金色の午後の日差し、白黒の海。


 激しいエッチの末に布団を思いっきり汚してしまったので、洗濯機にかけて証拠隠滅をはかる。乾燥するまでに少し時間がかかるため、今日はソファで寝ることにした。ソファで寝ると体が凝るけれど、涙と一緒に寝れば安眠できるから、まあプラマイゼロってところだと思う。

 びしょびしょになってしまった当の本人は、恥ずかしそうに顔を赤らめていた。涙が照れることなんて珍しくはないけれど、今日の乱れ方ははんぱなかったから、行為が終わった今やたらと恥ずかしくなってしまったんだと思う。



「ゆき」



 毛布からもそっと顔を出して、涙が俺を見上げてくる。ソファは狭いから、いつもよりも密着度が高い。じっと見つめ合えば、それだけで吐息が交わるほどに距離が狭まる。



「結生の髪の毛は……染めてるの?」

「うーん? 俺のはブリーチだよ」

「ブリーチ?」

「色、抜くの」



 涙がそっと手を出してきて、俺の髪の毛をいじっている。

 そういえば、涙は俺の髪の色が苦手なんだっけ。この明るい髪の色が、涙をいじめてきた不良たちを思い出させるから。いっそのこと、黒に戻そうか。高校デビューのときに調子にのって抜いたまま、惰性でブリーチしてきたけれど、もう黒に戻してもいいかな。そろそろ受験も近づいてくるし。

 ……とか、考えていた。

 けれど、涙は俺の髪をみながらとろんとした目をして、特に嫌悪を抱いている様子はない。一体なにを考えながら俺の髪をみているんだろう……そう思っていると、涙がぼそりという。



「……きれいな、金色」



 ……えー、なに。そんな可愛いこと言っちゃう?

 俺は涙が愛おしくなって、にやけてしまった。……が、すぐに「アレ?」と思う。



「……俺の髪の色、わかんの?」



 涙、色盲のはずだ。いや、色盲の人がみんな金髪をわからないわけじゃないと思うけれど、たしか涙の場合はものがほとんど白黒に見える、そんな症状があったはずだ。帰り道に見た強烈な光の金は見えたとしても、俺の髪の色のような、極端に明るくて淡い金色なんて、白に見えるんじゃないだろうか。

 ……色盲、治ったのか?



「……結生と、その周りのものの色が、わかるようになってきた。結生の髪の色も、目の色も、肌も、あとピアスの色も、全部……わかるよ」

「……、」



 ……涙の、精神的な要因による色盲。俺は医者じゃないし知識もないからわからないけれど、色盲が治りつつあるということは、涙の精神の状態も安定してきたということだろうか。涙を支えている俺の周りから色が見えてきているということが、余計に俺のそんな仮説を証明している。

 夢じゃない。涙が本当に幸せになるまで、近づいている。



「……また、一緒に海にいこう。あの色を涙に見てほしい」

「……うん、」



 一度、涙と見た白黒の海。今度はあの吸い込まれるような深い青の海と、抜けるような青空を見てほしい。

 本当に少しずつ、涙が幸せになっている。それを実感して俺は、涙を抱きしめながら泣いてしまった。





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