おいでよ、クヌドンの森

本校舎の教育は自主性のカケラもなく、こんな教育下にいたら私が私じゃなくなる!と3年生になってから初の中間考査の解答を全教科全空欄にクヌドンの文字を埋め尽くして出した。余った時間で最高に上手なクヌドンも描いた。
返却された紙はテストの順位じゃなくて、もちろんエンドのE組への通知。思わずガッツポーズをしてスキップで家に帰ったのは言うまでもない。

こんな場所で真面目に勉強しているくらいだから、みんなトチ狂っているに違いない。
そう思って最初から友達を作る気はさらさらなくって、「あの子E組に落ちたんだって」と噂されたところで痛くも痒くもなかった。
親は常識と理解のある人だから、私が事情を説明したら納得してくれた。転校の話題もあがったが、家が貧しいことは十分理解しているつもりだし、そこまでのワガママは言わない。むしろ、私はこの学校のE組に行きたいと思う。
E組の方が楽しい青春を過ごせそうだし。別の理由もあるけどここでは割愛しよう。
翌日、私は旧校舎への山道を進んだ。

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小学生の時のハイキングを思い出しながら、ようやく旧校舎へと辿り着いた。運動はそこそこだけど、最近運動の「う」の字もしてない私には長く険しい道だった。絶対1キロくらい痩せたよ。じわじわと出てくる汗を拭いながら、本校舎より比べ物にならないボロさの建物を見上げる。なんだか懐かしい雰囲気がして、とても落ち着くから本校舎より旧校舎のほうが好きかもしれない。多分これはおばあちゃん家と同類の懐かしいや落ち着くの感情だろう。
ただ、冷暖房が完備されていないのは絶対痛い。おばあちゃん家でも今ではエアコンが設置されてるのに。

特に案内もなく、この時間までに登校しろと説明があっただけだから、勝手に空いてる下駄箱に靴を入れて職員室へ向かう。
でもいくらノックしても反応はなく、ドアの隙間から中を覗くと中は誰一人いなかった。指定時刻の10分前だからだろうか。その辺は先生もゆるいというか、抜けてるのかな。
教室に入っていくのは何だか気が引けるし、とりあえず扉の前で待機してれば誰かやってくるだろう。
そんな軽い気持ちで待機していたが、後で最高な出来事と共に大変な目に遭うとはこの時の私は微塵も思っていない。

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