小説 | ナノ

「アンタ、彼氏出来たけど休みの日ずっと家居んじゃん。大丈夫なの?」
 と、姉に言われたので、翌週早速花京院と出かける約束をする。家から出るだけでいいのだから一人でぶらぶらしたので構わないのだが、一人であてもなく歩き回るのは好きじゃないし、疑いのまなざしを向けてくる姉を誤魔化すためにやはり仲良しアピが必要だった。
「というわけで、来週の土曜日ウチに来てくれないかな?」
「もちろんだよ。だって僕達、恋人、だからね」
「あはは!そうそう、恋人、だもんね」

 土曜の午前。ソファーにどっかりと座る姉は呼び鈴の音に立ち上がった。公子が二階の自室から「出てー」と催促したため仕方なく、だ。
「はぁい」
「おはようございます、お姉さん。先日ご挨拶した花京院です」
「あっ、公子の……ごめんなさい、すぐにつれてきますので…………公子ーっ、時計見なぁ!」
 作戦は完璧だ。これでしばらく姉が二人の仲を疑うことはないだろう。
「お待たせ」
 本当はとっくに準備できていたが、お迎えを見せ付けるために部屋に閉じこもっていた公子。服装もこれでもかというくらいに気を使って化粧も少し厚くしてみた。
「行こうか。じゃあお姉さん、お邪魔しました」
「いえ。いつでも遊びに来てくださいね」
 姉の見送りに手を振って応える。家を出て、角を曲がって、完全に家が見えなくなって公子はため息をついた。
「ごめんね、休みの日に呼び出しちゃったりなんかして。これでしばらく大丈夫だと思うから」
「いや、気にしないで。じゃあどこに行こうか」
「え?付き合ってくれるの?」
「僕は今日、主人さんのために時間を空けたつもりだけど?」
「うわー、ごめんね。ありがとう!お迎えするフリだけでよかったんだけど、それじゃあ今日は私が何か奢っちゃう!」
「いいよ。それに迎えにいくなんて、恋人なら普通のことでしょ」
 きゅっと公子の手を握る。
「へ!?」
「お姉さん、後ろに居る」
「ウソ!」
「しっ。このまま人ごみまで歩こう」

 その頃姉のエミリは、家でのんびりテレビを見ていた。


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