小説 | ナノ



※死神13戦後



「花京院、赤ん坊を手にかけようとするなんて……」
 公子の目にくっきりと狼狽の色が浮かんでいた。皆完全に、この赤ん坊が純粋な幼さを持っているものだと信じている。
 そういえば人間に限らず動物の子供が可愛らしいと思うのは、親となる生き物が自分の面倒を見てくれるようにするためだという説をどこかで聞いたような気がしたなと、花京院は記憶を手繰り寄せながら気絶した。
「さ、明日も一日歩きだ。早く寝てしっかり体を休ませよう」



 いい匂いがする。ベーコンの表面が焦げてカリカリになる匂いだ。一瞬雨音と勘違いするようなジュージューという調理音に目を覚ますと、一行は準備が整いつつある朝の食卓に目を丸くした。
「これ……花京院、お前か?」
「ああ。冷めないうちに召し上がれ。僕は赤ん坊に朝食を与えてくるよ」
 彼の手には離乳食の入ったミルクパンがある。昨日の錯乱ぶりが嘘のように見える姿に、不思議に思いつつも安どの気持ちの方が強かった。だから、誰も花京院に昨日の取り乱しぶりを深く追求しない。
「でも、君だけは覚えているだろう?公子」
「……覚えてるよ。その赤ちゃんがスタンド使いだってことも、花京院が助けてくれたことも」
「約束は守ったようだね、赤ん坊。もし僕の要求が一つでも通っていなかったらこのベビーフードに君のオムツの中身をかき混ぜてやろうとでも思っていたが……」
 そう言いながら腕を見る。自分でつけたナイフの傷は治癒の跡すらない。元からそんな傷、なかったかのように。
「そして昨晩の夢の記憶は、僕と、公子だけが覚えているようにする」
「おぎゃ……あぎゃ……」
「夢の中でないと喋ることが出来ないのか?それとも赤ん坊のフリをまだ続けるのか?僕から庇護欲を掻き立てようなんて思わない方がいい。あいにく僕はすごく加虐的な気分なんだ」
 朝食を終えると、後片付けはポルナレフ達がしておいてくれるというので花京院は公子を呼び出して水場へと向かった。
「あの、花京院。どうして私だけに記憶を残したの?」
「僕を一方的に攻め立てた記憶があるとこれから先チームワークに乱れが出るかもしれない。最年少の僕だけがスタンド使いに気が付いて、抵抗できない皆を助けた、なんて年長者からしたら恰好がつかないだろう」
 その答えは、公子にだけ記憶を残す意味を全く語っていない。水場に到着すると花京院は服を次々と脱ぎだし、公子にも裸になるようにと指示をした。
「えっ!そ、そんなことするわけ……!」
「だから記憶を残したんだよ。僕は昨日君たちに殴られたまま眠ったからね。水浴びすらできてないんだ。背中も流してくれないのかい?」
「だったら私が脱ぐ必要ないし……」
「水の中に入ってほしいんだよ。これが君だけに記憶を残した理由。敵に騙されて僕を疑ったという罪悪感を、せめて君くらいは覚えててほしかった」
 先ほど赤ん坊に加虐的な気分と言ったのは、彼に危害を加えるつもりで言ったわけではない。公子を、蹂躙したくて仕方ないというどす黒い欲望を抑えられないが故の発言だったのだ。
「早く」
「……ぅ」
 真っ赤になって俯きながらブラウスのボタンを解いていく。その姿があまりにも愛らしかったので、花京院がズボンを脱ぐとその下は既に勃ちあがっていた。
「全部だよ」
 既に全裸になっている花京院に見つめられながら、公子は下着も取り払ってしまう。その眼にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「よくできました。さあ、一緒に水浴びしよう」
 僕の手を取ってと言わんばかりに手を差し出してくる。だがそれは、転ばぬようにという優しさではなく、両手で体を必死に隠す公子の抵抗をあざ笑うための仕草だ。
「安心して。一時間くらい誰も来ないようにと言っているから」


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