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※アレッシー戦後です。花京院が超元気。


 セト神の本体であるアレッシーが気絶すると、その攻撃効果は徐々に弱まり承太郎とポルナレフは元の姿に戻っていった。
 だが慌てて服を着たポルナレフが外へ出てくると、そこにはまだ子供姿の公子が。
「公子はどーしちまったんだ?」
「コイツ自身のスタンドのせいだろう。他のスタンドの効力を増幅させる、ってやつだ」
「あー、なるほど。しかし……可愛いな。麗しいお姫ちゃま、歳はいくちゅでちゅか?」
「……?」
「英語じゃわかんねぇだろ。つか何だそのしゃべり方は、なめてんのか」
 子供の姿といえどさすがにもう「でちゅまちゅ」は卒業したような年齢だ。外見からの判断になるがおそらく五歳前後といったところだろう。
「公子、しばらく俺と手をつないでろ」
 承太郎が手を差し出すが、公子は固まったまま動かない。
「お前のそのデカイ手をつかむのは無理だろ。指を握らせたらどうだ?」
 言われてみればそのとおりだ。指一本をそっと差し出してみるが、やはり動かない。しばらく承太郎の顔をじっと見ていたが、目が合うとササッとポルナレフの足にしがみつくようにして隠れた。
「どうしたんだ、公子」
「公子チャーン、ドシタノー?」
「……怖い」
「え?」
「帽子のおじちゃん、怖い」
「おじっ……」

 バステト戦を終えたジョセフ、アヴドゥル、花京院とも合流し、とりあえず食事をとることにした。もう時間的にブランチと言ってもいい頃合なのでホテルのバイキングは終了している。
 イギーもいるためレストランはやめて屋台で購入したものを適当な広場で食べることにした。食事の買い物にアヴドゥルとジョセフ、飲み物を買いに花京院、そしていつまで公子がこの状態か分からないため服を買いにポルナレフが、それぞれ散り散りになった。公子と承太郎は広場で留守番である。
 服を買いに行くなら本人を連れて行ったほうがいいのではと提案したが、承太郎が断固としてそれを突っぱねた。どうやら自分たちが恋人同士であったことと、自分は断じておじさんではないということを熱く語りたいようだ。
「つーわけで、じょうくん(承太郎)と公子ちゃんはとても仲良しさんだったんだ。分かるか?」
「……ジャンはどこ?ジャンにだっこしてほしい」
 ジャン、とは、ジャン・P・ポルナレフのことである。ポルナレフと発音しづらいので名前の方で呼んでくれということになったのだ。
「公子、ジャンは今お前の服を買いに行ってる」
「公子ちゃんもいっしょにいきたかったな」
「かわりに俺が抱っこしてやる。来な」
「……こわい」
「プッ」
 そのやり取りを買い物を一足先に終え戻ってきた花京院が目撃したようだ。持っていた大量のペットボトルを落としそうになりながらあの個性的な笑い声をあげている。
「花京院……テメェー」
「ノォホホホホ」
「じょうくん、おっきいこえこわい」
「わ、悪ぃ」
「いやー、最強のスタンド使いも子供の前だと形無しだね」
「うるせぇ!」
「かきょーいんくん、おてて、ぎゅっする」
 花京院の姿を見つけた途端、公子は短い足で緑色のズボンに駆け寄った。靴もないわけだから地面を歩けないと涙目になっていたのに、何故……と承太郎は内心のイライラが更にこみ上げた。
 そのうえ花京院が抱き上げるとパッと笑顔の花が咲く。自分と一緒にいたときのあのおどおどした雰囲気はどうしたのだと問い詰めたくなる。
(しかし俺が聞けばびびらせちまう……)
 承太郎は公子と始めて出会ったときの事を思い出した。中学の頃からの付き合いだが、そういえば最初から親しくしていたわけではない。まだグレてない承太郎相手にもびくついていた。
(デケぇ野郎が怖いのか?)
 そこに自分と同じサイズの男と、似たサイズで更に顔が濃い男が戻ってくる。
「じぃじ!あぶ!」
(何故懐くーっ!)
「ポルナレフはまだか。まあいい、食おう。ん、承太郎、どうしたんだ」
「ジョースターさん、そっとしておいてあげましょう。あまりつっこむと薮蛇になりますよ。イギー、どこいったー?お前の分もあるぞ」
「あ、公子ちゃんがあげる!イギーちゃんのご飯どうぞするー!」
「おお、構わんぞ。あとでじぃじにもご飯どうぞしてくれるかなー?おい、花京院、訳して!」
「えっ!?えー……」

 納得のいかない承太郎をよそに一向は適当に食事を済ませた。公子はかなり空腹だったのかガツガツと大人一人分の食事を平らげ、最後に水をぐびぐびと飲み干した。
「ごちそーさまでしたっ」
「よく言えたね、公子ちゃん」
「あー!皆もう食ってるー!ひでー!」
「遅いぞポルナ……」
「ジャンー!!!」
 飲んでいた水を地面に置き、駆け寄ってジャンプで飛びついた。この中の誰よりも親しいスキンシップの取り方だ。そして先ほどから凹んでいる承太郎への追撃でもある。
「俺の分ー。俺もメシー」
「ポルナレフ……そんなに言うなら代わってやるぜ……遠慮なく公子をこっちに寄越しなァ……」
「ひいいいいい!承太郎!お前ェ顔怖い!」
「しかしどうして承太郎にだけ懐かないんだろうな。花京院、うまく理由を尋ねられるか?」
「そうですね、このまま承太郎の機嫌が悪いのも面倒なので聞いてみますか」
 ポルナレフにあーん、してあげている公子の隣に花京院がしゃがみこんだ。目線の高さを合わせてまずはニコッと笑う。するとつられて公子も満面の笑みを浮かべるのだ。
(カワイイ……何故俺にはその顔を向けないんだ)
 背後から承太郎の殺気的なものをひしひしと感じながら花京院は公子の小さな手を握り、尋ねる。
「公子ちゃんは、じょうくんのこと怖いの?」
 背後の承太郎に遠慮して何も言わない公子であったが、もうここまで来たら沈黙は完全に肯定を意味していた。
「どうして怖いのか、お兄ちゃんにだけこっそり教えてくれるかな?」
「……あのね」
 赤いピアスがゆれる耳元に、公子の小さな顔が近づいた。




「あのね、だってね、じょうくんといっしょにいるとなんだかドキドキするの。おじいちゃんがね、ドキドキする病気だからね、公子ちゃんも病気になったのかなってこわかったの」




「まさか公子のじいさんの心不全が原因で俺が避けられていたとはな」
「まー、それでも俺の方がモテてたよなっ。なァ、花京院」
「ポルナレフ、テメェとはどうやら一度白黒付けなきゃなんねぇようだな」
「承太郎、でも彼女は君の大きい声が怖い、とも言っていたのを忘れたのかい?」
「……」


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