小説 | ナノ

 放課後の校庭に、運動部の掛け声と白球を金属バッドで打ち返す高い音が響く。部活動をしない生徒が下校を終え、誰も通らなくなったメインストリート付近ではキャンバスと椅子を置いて風景画を描く花京院の姿があった。
 この学校に美術部はなく、個人的に活動するということで学校側に許可を得て行っている。真剣なまなざしでキャンバスと風景を見つめる姿に、そこをランニングで通りかかる女子は皆彼を意識していた。
 それと同時に花京院もまた、バレー部員のある生徒に注目をしていた。本当は絵画を仕上げたいわけではなく、ここを通る彼女の近くに居たいからこの場所を陣取っているだけだ。
 花京院の思い人である主人公子は、走るたびに豊満な胸が上下に揺れていた。そこから、ちらりと見える緑色の紐。
「ね。花京院くん今日もいたね」
「文科系なのに体がっしりしてかっこいいよねー」
「今日も部活終わる時間までいるかな。一緒に帰ろって誘ってみちゃおうかな」
 外での練習を終えたバレー部は、水分補給をしながら黄色い声を上げていた。ランニングを終えた後だというのに多少息を乱す程度でこれだけ騒げるのだから若さのもたらす体力は恐ろしい。
「公子はあんまのってこないけどタイプじゃない?」
「うーん、かっこいいんだけど、かっこよすぎて緊張しちゃうから一緒に帰りたいとかは思わない。ほら、私って……若干ゴリラ入っているというか」
「そこはスポーツ少女とかにしておこうよ。大丈夫、ゴリラってほどガタイよくないから」
 公子は自分の足が特に嫌いだ。バレーをしていると足が太くなるという話は聞いたことはあるのだが、まさか本当にここまで太くなるとは思わなかった。
 その太いももの間から、やはり緑色の紐が出入りを繰り返している。だが誰もそれに気づかない。誰もそれを見ることが出来ない。
(主人さんの、太もも……)
 その緑色は出所を辿っていけば花京院に到着する。花京院の、股間に。
(柔らかい。服と下着をすり抜けて、そこで擦ろうかな)

 体育館内の練習はランニングと違って動きが細かいものになる。左右に打ち出されるボールを拾いに行くため先ほどのように体をじっくりと堪能することが出来ない。予測できない動きのときは、単純に彼女の姿を壁越しに眺めるだけだ。
「次、筋トレ!」
「はいっ!」
 女子生徒が声を揃えて返事をする。凛とした声色に、彼女たちから十代特有の爽やかさを感じると同時に、その一部を汚している自分への背徳感と興奮が花京院を支配する。
「公子、ペアなろう」
「うんっ」
 まずは腹筋運動。公子が寝そべり膝を立て、友人が足を抑える。そして公子にまたがるように、ハイエロファントが座る。だがそれに気づける者は誰もいない。
「いっち、にっ、さんっ、しっ……」
 規則正しいリズムで公子の上半身が上下に動く。それを、ハイエロファントを通して花京院が見つめる。寝そべっている状態から、自分とキスする近さまで顔を起こす彼女の姿。唇同士が重なるように、少しずつ前に移動した。
「次腕立てー」
「はいっ」
 今度は走れば揺れるほどに大きな胸が床ぎりぎりまで降りてくる。そこに下半身を重ねれば公子が何度も何度も何度も何度も胸を押し付けているように錯覚できる、首を少しあげれば重力に従って垂れる胸を見ることができる。
(本当に大きいよな……これで抜いてる男子、僕だけじゃないだろ)
 ハイエロファントと感覚を共有すると、花京院の股間もこの柔らかさで包まれたようになる。だが目的はこれではない。最後のトレーニング、スクワットだ。
「スクワット!」
「はいっ」
「……ねえ」
「どしたの公子」
「スクワットって何かお腹痛くならない?」
「え?どっちかというと足じゃない?」
「うーん……まあいいや」
 スタンドが何に触れて何に触れないのか、その本体が自由にコントロールできる。近距離型のような大雑把なコントロールと違い、花京院は細部までそれを操ることが出来た。
(短パンと下着は触れない。触れるのは、君の体だけ)
 スクワットはまず足を肩幅に開き、両手を前に出した状態でゆっくりと腰を下ろしていくという運動だ。友人の言う通り本来は下半身を鍛えるトレーニングなので腹がいたくなるということはないのだが、公子が腰を下ろす先にはハイエロファントが待ち構えていた。
 そう、今まで股間と感覚を共有しているため、花京院の勃起したそれに自ら体を挿し込んでいき、抜くという非常にゆっくりとしたピストンを行っている状態なのだ。
「痛い……でも……」
 でも、の後はとても口に出せない。
(でも、すごい気持ちいい。何か、変な感じになる。ランニングしまくって頭真っ白になるときに似てるんだけど、ちょっと違う。家でトレーニングしてるときは全然こんなことないのに)
 その気持ちよさに公子は股を濡らしてしまう。そのため毎日薄目の生理用ナプキンをつけているのだ。それがどんどん公子の体液を吸い込んでいく。
「あと十回ー!」
「じゅーいち……んっ、じゅー……にっ」
 背後の壁の向こうには、花京院がいる。この体育館の影に隠れてしまうと、誰もからも見られなくなる。だがいつ人が来るか分からない。そのリスクを冒してまで、花京院はズボンをずらし下着の中に手を入れた。
「ハァ、ハァ、ハァ……っ」
 自分の手で睾丸をいじる。竿は公子の膣で、睾丸は手で刺激を高めてやると、野外という状況も重なってさらにペニスが肥大する。
(公子さんが、自分から腰を振って僕のものを出し入れしてる……出る、出る……)
「筋トレ終了ー。ネット片付けしてモップ!」
「はいっ」
「……公子大丈夫?やっぱお腹痛い?」
「え……ああ……へ、へーき。もう変な感じ、なくなったから」
 体育館に緑色の影はなく、校庭にあったキャンバスも片づけられ、花京院も学校の敷地からいつの間にか姿を消した。


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