九条家の1日 | ナノ


迷子

 今日は空と一緒に近所の公園へと遊びに来ていた。空はというと近所の子と一緒に遊んだり遊具で遊んだりしてとても楽しそうだった。しかしそろそろ時間は夕方に差しかかろうとしている。「空、もうすぐヒーローのテレビの時間だよ」と空に伝えると、「かえる!」とのことで公園で手を洗って帰ろうとした時だった。


「ままー、ねこさんだ!」

「わぁ、ほんとだ!かわいいねえ」


 公園の入口に真っ白な猫がこっちを見て立っていたのだ。空はとても興味津々のようで、すぐに猫に向かって走る。

「ねこさんこんにちは」
「みゃーっ」
「わあ、ふわふわ…」

 そして空は猫に近付いて撫でる。猫は逃げずに心地よさそうに撫でられていた。私はその様子をハンカチで手を拭きながら遠目で微笑ましく見守った。
 それにしても珍しい。野良猫って人が近付いたらすぐに逃げるイメージなのに、この猫は逃げないんだなぁ。そう思った束の間、大人しかった猫は公園の入口を出て行ってしまった。

「あっ、まって」
「!空!」

 その猫を空も追いかけて行く。公園を出れば道路だ。空を1人で歩かせるにはまだ危険だし、しかも今、猫しか見えてないので尚更だ。

「空!待って!」

 しかし空は目の前の猫に夢中だからか私の声は聞かず、公園の外へ出て行く。普通に走れば大人である私が追いつくのは当たり前なのだが、水道から入口まで少しだけ距離があったためか、すぐには追いつかない。


「空!!」

 公園を出て、空が曲がった道路を曲がった。だけどそこに


「え、空……?」


 空の姿は見えなかった。空だけじゃない、猫の姿も見えない。というかなんならここは行き止まりだ。自動販売機しかない。
 確かに空はここを曲がったのに。どうしていないの……?


「空、どこ……!?」

 どうしよう、空、どこに行ったの。
 顔を青ざめながらも空の名前を呼んで自動販売機付近を探し回ると、その奥に細めの道があった。大人では絶対入れない広さの、本当に動物とか小さい子どもしか入れない程の幅である。いや、道というよりは建物と建物の間の隙間程度のものと言った方が正しいかもしれない。ということはおそらく空はこの幅を通った可能性が高いだろう。
 幸いにもその幅の先にはもうひとつ先の道路が見える。それを確認した私は幅の先に見える道路の方へ探しに向かった。





△▼△▼



「ねこさん、まって!あっ!」


 MEZZO"の収録が終わり、環くんと一緒に帰っている時だった。前方から小さな子どもが猫を追いかけて、そして僕の足にぶつかり、その反動でその子は尻もちをついてしまった。

「だ、大丈夫!? 」
「う、へいき…。ぶつかって、ごめんなさい」
「ううん。こちらこそごめんね。ってあれ、君は…」

 その子は少し涙目になりながらも、すぐに立ち上がった。しっかりしている子なんだなぁと思いつつ、しゃがんでその子と目線を合わせると、この子には見覚えがあった。
 綺麗な白い髪の毛と大きな目……間違いない。この子は九条さんとひなさんのお子さんの空くんだ。


「あれー、空じゃん。どーしたのー?」
「!そーちゃ、たまき!」

 環くんもすぐに気付いたようで、空くんをひょいと抱き上げる。空くんと目線が合うと、彼も僕達に気付いたようだ。
 それにしても、空くんはひとりで走ってきたけど、ひなさんはいないのだろうか。確かまだ空くんは3歳にもなっていない。そんな子どもが1人で出歩くなんてとても考えられない。

「空くん、ひとりなの?お母さんは?」
「!まま……!」

 そう思って聞くと、空くんは焦ったように後ろを振り向いた。しかし後ろにひなさんはいない。それを確認すると、空くんの目から涙がこぼれ出す。


「ままぁっ……!どうしよう、ぼくのせいだ……っ!!」
「お母さんとはぐれちゃったの?」
「ぼくが、ねこさんおいかけてたから……ぅう…」

 どうやら話を聞くと、空くんは猫を追いかけてたらひなさんとはぐれてしまったようだ。空くんは「まま、ごめんなさい」と環くんの腕の中で泣いている。

「泣くなよ!ママに、あとで謝ればいいだろ!」
「うん……っ!ぼく、ままをさがさなきゃ…」
「おい暴れんな!大丈夫、ママに連絡してやっから心配すんな!」
「!ほんと?」
「ああ。ってひなっちの連絡先知らねぇ……」
「九条さんに連絡してみたら?」
「それだ!そーちゃん、空をとりあえず寮連れてこ!俺、てんてんに連絡する」
「うん、そうだね。大丈夫だからね、空くん」

 ひとまず泣いている空くんをなだめ、寮に連れていくことにした。寮に帰りながら、環くんには九条さんに連絡してもらうことにしたんだ。





△▼△▼△▼


 奥の道路を探してもいなかった。どうしよう、どうしよう、と泣きそうになりながら空の名前を呼んで探していたその時、天くんから電話が来た。

『今四葉環からラビチャが来たんだけど、空は逢坂壮五と四葉環が見つけてくれてIDOLiSH7の寮にいるって。はぐれたの?』

 それを聞いて安心したと同時に一気に涙が出た。良かった、空が見つかって。たまたま見つけてくれたのが壮五さんと環くんでよかった……!
 とはいえ、私は探すことに夢中で天くんに連絡をしていなかったため、天くんは電話越しの声はどういうことだと言わんばかりに不機嫌だった。そんな天くんに起きた出来事をを説明して、すぐにIDOLiSH7の寮に向かったのだ。




「空!!」

「!まま…っ!」


 寮に入らせてもらうと、空の後ろ姿が見え、名前を呼ぶとすぐに空は振り返り、駆け寄ってきた。私はしゃがんで空を抱きしめた。


「まま、ままっ……ごめんなさい…!」

「っ……無事で良かったっ…」

 空は私の肩をぎゅっと掴みながら泣いている。私も無事な息子を見て安心して涙が出てきてしまう。

「空、怖かったよね、ごめんね……!でもね、空。今日は壮五さんと環くんが見つけてくれたから良かったけど、もしかしたら怖い人にどこか連れてかれちゃったかもしれなかったんだよ。だからママが待って、って言ったらちゃんと待ってね」
「うんっ……!もうしない!」

 私は空にきちんと今日のことを伝え、ぐずっ、と嗚咽する空の背中をぽんぽんとあやすように叩いた。


「うう……空、良かったな!ちゃんと言えたな!」
「環くんまで泣いて…」
「良かったね、空くん!」

「壮五さんも環くんも皆さんも……本当にありがとうございました!なんてお礼すればいいか……」

 空を見つけてくれたのがこの人達で本当に良かった。空から一旦離れ、頭を下げると陸くんが笑顔で答えたくれた。

「お礼なんていいよ!それに、空は俺の甥っ子なんだし!そうだ、それなら一緒にうちでご飯食べて行って?そしたらヒーローも見れるし……って始まった!」
「!空!見るぞ!」
「うん!」
「え、え……」

 すると陸くんのヒーローアニメの合図に環くんと空が続き、ソファに座ってテレビ画面前に待機した。空に関しては環くんの足の上に座っている。


「みんな空くんと遊びたいみたい。だから気にしないでいいよひなさん」
「で、でも迷惑じゃないですか……?それに天くんにまだ言ってなくて」
「大丈夫!天にぃにうちでご飯食べるって言ったら天にぃも来るって!」
「そーゆーこと。だから大丈夫だからひなは座って空とテレビでも見てな!」
「いやいや、全力でお手伝いします」


 念の為に私からも天くんにラビチャを送ると「陸から聞いた。ボクも今から向かうよ」と返事がすぐに来る。
 IDOLiSH7の皆さんは温かく言ってくれ、そう言ってもらった私達は天くんを待ってお言葉に甘えて夜ご飯をみんなで食べることにしたんだ。




 ピンポーン

「はーい!いらっしゃい天にぃ!」
「お邪魔します。ひなと空は?」
「いるよ!さ、ご飯食べよ!」

「!天くん」
「ぱぱ……」
「空、ママの言うことはちゃんと聞いて。わかった?」
「うん、ごめんなさい……」
「いい子。ヒーローは見れた?」
「うん!りくとたまきとみた!」
「そう」

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