▼ 夏希お姉ちゃん
時間は過ぎて午後6時。
台所から豪華な食事の皿を運ぶ。
にしてもイカフライとかイカ料理が多いのは…気の、せい?
いや、どう見ても気のせいじゃない。ここまでイカが並んでるの私初めて見たよ。
「あの、このイカって」
「それは万助が捕ってきたイカよ、この時期は大量に取れるらしいのよー」
イカの旬って夏なのかなぁ。あとで検索してみよう。
「あ、なまえちゃん。それ運んだら皆を呼んでもらってもいい?」
そんな!
いまいち部屋の場所も分からないのに!話すの苦手なのに!死亡フラグ立てたくないです。
断っていいですか?断りますよ?
「あの部屋がわから」
「簡略化してあるけどこれ、我が家の地図、これで探して頂戴」
「…はい」
駄目だ、断れなかった。万里子さん恐るべし。うん、それにこんな笑顔で渡されたら頷くしかないと思う。これか主婦の力か。
じゃあまずは…いや、いいや。これは帰り道に使おう。
また迷子になるのは御免だからね。
行きは適当に歩いてれば、1人くらい会えるでしょ。
あ、歩いてすぐ1人目発見。
「あ、あのー」
「あぁん?」
ひぃっ、怖いっ金髪だし余計!これがヤンキー?!初めて見た!!
「ひっすいません!晩ご飯なのでお呼びしました!ではこれで私は失礼します!」
「ちょっ、お前!おい!」
はぁ、逃走成功…じゃあ2人目、右へ行きましょうかね。
そしたら廊下の隅に、夏希さんとバイトのお兄さんがいた。
「な、夏希さんたち、晩ご飯なので居間に…?」
小声でこそこそ話し合ってるから何を言ってるか聞こえない。
先輩と後輩らしいから学校のお話かな。
「す、すすぐ行くね!」
「夏希せん…夏希ちゃん噛みすぎ、です、じゃなくて、だよ」
「…?」
何この会話。
「というかなまえちゃん、私のことは昔みたいに夏希お姉ちゃんって呼んでよ。親戚なんだし、私にとっては妹的存在なんだから!」
「えっ?!な、な、夏希お姉ちゃん、ですか?」
「敬語もナシ!!今後敬語と夏希さん呼び使ったら」
そこで一旦言葉を切った。
夏希、お姉ちゃんは私の耳元で
“昔のなまえちゃんの写真をみんなに見せる”
と、悪夢の言葉を口にした。
それだけは、それだけはやめて欲しい。特に何があるわけでもないけど、恥ずかしくて引きこもりになりそうだから。
それを聞いた瞬間私の顔は真っ青になったと思う。お兄さん吃驚してたから。
「うん分かった。夏希、お姉ちゃん。じゃあご飯に行こう」
「(うーん、ちょっとやりすぎたかも)そうだねー、行こうか健二くーん」
「2人ともすっごい棒読みですけど…あ、待ってくださいよ!」
「健二くん敬語!」
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