夏戦 | ナノ

 オムライスから滲む愛

あの後すぐに押入れから、買ってもらったけど一回も使ってない傷一つない薄ピンクのキャリーバックと、出掛ける時に使ってる小さなショルダーバッグを引っ張り出して準備開始。

確か最後に家族で泊まりに出掛けたのは、小学校3年生の冬だった気がする。
どこに行ったかは全く記憶ないけど。
本州なのは間違いないな。
それ以降は両親の都合がつかず、しまいには私のOZでの仕事が盛り上がってきちゃったから、家族で出掛ける事はあまりなくなってた。

多分というか間違いなく両親が2人で泊まりに行ってても、私は一人で留守番(もちろん自分の意思)で家にいたし…
こうやって考えると凄く酷い事をしてたんだと思う、本当親孝行してないな私。そしてごめん、お父さんお母さん。

「えーっと私服は…5日分くらいでいいのかな?それ以上?でも荷物増やしたくないし向こうで気回せばいいから…そもそもそんないっぱい服持ってなかったわ。あと下着のセットとー…」

うん、大丈夫。
一通り準備が出来たところで夜ご飯に呼ばれ、時計を見れば夜の7時。
時間の経過が凄く早く感じるけど、もしかして自分、夢中で準備してた?

実際は早く準備し終わってるはずのキャリーバックと鞄の中身が順に並べられてるのを見て気付く。

「あれ私3回ぐらい中身確認してない?」

3回も見直すってどんだけ確認してるの…
おかしすぎだよまじ笑える。
思わず笑いながら階段降りて言ったら「楽しそうね」って言われちゃったよ。
別に楽しくはないよ??
いや、でも……
そっか。私久し振りのお出掛けだから楽しみなんだ。
ちょっと気分がほっこりした。



夜ご飯はオムライスで、ケチャップが…ハートが書かれてる、だと。

「あのー、何でハート?」

定番からしたら波線みたいなのとかじゃないの?いや私の定番がおかしいのか??
何故にハートだけ?どこぞのメイド喫茶かな?

「ふふっ、それはお母さんからの愛の気・持・ち」

私の中の何かが今すぐにここを去れと指令を出した。
間違いない、私の感じ間違いなんかじゃない。悪寒もする。
慌ててお父さんの元へと向かった。

「どうしようお父さんお母さんが壊れちゃった」
「酷いわなまえ!」
「いいじゃないかなまえ、母さんなんてそれ作りながら鼻歌歌ってたんだぞ」
「ちょっとやだ、言わないでよ」
「…ぷっ、何それ」

この日、我が家では笑い声が絶えなかった。


特に本編とは関係ないですすみません。

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