なんで私は凛と手を繋いでいるのだろうか。

「なんで」
「俺が繋ぎたかったから」

なんて俺様何様凛様な奴なんだ。
あの頃はロマンチストだったのに…
やだやだ過去は振り返らない主義なんだから。

「好きでもない奴と手繋いで歩くとか馬鹿なの?死ぬの?」
「死なねーよ。アホか」

お前に言われたくないわ!

「じゃあ誰かれ構わず女性の手を取るんだね。最低」
「ちげーよ、やっぱアホだな」

もう構うのが面倒臭くて何の返事もしない事にした。

「帰りたいから離して」
「まだデート中」
「いつからデートになったし。てかほんと帰してくれないかなぁ。疲れてるんだけど」
「なんかしたのかよ」
「…3日も連続合コンなんて疲れるに決まってるでしょ」
「…」

なんで黙るのよ、
何か言ってよ。
それこそアホかとでも言いなさいよ。

「…腐ったな、お前」
「心が、でしょ」

そんなの、とっくの昔から知ってるよ。

「まぁ、あいつらと絡んでねーことだけは褒めてやるよ」
「はいはい、どーもどーも。それと私の家真逆なんですけど」
「は?お前んちこっちだろ」

あ、そうだ。凛には言ってなかったや。

「あー。引っ越した」
「…なんで俺に連絡よこさねぇんだよ!!」

だって面倒くさかったし、凛いつ帰ってくるか分からなかったし。

「まだ帰らせねぇ。もう少し付き合えよ」
「悪かった!ごめんなさい!だから早く帰して!」

昔の家の方まで歩いて来てるってことは会っちゃうかもしれないじゃん!!
それもあるから私はやく帰りたいのに!

「凛、いい加減に…!?」

本日2度目の口塞ぎ。
正直言うと、喋ってる途中だから私の口半開きの状態であんたの掌に抑えられてるの!
舐めてやろうかと思うけど遊ばれそうだからやめる。
ていうか何。

「ハルたち来たぜ?」

その笑みやめて。
どこの悪党だ。

「どうすんだ?」
「凛はバレないでしょーね。私はもう死ぬけど」

しかも歩く道はコンクリートじゃなくて砂。
つまり私たちは砂浜をずっと歩いている。
隠れる場所なんてどこにもない。

あぁそうだ、もう彼氏ですハートの勢いでイチャイチャして去ろう。

私は凛の腕にべったりと自分の体をくっつける。
突然の行動に驚いたらしく、凄い勢いで体を反らす。

「早く行くよ」
「何してんだよ!?」
「いいから彼氏のフリしてて、ほらほら歩いてよ」

私はいつもの笑顔の仮面をかぶって凛を引っ張る。

あえて前だけを見て。

足を進める。
大丈夫、砂浜を歩き終わるまでの辛抱だから。

震える体を誤魔化すように、くっつけた体をもっと、もっと、ぎゅうぎゅうにくっつけて。

(すれ違いざまに、感じた視線は)
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