚がした。
ゆっくり肘や膝をベッドにつけ、体勢を低くする。低くなった顔に向けて、雅は自分のペニスを差し出した。ちらりと目だけ上目遣いにして雅を確認すれば、わかっているよねとでもいう風に微笑まれた。
手が震える。
何度も教え込まれたことだ。それでも全身の血が重く、意識はどこか遠くへ落ちていってしまいそうになる。
それでも、また殴られるのは嫌だから……。必死にシーツから手を離すと、そのまま彼の熱に触れた。
両手で包み込み、口の中へ入れる。唇で挟み込んで顔を上下させた。カリにわざと唇を引っ掛けたり、舌を伸ばして顔の上下運動に合わせ側面をすり合わせると、雅は嬉しそうに声を漏らす。刺激に随分と満足しているみたいだ。良い子と褒めるように髪先を撫であげられる。
ふと、スッと後頭部に雅の手を回された。俺はその動きに一瞬震え上がってしまう。シャワーの音と自分を呼ぶ掠れた甘い声が脳に響いた。雅はそれに気づかないわけがない。
「相変わらずフェラ中に頭へ触れると怖がるね?なにを怯えているの?」
純粋な疑問に思っているんだろう。しかし、目は酷く鋭く尖っていて、答えを知っているようにも感じる。
俺は否定もできなくて、口の中いっぱいに雅を頬張ることしかできなかった。
一生懸命奉仕していると、急に雅に止められた。
「気持ち良すぎててイッちゃいそうなぐらいなんだけど、一旦やめようか。実は準備もできたようだし面白い場所へ連れて行ってあげたいんだ」
相変わらず綺麗な顔で雅はそう笑うと、俺をお姫様抱っこのようにして抱き上げ、ベッドを降りる。
今まで一度も部屋から出そうとしなかったのに、扉を開けてはあっさりと部屋から出てしまう。雅がなにを考えているのかさっぱりわからない。それとも本気で外へ出す気なのだろうか。
スタスタと長い足で雅が歩いていくと、ある部屋の前にたどり着いた。扉は自分のいた部屋と全く同じように頑丈そうで、結局外に出る訳ではないのかと勇維は内心ガッカリした。まあ、あの部屋を出られただけでも大きな進歩なのかもしれない。
雅は躊躇いなしに部屋へ入る。自分のいた部屋と似たような作りをしているようにも見えたが、透明なガラス張りの窓が大きくあり、もう一つ頑丈そうな扉が備え付けられていた。
窓から何か眺めるものであるかのように置かれた高級ソファへ雅は勇維を連れて移動する。雅は勇維を膝の上に乗せて後ろから抱きしめると、ソファへもたれながらも、上半身裸のまま勇維の背中へぴっとりとくっついた。雅はジーンズ地の白のズボンを身にまとっていたが、もちろん勇維は裸で、勢いで持ってきたシーツしか体を隠すものは無い。シーツをブランケットのように体の前へかけた。
「もう始まってるのかな?」
シーツをかけようとしてる横で面白そうに雅が呟いた。窓の方へ目線を向ければ、人間が3人、中央で固まっていた。
目を凝らせば、いや凝らさなくても焦点を合わせればわかる距離。裸の男3人がまぐわっているということに勇維は気づいてしまった。
「ヒッ!」
勇維は突如として現れた光景に悲鳴を上げてしまう。雅はそんな勇維を抱きしめて、「突然でビックリしちゃった?」と耳元で囁いた。
恋人のように身体を抱きしめて頭部を撫でる雅に、怯えている勇維は反抗せずじっと頭を撫でられる。その様子に雅は満足そうにすると、目の前に起こる光景を見てはまた面白そうに笑った。
「ほら、男3人でするときはああやるんだよ。乳首とちんこを同時に弄られてとっても気持ち良さそうだね」
状況を説明してくる雅にギョッとしながら、勇維はそんな光景見たくもなくて雅の方へしがみつく。なにを楽しそうにしているのか、雅が全く理解できない。
「ふふっ。まあ、見たくなければ見なくてもいいけど…俺たちもいつもやってる行為じゃないか。なにも恥ずかしいことなんてないだろ?」
あやすようにそう言った雅は胸に埋めていた勇維の顎をとり、唇へキスを落としてくる。ちゅ、ちゅっと音を立てながら唇を様々な角度から重ね合わされては、休む暇もないキスに次第に息ができなくなって頭がぼんやりとする。
雅が勇維の胸に手を這わせ、なにも身に纏っていない太腿をなぞりあげる。その感触に気持ち悪いという吐き気と腹の中がせり熱くなる感覚がした。
そして、雅はもう一度口付けては勇維を再度抱きかかえ直すと、窓の方を向いた。
「ほら、見て。すごい気持ち良さそう。勇維もしたい?」
雅はなにを言っているんだ。
目を背けたくても前回のようにはうまくいかず阻止されて、体全身をホールドされたままガラス窓へ向き合う形にされてしまう。
窓の向こうでは相変わらず背の高い男2人が中央に座り込む1人の男の体をいじり倒している。音も聴こえてきて、真ん中の男が喘ぐ様子が聞こえた。
『あっ、は、はっ……ぁがっ…』
『おい、気持ちいいか』
『ぅん、あっ、ああっ…!』
『おい、答えろ』
『ぁあっ!っん、き、きもちいいですっ』
掠れたハスキーのような声が響く。真ん中の男はグチュグチュと後部を手で弄られ、もう1人の男には胸を弄られている。目は布で目隠しをされているが、口からはよだれを溢し、しっかりとした筋肉のついた体は赤くなっているように見える。
快楽に溺れている真ん中の男に心臓が嫌に鼓動が早くなる。
(何を見せられているんだ、俺は…)
突然、尻に指を突っ込まれて、男は大きく喘ぐ。その様子がふと自分と重なり、血の気が引いた。
ふいっと目線を逸らせば、雅がクスクスと笑う声が聞こえた。雅は抱きしめた手でそのまま勇維の太ももを撫であげ、目の前の男のように後部へ触れた。
クニ、と指を突き入れられ体が強張る。
やだ、と反抗したくて雅を見上げれば、雅は縁部分をくるくると撫でた。その動きに肌が粟立つ。
『あっ、はっ!き、きもちいいっ!気持ちいい、ん、ですっ!』
『どこが気持ちいいのか言ってみろよ!』
『ぅああああ!お、おれの、ケツマンコが……ケツマンコが、指で弄られて、気持ちいいですっ!!……あああっ!』
『このクソ雌豚が!』
窓の外から聞こえるパンパンッと肌が叩かれている音と掠れて痺れる喘ぎ声に脳が混乱してくる。雅の性を誘う指の動きに体の熱が増し、背中に触れる熱い上半身がより色の増した空気を纏っていく。気づけば息が上がり、体は震える。雅のねっとりとした視線が絡みついて、より雰囲気や空気がおかしくなっていく。
口に雅の指を持ってこられ、ふんだんに舌や口内を遊び尽くされる。唾液で濡れた指先は勇維の後部へゆっくりと突き立てられれば、毎日行われる情事に体はすっかり慣れきって、指の二本も三本あっという間に入った。
壁を擦るように撫であげられる。弱いところを少しずつ、わざとらしく、かすめられて、勇維のちんこは次第に勃起してしまう。早く快楽が欲しいのだ。
ソファの上にいつのまにか寝っ転がり、シーツは床へ落ちて、後部を雅の思うがままに弄ばれる。空いた手で乳首をいじられては、先走りが垂れた。
「勇維ってば、おっぱい弄られるの好きだもんね。舐められる方がもっと好きだっけ?」
「っ、あ、だ、だめっ…」
「なにが?ねえ、勇維。言ってみて」
まだ部屋中に向こう側で喘ぐ男の声が響き渡っている。頭がおかしくなりそうだ。快楽に酔いしれた声は自分まで気持ちいいのではないかと錯覚させてくる。
体が熱くむずがゆく、からかう雅に心折れて「早くいじって欲しい」と懇願しそうになる。
いやだ、そんなのは。いやだ。
はあはあと呼吸を深くさせ、熱を吐き出そうとしていると、ドサッ!と何かが倒れる音が聞こえた。
窓に目を向ければ中央で身体を弄ばれていた男が倒れている。体は痙攣していて、イッたようだ。
雅もその様子を見たのか、勇維の上から体を退かせ、そのまま勇維を抱き攫った。体が熱で動かない勇維は雅のされるがままだ。
「ど、どこへ…?」
雅は勇維を抱きかかえて、奥の部屋に続く扉を開けてしまった。
中へ入ればそこまで部屋は広くなくて、むわりと精と汗の混じった濃い匂いがする。
男は目隠しされたまま床へ蹲っていて、太ももの内側は様々な体液でベトベトになっていた。前で身体をいじっていた男の1人がヒタヒタと彼の頬を叩くが、彼は反応がなく気絶しているようだ。
ひどい、と思わず顔が引きつった。
雅は勇維を抱いたまま、耳元に囁く。
「ねえ、彼に見覚えはない?」
「えっ…?」
唐突な雅の言葉にサッと血の気が引く。
倒れた男に顔を向けると、少し流れた黒髪に薄い唇、鼻筋は通っていて少し点を向くように鼻先は高い。体は筋肉もついているがやや細くて…。
とても嫌な予感がした。店の事務室での出来事やシャワールームのことが脳裏に浮かんで、剥がれない。
(うそ、うそだ。うそ、なんで、なんで、どういうこと。どうして……)
その答えの前に雅が思いっきり、倒れていた男の腹を蹴り上げた。
「うぐぁああっ!!」
酷い痛みに目が覚めたのか、男は体全身を丸め込んで暴れ回る。下腹部は血塗れていて、酷く困憊した様子だ。
「…マヤ、追加のお客様だ。ご奉仕してあげて」
そう言った雅は勇維を床へ下ろすと、動けないように男たちへ勇維は手足を固定された。太腿を2人の男に左右から掴まれて、マヤに見せつけるように自分の性器部分を晒し上げる。マヤは目隠ししているため見えてはいないから、地べたに手を這わせて俺を見つけ出した。ゾクゾクッと背筋が凍る。
「さあ、マヤ。やってあげて」
「…はい」
雅が命令すると、マヤは目隠しのまま勇維の性器に触れた。縮みこまったペニスを掴み、躊躇いもなく口の中へ含んだ。
勇維は信じられないと騒ぐ。
「やだ、ね、っ、やだ、みやび、さっ、嫌だっ!!」
「おや?ちょっとお客様はびっくりされてるみたいだ。怪我してしまうから静かにしててね」
そういうと、暴れる勇維の口へタオルを突っ込んだ。タオルのせいで言葉を発せられないようにされてしまう。体は他の男に掴まれて、身動きも取れない。マヤはそのまま機械のように勇維のちんこへ舌を這わした。熱くてしっとりした舌は亀頭を包み込み、なんとも言えがたい快楽を押し付けてくる。あくまで指先は添えているだけで、ぐぽりと口で性器を飲み込んでは、その口内で勇維のちんこを扱く。ずりずりと頬や舌が性器の肌を擦っては、気持ちよさに体が震え、太腿や根本に触れている体温の冷たいマヤの手が現実に引き戻してきた。
あのシャワールームの部屋で自分もこうやってマヤに口内を犯された。
今は立場が逆で、マヤを自分が犯している。
その可笑しな感情に心が激しく乱された。そしてマヤの舌使いはとても巧妙であっという間に勇維は快楽の天へ昇っていってしまう。それを感じ取ったマヤは舌の動きを止めると、極限にまで勇維のちんこを口に含んでは顔を上下させた。まるで、むしろマヤに犯されてるのではないか、という快感に頭がおかしくなる。強い刺激から出た声が咥えているタオルに吸収され嗚咽となっていった。
グチュグチュと水音は激しさを増し、熱くて刺激の心地よさに耐えられなくなる。
自分があの時、マヤにフェラしたことを思い出した瞬間、勇維はマヤの口の中で果てた。
体の力がしんなりと抜け落ちていく。
マヤは頼んでもないのに、勇維の精液を飲み込んだ口で勇維のちんこを綺麗にした。
「はあ、フェラが気持ちよくてえっちな顔する勇維可愛かったなぁ。どう?気持ち良すぎて立てない?勇維」
勇維は脱力し、ぼんやりと雅を見上げることしかできない。一方で、マヤはなにかに反応したように身体を揺らした。
何度目になるのか、勇維は雅に抱き上げられ、少し離れた場所に置いてあったベッドへ移動させられた。口に巻いていたタオルも一緒に外される。
一方、マヤも目隠しを外されたのか、勇維の姿を見た途端大きな叫び声をあげた。
「う、あ、あ、あああああああああっ!!!」
突然マヤは頭を殴りつけるように、自ら頭部を床へ落とした。
男達が突然暴れ出したマヤを慌てて抑える。前髪の隙間からは血をダラリと流して、マヤが体をカタカタと震え上がらせていた。
勇維は射精した倦怠感と現実的ではない感覚にまだその様子をぼんやりと見ることしかできない。
勇維の頭を軽く撫でた雅は、マヤの方を見ると虫でも見るような目で言った。
「いいよ、そいつ好きになようにして」
その雅の号令と共に、マヤを取り押さえていた男たちはマヤを勢いよく床へ組み敷いた。
マヤは大きく暴れながら、ガサガサな声で叫び上げる。
「やだあああッ!!やめろおぉぉ!!!ゆいの…ゆいの、ユイのまえでぇぇッ!!!」
マヤはそのまま勢いよく殴られ、男たちはその上に乗り掛かった。体には分厚い手が這い、マヤは狂気して金切り声を上げる。
一方、雅は勇維にマヤの様子を隠すようにして、上へ覆い被さった。
その動きに、勇維はゆっくり雅の顔を見上げる。行動が不思議だったのだ。
雅はゆっくり息を吐いた。
「それじゃあ、勇維もお仕置きをしないとね…俺に黙ってたこと」
ヒュッと呼吸が止まった。
雅は勇維の首を片手でキツく締めると、もう片方の手でさっきまでいじっていた後部へ指を伸ばした。
指先を入れると先ほどよりは乾いてしまっていたが、指を受け入れるほどの大きさは保たれている。雅はそれに「勇維はダメで淫乱なコ」と笑った。
(クソ、クソクソクソッ!自分でなりたくなってなったんじゃない。全部、全部、お前のせいじゃないか!!)
「ひグッ、ぁが、っぃぎ、ぐ」
雅に首を絞められたままで言葉も出せない。否、たとえ首を絞められてなくても声には出せなかったかもしれない。
雅は器用に勇維の首は掴んだまま、自分のベルトを解き、下着ごとスラックスを下ろした。
雅の性器は何もしていないのに隆々と盛り上がり、グロテスクに血筋がはって赤黒い。そのまま入り口にピタリと先端をつけられ、ベタリと熱い体液が染み込んでいった。
いつものこと、もう何度も雅に犯された。全て雅には自分の体は知られていて、もう怖くはない行為だ。そう、頭でわかっている。
わかってはいるけど、聞こえてくるマヤの叫び声がいつものことではないと警笛を鳴らした。
ストレスなのか貧血なのか目がチカチカと赤や黄色や黒で点滅し、歯がカタカタと震えて止まらない。
「やめ、ろおおおっ、ユイを、ユイにふれるなぁッッ」
(うるさいうるさいうるさい!あいつも死ねばいいんだ。あいつも俺に酷いことをした、ひどいことを!)
ドロリと喉の奥でマヤの精液の苦味が思い出し、空気が吸えないのに、今すぐにでも吐き出したかった。ベタベタと這って、胸のところにまでにがくてくるしい味がへばりつく。もがいてももがいてもこびりついて取れない。
もうやだ、こんなこと…。これ以上苦しむのは見たくない、苦しみたくない!
雅はその俺の様子を淡々と見ていたが、突然何も言わずにペニスを中へ突き入れた。
ぐち、ぐちと雅が奥へ入っていく。喉はもっとキツく締まり、体は雅を追い出そうとしているが、雅はそれを無視して中へどんどん入り込む。ずぽりと亀頭が埋まり、そのまま雅は中へ突き進んでいった。
痛い、とても痛い。
最近は慣らして挿れてくれるようになっていたから、とても痛い。痛みに涙が滲み、キツかった首の締めが無くなっても、呼吸はうまくできなかった。
「勇維、俺に、言うことは?」
グッグッと中へ雅は凶暴な性器を押し込んでいく。
(きらいだ、嫌いだ、嫌いだ。早くしね、しね、死ねっ!みんな死ねっ!!)
耐えられない身体と心はボロボロになり、マヤの快楽と恐怖で泣き叫ぶ声が魂を絶望に突き落としていく。
「っは、んっ、っは、あっ!」
下手くそな喘ぎ声と下から漏れる下品な水音。雅はそんなことにも躊躇せず、中へ性器を押し込めた。
「勇維、言うことは?」
顎を無理矢理掴まれた。
雅の一切情のない冷たい目がこちらを見ている。これが彼の本性、なのだろうか。マヤがあんなに酷い体で犯されていても振り向くどころか見向きもしない。
やけに体は冴え渡って、ベッドの布が肌に触れている感覚がわかるほど敏感になった。口からスゥ、ヒィと息がすり抜けていく。
「……んっ、っい……ごめ、んなさ、いっ……」
ボロボロと涙が無感情のまま流れ落ちた。涙が勝手に溢れ出て、耐えられないまま落ちていく。雅から全てを目が離せない。もし一瞬でも反らしまえば、命を落とすのではないかという恐怖。縋り付くように覆いかぶさる雅の腕を掴んでいることしかできなかった。
雅は目をスッと細めると、腰を突然動かし出した。ガクガクと下腹部が揺れ、唐突な痛みと甘い刺激に目を剥く。
「っあ、やっ、やぁ!」
「そう言うことを言って欲しかったわけじゃなかったんだけど…。いいよ、許してあげる」
そう言いながらガクガクと腰をぶつけてくる。目の前はパチパチと弾け、音が何もきこえなくなった。わかるのは雅の肌と、中からくる熱い弾劾だけ。マヤの叫声やベッドの軋む音もまるで一切聞こえなくなった。なにも無くなったように、ただひたすら雅だけを感じる。
ついに雅に全身を支配された感覚だった。
「っあ、あっ、ああんっ、んっ!」
自覚をした途端、漏れ出る嬌声が抑えられない。甘く声が滴り本能のままに揺さぶられ、快楽だけを感じる。自分とは思えない高くて媚びた甘える声は止まらない。
ズクズクと後ろは雅の性器で弄ばれ、肌から感じる体温が心地良くて気持ちがいい。雅の背中に縋り付けば、より激しく腰を突かれ、たまらない快感により声が漏れた。
(気持ち良くて頭がどうにかなりそう)
雅が揺さぶりながら唇を煽ってくる。そのままピタリと唇をくっつけて幾度もキスをした。それは麻薬のようだった。雅に触れれば触れるほど溺れてどんどん前が見えなくなっていく。
雅は相変わらず綺麗な顔で勇維の唇を貪っては食べ尽くした。
(早くこうなっちゃえばよかったんだ)
ただ、雅の従うままに。もうあんな耐えられない思いするんだったら、早く心ごとどっかやっちゃえば。
「んっふぁ、ああっ」
「きもちいいっ、勇維っ?」
「んっ、んっ、きもち、きもちいいっ。ね、もっと、もっとぱんぱんしてぇ、もっと、きす、して、っ!」
「ふっ…。急におねだりが上手になったね」
「ん、んあっ、あっ、ああんっ」
マヤが呆然と泣き尽くしているのにも気づかない勇維は、ただ快楽と雅だけに溺れた。雅は言うことを聞けば優しくしてる。それは初めから分かっていたのだ。今はそれに従ったまで。いい子にしていれば雅は初めからなんでもくれていた。
ーー愛し合っているかのように『錯覚する』行為を勇維は雅と続けた。
その反対に、マヤは死んだように気絶し身体だけを揺すぶられている。雅と勇維の行為にあまりにもショックが大きすぎて、脳みそが弾けたのだ。
それを見た雅は、笑った。やっと勇維は手に入れた。そう確信したのだ。
勇維は雅へ身体を預けては快楽を求める。
雅はそうすれば満足そうに、勇維を大事に抱いて、天国へと連れて行った。
***********
目覚めはとてもしっかりしていた。
軋んだスプリングではない、上質なベッドにふわふわの毛布がかけられていた。肌着もしっかり身に纏われていて、手首につけられていた拘束具も無くなっていた。
(……)
トントン、と扉のノック音が響いた。
ドアが開き、白いシャツと紺のスラックスを履いた雅が現れる。
「よく寝られた?」
「は、っい」
まだ喉は本調子ではなく、ガサガサとしていた。いつものように雅はベッドの上に座ると、勇維に向き合った。
綺麗だ。彼はとてつもなく美しい。誰もが彼を求めては争って、でも捨てられた。彼のこと美しさと清廉さ故に利用された者さえいる。皆、彼に騙され、ただひれ伏した。
勇維は雅を見つめた。
雅はそれにクスリと笑うと、勇維に手の甲を差し出した。そして、手の甲でゆっくり片頬を撫であげる。試しているかのような触れ方に、勇維は目を瞑った。
−−勇維はその甲にそっとキスをした。
雅の手を取り、雅の指を一つずつ丁寧に口に含んでいく。舌をしっかり這わせ、甘い果実のように指肌を吸い上げる。
まるで飼い犬になったように、丹念に従順に雅の指を舐め上げた。
「勇維のしあわせは…誰のもの?」
雅が微笑んでは、黒髪を揺らして首を傾げた。
恐ろしいほど甘ったるく美しい所作だ。優美な動きに誰もが惚けてしまうだろう。
こんなに美しい神に拾われた人間は幸福と示すにちがいない。ああ、どんなにめぐまれたことなのかと。自分の幸せはこの人のもの、だと。
しかし、勇維はそれにただ笑うだけだった。