“Tear”


 今朝の結生の家の朝食は、バタートーストとヨーグルトにサラダ、それから紅茶。俺からすると、毎朝この朝食を食べるのは贅沢と感じるようなものだけど、きっと結生の家では普通なんだろう。情けなくも嫉妬してしまうけれど、そんな風に嫉妬する自分に嫌悪感を抱く。

 ……あまり、なかったような感覚だ。他人の家庭に嫉妬する自分を、嫌悪するという感覚は。今までは、他人の家庭嫉妬してしまうことがあたりまえで、精々「嫉妬する」という行為自体に嫌気がさしていた程度。今みたいに、結生の家庭を羨むことをいけないことなのだと感じたのは、初めてだ。

 結生の家庭を羨むということは、自分の家を疎んでいるということ。それをいけないと感じるということは……どういうことなんだろう。

 もやもやとしながら、結生と一緒に玄関におりる。送りにきてくれた結生のお母さんが、にこにこと笑いながら、言う。



「いってらっしゃい。芹澤くん。結生」



 結生が穏やかにほほえんで、返す。



「いってきます」



 それを見て、俺は答えを得る。

 そうか。俺は――自分の母親に、「いってきます」と言ってみたいんだ、と。




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