「好きな人が出来たの」
銃の手入れを念入りにしているミスタの横顔を眺めながら、私は言った。
組んだ手のひらの上に顎を置いてミスタの反応を見るが、彼は黙って手入れを続けている。
カチャカチャと弾倉に弾を込め、ガチャンとシリンダーを戻す音がやけに耳についた。
装填した銃を握って撫でながら、漸くミスタが口を開く。
「……残念だぜ」
ミスタの表情が翳ったのを見て、私は口の端が緩むのを止められなかった。
4が嫌いな彼のために、少しでも笑ってほしくて私は細やかな嘘をついた。
「なーんて、……」
ガチャ。
ミスタが私の胸に銃口を当てて、真っ黒な空の目で見つめている。
「俺だけ愛してればこんなことにならずに済んだのによォ。本当に残念だ」
「ミス……ッ!?」
トリガーが弾かれて火花が爆ぜて、ミスタの撃った弾丸は確実に私の心臓を貫いた。
崩れるように倒れた私は即死出来ずに、喉から溢れる血を吐く。
ああ、嘘なんてつくんじゃなかった。
違うの、違うのよミスタ。
あなたを愛しているわ。殺された今でも愛しているの。
血が溢れて上手く喋れない。
たった一言、あなたに愛していると伝えたいのに。
「やっぱり4は最悪だぜ。こんなにも愛しているお前を殺さなきゃいけないんだ。なァ、残念だろ。俺はもっとお前を愛したかったのに」
ええ、あなたの言うとおりよ、ミスタ。
私もあなたをもっと愛したかった。
四月馬鹿の結末
嘘ついたら地獄に堕ちるって、ママに教わらなかったの?
2019/04/02〜2019/05/03
愛に嘯く