涙に青空が溶ける。

 昨日の夜のことはまるで夢のように、いつもどおりの学校生活を俺は送っていた。半分寝ながら授業を受けて、休み時間には騒いで。芹澤もいつもどおり、俺様っぷりを他のクラスメートに発揮している。何も変わらない。

 あれは、本当に夢だったんだ。魔法でもかけられていたのかもしれない。そんな風に思っていた――けれど。



「あっ――」



 たまたま、俺と芹澤が教室の扉のところでぶつかった。外に出ようとしていた芹澤と、逆に教室に戻ろうとしていた俺が正面衝突。その時だ。その時の芹澤は――いつもと違った。



「……っ」



 俺の目をみて、ふわっと顔を赤らめたのだ。えっ、とあまりの可愛さに俺が固まっていると、芹澤は俺を突き飛ばす。



「……邪魔っ!」

「いっ、いてえ! あぶねえだろ芹澤!」



 芹澤は俺から逃げるようにしてぱたぱたと走り去っていってしまった。

 ――目が合うと、あのときのことを思い出す。交わった視線が、俺達を包む雰囲気がまるで砂糖菓子のように甘ったるかった昨夜のことを。

 ……変わってしまったのかもしれない。俺の日常は、変わってしまった。何もかもが、あの夢のようだと思った昨晩の出来事のせいで、変わってしまった。



「〜〜ッ、くそ、」



 コントロールできない自分の鼓動の高鳴りが、鬱陶しい。



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