小説 | ナノ

※パロディです。話の内容や意味はほとんどありません。

「遅刻してしまう!」
 公子の目の前を、長い耳の花京院が駆け抜けていきます。持っている懐中時計を開いてはあたふたしていますが、その時計は壊れてしまって動いていません。それでも花京院は急いでどこかに向かっているようです。
「そんなに慌ててどこにいくの?うさぎさん」
「僕は花京院典明です。僕、今とっても急いでいるので!何か、大事なメッセージを伝えに行かなくちゃいけないんです」
 そう言って駆け出した花京院を、公子も追いかけるのでした。
(不思議な時計だったわ。緑色のものでぼろぼろに壊された時計。止まっているのに正確な時間なんてわかるわけないじゃない。私がちゃんとした時間を伝えてあげなきゃ)
 花京院が滑り込んでいった穴に公子も入ると、底の見えないほどの深い巨大な空洞がぽっかりと口をあけて公子を待っていました。
 こんなところから落ちたらひとたまりもありません!しかし穴を落ちていくにつれ公子の体はどんどん小さくなるのです。アリほどに小さくなれば落下速度では地面に衝突しても怪我をすることはありません。公子もまた華麗に着地!とはいきませんでしたが、怪我もなく地面に到着しました。
 ウサギの花京院はもうどこにもいません。
「花京院ー?」
 部屋の中にはケバブとアイスティーと、「私を食べて」と書かれた紙が一枚。お腹がすいた公子はケバブを一口食べると、更に体が縮んでいきます。
「こんなに小さくなったらダメよ!敵に勝てないわ……ん、敵?」
「大丈夫だよお嬢さん。小さい=弱いわけではない。それに史上最弱が…………最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も恐ろしいィィマギィ――――ッ!!」
 どこからともなく響く声に恐ろしくなった公子は、部屋を出ようとドアノブに駆け寄ります。しかし小さな体では手が届きません。
「そうだ。これを食べて小さくなったんだから……」
 今度はアイスティーをググ グーッと一気飲みし、氷だけになったグラスをカーンと置きました。するとあら不思議。目論見どおり公子の体は元の大きさへ戻っていったのでした。
「何だかよく分からないスタンド使いさん、さよなら!」
 言ってふと思いました。スタンド使いって、何だろう?

 公子はそのまま外を歩いていると、頭を抱えている花京院が石の上に座っていました。
「花京院、どうしたの?私、あなたに時計が壊れてることを教えてあげようと思って追いかけてきたのよ」
「おでこが……痛いんです」
「大きいできものができてるわ。お薬を探してあげる、待ってて!」
 公子がその場を離れると、花京院の額のいぼから無数の触手が飛び出して来ました。それから逃げるように走っていると、道に迷ってしまったのかきのこの森をさまよっていました。
「どうしよう。お薬もないし、ここがどこだか分からないし」
「お嬢さんどうかしたのかね」
 声がしたほうを向くと、きのこのかさの上でコーラを飲んでいるおじいさんがいました。寝そべったまま波紋でコーラのふたを開け、ゴロゴロしながらそれを飲んでいます。
「う、うさぎさんのおでこのイボから、ニョロニョロしたものが……!」
「おー、そりゃあ肉の芽じゃな。ハートのキングの仕業じゃ」
「おじいさん、何か知ってるの?」
「わしはジョセフ・ジョースター。おじいさんと言うのはちとやめてくれんかね」
 ジョセフは自分が寝そべっているきのこを指差してこう言います。
「片方を食べりゃ大きくなるし、片方を食べれば小さくなる」
「それはさっきやったからいいわ。さよなら」
「おーう。ハートのキングには気をつけろよー。血を吸われるぞー」

 更に奥へと進んだ公子は、一匹の不思議なネコに出会います。ネコ?ライオン?とにかくとっても強そうです。
「よぉ、公子」
「あなたは?」
「チェシャ太郎だ」
「え、ここに来て急に名前……ま、まあいいわ。チェシャ太郎、私、道に迷ってしまったの。肉の芽のせいで苦しんでいる花京院を助けてあげたいんだけど、お薬もないし彼ともはぐれてしまって」
「道と言うのは自分で切り開くものだ」
 チェシャ太郎が指差した先には不思議なお茶会の光景が広がっていました。何が不思議って、椅子は便器、テーブルの上のお菓子はコーヒー味のガムだけ、そして奇妙な髪型の二人の男と一匹の犬がお茶を飲んでいるのです。
「あなたたち、なにしてるの?」
「私はモハメド・アヴドゥル。今日はこのイギーの誕生日じゃない日なんだ」
「アギ」
「それを俺たちでお祝いしてるんだぜぇ。今日はお前の誕生日かい?」
「い、いいえ」
「では祝福せねば!さあ、ここにかけたまえ」
「トイレに座るのはちょっと……さ、さようなら〜!」
「あっ、俺の名前がまだ出てないのにぃー!俺の名前はジャn……」

 トイレの森を抜けると今度はうってかわって鮮やかな花が咲く場所に着きました。その花に緑色のペンキを塗っている男に公子は話しかけます。
「おや、お客様とはめずらしい。私はテレンス・T・ダービー。ハートのキングの召使です。キングは黄と緑色が好きなので今色を塗り替えているところなんですよ。邪魔しないでいただけます?」
 そこの花は葉っぱが黄色でハート形の花が緑色という不思議な配色でした。
「おやキング、お目覚めで」
 公子が振り向くと黄色い服装に緑のハートを散りばめた、名乗らずともこの男がハートのキングであるといった出で立ちの男が立っていました。
「女ァ、ちょうどいいところに来たな。退屈していたところなのだ、私の遊びに付き合ってくれないか。ルールは簡単だ。この弓と矢で標的を射抜くのだ!」
「そんな残虐な遊び、できません!」
「ほう、俺にたてつくのか。テレンス!今すぐ裁判の準備をしろ!」
「何ですって!なんてわがままで、底意地の悪い暴君なのかしらっ!」
「えーい、テレンス、コイツを始末しろ!ってああ!やられている!チェシャ太郎の仕業だな……他に誰かおらんのかーっ!お、花京院!おるなら返事しろ!」
 ハートのキングの足元に、頭を抱えてうずくまる花京院がいます。苦しそうな姿を見てもキングは気を遣ってやるどころか、彼を蹴り上げて無理やり立たせます。
「この小娘を始末しろ」
「何てことするの!花京院、こんなやつの言う事聞く必要ないわ」
「うっ、頭が……僕は……何かを、急いで伝えないといけないんだった。時間が……時間……」
「そ、そういえば花京院!あなたの時計壊れてるわよ」
「時計が、壊れる……?時間が……そうだ、時間を止める能力っ!」
 次の瞬間、花京院の額から引きずり出された肉の芽が、宙を舞っていました。
「オメーのおかげで俺も停止した時の中に入門することができたぜ、後は任せな花京院」
 チェシャ太郎はニヤリと笑うとハートのキングをぼっこぼこのずったずたになるまで拳を叩き込み続け、公子が今までやってきた道を飛び越えるまでに思い切り殴り飛ばされました。
「あなたのおかげで僕は大切なことを伝えることが出来ました。ありがとう。お礼に何か出来ませんか?」
「そうね。帰り道を教えて頂戴」
「それなら簡単です。僕があなたのの世界からあなたを呼びます。あとはゆっくり、目を覚まして……」



「公子、公子」
「ハッ」
「寝てたのかい?随分かわいい夢を見ていたようだけど」
「えー?」
「寝言すごかったよ。うさぎさん、とか、チェシャ太郎、とか、時計がどうのこうのとか」
「んー。多分私のスタンド、アリスの能力かな」
「ああ、断片的な予知夢を見せるってやつか」


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