涙に青空が溶ける。


「あー、めっちゃいい天気」



 今日は手の届きそうな青空の、それはそれは気持ちいい天気だった。昨日のように自転車を二人乗りして田舎道を走ると、ものすごく気持ちいい。後ろに乗ってるのが女の子だったらスポーツドリンクのCMみたいで最高なんだけどなあって思う。



「藤堂、ちょっと速い」

「遅刻しそうなんだから仕方ねえだろ!」

「落ちそう」

「それはおまえが俺にしっかり掴まんねえからだよ!」

「えー……」

「えーじゃねえ! 死にたくないなら俺に抱きつけ!」



 やっぱり芹澤は俺にしがみつくのに抵抗があるらしい。必要最低限の触れ方しかしてこない。でも、自転車は結構ガタガタと揺れていて、それでは本当に芹澤は落ちてしまう。

 はあ、とため息をついて芹澤は俺に抱きついてきた。なんだか抱きつき方が……昨日とは違う。意を決して一気に抱きつく、という昨日のそれではなくて、ゆっくりと自然に俺の体に腕を回して体重をかけてきた。



「めっちゃ風が気持ちいい〜! なあ、芹澤!」

「……あっそ」



 背中に、仄かな熱。昨日の夜ああして触れたお陰で、少しは触れるということへの抵抗が減ったのだろうか。

 俺達は、仲が良くない。だから共通の話題なんてないし、無理をして話そうとも思わない。二人乗りをしているのに、ほとんど無言で俺たちは田舎道を突き進んでいく。風を浴び、草木の揺れる音を聞き、自転車のタイヤが回る音に心地よさを感じている。



「……藤堂」

「んあー?」

「……嫌い」

「俺もおまえ嫌い!」



 下手したらスポーツドリンクのCMよりも青春らしいなあなんて思ったのは、なんでだろう。きっと、テレビの液晶越しではわからない、光る青空と爽やかな風と背中にある熱を、この体で感じているからだ。




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