孤独な恐竜
2013/08/24 13:32

□ディエ→ジョニ(現パロ)

ジャイロに会いに行こうと駅に向かう途中の道端でひょこりとうるさいくらいの金髪が目に止まった。
ああ、なんてツイてないんだ、そう思っているとまるで心を見透かしたかのように振り返る。
その顔はニヤニヤととても楽しそうだった。

「おや……これはこれは」

今日のオレはツイてるな?と上機嫌に言いながらディエゴ・ブランドーは目の前の、盛大に顔を顰めた男ジョニィ・ジョースターに近づく。
周りから見たら二人はライバル、だが実際ジョニィはディエゴをライバルだなんて思っていないし、ディエゴはディエゴでジョニィをライバル以上に慕っている。
だが、その気持ちは毎度のようにジョニィの冷たい目で打ち砕かれるのだ。

「サイアク、何でこんな時に会うんだよ……クソッ」

「ンン?ジョースターくん、今日の君もご機嫌ナナメだね。」

「原因は全部君にあると思うけど?」

「オレに?……まだ触ってもいないし、付いて行ってもいないだろう?」

まだって事はする予定なんじゃないかクソッタレ、と内心で文句を吐きつつくるりとディエゴに背を向ける。
コイツといると頭がおかしくなる、きっと。
ハア、と溜息をつきポケットのスマートフォンを手に取る。
ジャイロへと電話をかけようとした瞬間ディエゴはジョニィのスマートフォンを奪い取った。

「返せ!!!クソッ!!!お前には理解なんて出来ないよクソトカゲ!!!!返せったら!!!!」

未だにガラケーを使うディエゴにギャーギャーと噛み付くジョニィの手はあと少し、という所でディエゴの身長には届かず空中を掠めるばかりであった。

「……フン、もっと友達がいるのかと思ったが……そうでもないんだなあ?ところで、オレの名前が見当たらないんだが……」

「そんなもんッッ送られてきたその日に消してやったよ!!!!大体、何で教えてもないのにぼくのアドレスと番号知ってるんだ!!!気持ち悪い!!!!」

「……それは……オレとジョースターくんは、親友だから……」

「………………は?」

ポカンとした顔で当然だろう?と言ってくるこの男にジョニィは眩暈がした。
イカれてる。これは重症だ。
一度だってディエゴと親しくした覚えはないし、まともに連絡だって取り合っていない。
むしろジャイロの方が親友ポジションに相応しい。

「……君と親友になった覚えないんだけど」

「……え、だってジョースターくんとオレは幼馴染で……」

「幼馴染だからって、親友とは限らない。第一ぼく君の事覚えてないし。ぼくの親友はジャイロだよ」

「………………」

それまでコロコロと表情を変えていたディエゴの顔が、ピタリと無表情になる。
多分、先程のジョニィと同じように混乱しているのだろう。
顔を険しくしながら恐る恐る口を開いた。

「……ジョースターくん、は……オレが…嫌い、なのか……?」

今にも泣いてしまいそうに情けない、これがあのディエゴ・ブランドーだろうか。
ジョニィは本日二度目の溜息をつき、ディエゴの心にグサリとトドメを刺した。

「何度も言ってる、迷惑だって。キライとかスキの問題じゃない、生理的に受け付けらんないんだよね、君」

外見はスッゴク好みだけど、と口には出さずに心に留めておく。
みるみるうちに青ざめていくディエゴを見ていると、とうとうモスグリーンの瞳からぽたりと雫が落ちた。

(……あーあ、泣かせちゃった)

顔を歪めるわけでもなくただ淡々と涙を流すディエゴにジョニィは面倒くさそうに頭を掻いてさっき道端で貰ったティッシュをディエゴに押し付けた。

「……君と馴れ合おうとは思わないけどさ、拭きなよ顔。ここ、公共の場だから。それに、男を泣かす趣味なんてないし……君の顔が汚れてるのは何だか勿体ない」

無駄にキレーだからね。それじゃあもうついて来ないでね、バイバイ、そう言ってディエゴの手からスマートフォンを取り上げさっさと駅の人混みへと消えて行った。

涙で濡れた顔を貰ったティッシュで拭いながら、ディエゴは暫くその場を動けずにいた。
ジョニィに言われた事がショックだったはずなのに、初めて褒められた事が嬉しくて。

次の日からディエゴのジョニィへの猛アタックが今まで以上になったのは言うまでもない。



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