▼47:最終指令とベッリーナB

アデレードは自分がトリッシュの影に入ることを他のメンバーに伝えた。
ミスタやフーゴがそんなことして大丈夫なのかと心配の声を挙げたが、最終的にはブチャラティがゴーを出した以上二人は強くは反対せずにアデレードの肩を叩く。

「まァ、アデレードなら上手くやるだろうさ」

「気を付けてください」

「二人とも言う相手を間違えてるわ。それを言うならブチャラティとトリッシュによ」

「それもそうだな!」

「……僕、外にいるナランチャへこの事を伝えてきます」

フーゴがそう言って亀の外へ出ていく。ナランチャはエアロスミスのレーダーで周囲を警戒しながらボートを進めていた。
アデレードはメンバーから離れて壁に凭れながら立っているギアッチョの傍へ近寄る。

「今の話、聞いてたでしょう?」

「あぁ」

「私が影の中に持ち込める物が何なのか覚えてるわよね」

「イルーゾォと大体同じだろ。精神エネルギーとしてのイメージが伴っとれば可能だ。例えば服とか靴とかな」

「そう。ポケットの中のコンパクトミラーもね」

「……」

「……」

「……“彼ら”によろしく」

「Sì.」

互いの視線を交わしながらギアッチョはその意図を受け取るとカチャリと眼鏡を押し上げて頷いた。
アデレードがさてと、とトリッシュの傍へ移動し彼女の影にしゃがみこむ。

「こんなに小さな影にも入れるの?」

「私と同じくらいの身長ならギリギリイケるわ。……でもこのままじゃあまだ私の方が少し高いから……」

アデレードは履いていたハイヒールを脱ぎ捨てた。
素足になったアデレードとトリッシュとではそこまで差はない。

「私の靴、誰か持っていてちょうだい」

「あ、それなら僕が持っています」

「Grazie,フーゴ。それ、お気に入りなの」

アデレードはフーゴに履いていたハイヒールを渡す。
SAINT LAURENTのオピウムパンプス。
ヒールの部分がブランドのロゴになっているそれはアデレードの一番のお気に入りだった。
フーゴがそれを持つとにこりと笑って頷く。

「それじゃあ入るわ。トリッシュ。私が影に入ってもあなたには何の影響もないから心配しないでね」

「ええ」

アデレードはトリッシュを見上げて安心させるように微笑むと、スタンドを発動させて影の中へ入っていった。
影の表面が水面のように変化し、アデレードが入ればトプリと音がして波紋が広がる。完全にアデレードの姿がトリッシュの影に消えれば再びいつもの影に戻った。
それを確認したアバッキオはムーディ・ブルースを出して15分前のアデレードを再生(リプレイ)させる。
ムーディ・ブルースのつるりとした肌が瑞々しさを帯びてアデレードの姿へと変化した。
額にあるデジタル以外はアデレードそのものの姿で、サンタ・ルチア駅でジョルノたちを回収した時と同じように亀の外へ出ていく。
ギアッチョ以外のメンバーがその後に続いて亀を出た。
アデレードの姿をしたムーディ・ブルースは進路方向に背を向けて座っている。アデレードは恐らく15分前から既にこの計画を思い付いていたに違いなかった。
アバッキオが再生(リプレイ)一時停止する。目的地である塔からバレることは恐らくないだろう。
ボートが島の埠頭に着くとブチャラティは立ち上がる。
その時、ジョルノもまた立ち上がった。

「ブチャラティ……彼女の護衛なら僕が志願します。僕が彼女を塔の上まで連れていきます」

その突然の志願にアバッキオがジョルノの肩を掴んで振り向かせる。

「イキナリ何言ってんだよテメー。何で護衛するのが新入りのテメーなんだよ!?」

「ボスは誰とは指示していないし」

「幹部のブチャラティが連れていくに決まってんだろーがァ──!このタコッ!」

アバッキオはジョルノに捲し立てながらちらりとムーディ・ブルースを見る。ブチャラティが護衛だからアデレードを任せられると思った彼にとってそれがジョルノに代われば影に入ったアデレードを任せるのは別となってくる。

「当然だ……俺が行く。さぁ、トリッシュ。命令通り二人だけで上陸するんだ」

ブチャラティがトリッシュへ手を差し伸べるも、視線はまだジョルノに向いている。
ポルポの遺産を取りにヨットで向かっていた船上でも見られた沈黙を伴った謎の視線のやり取りに、影の中に潜むアデレードはまただと思い出していた。

「そうだ……ジョルノ!最後の任務がうまくいくようにお前のそのお護りをくれないか?てんとう虫は太陽の虫。生命の象徴だったよな」

ブチャラティが突然ジョルノの胸についているてんとう虫のブローチを指差した。

「お護りなんだろ?そのブローチ」

「……」

「そうだろ、ジョルノ?」

「ああ……そうでした。ええ、その通りです。てんとう虫はおてんとう様の虫です。幸運を呼ぶんです」

ブチャラティの含みを持った言葉にジョルノは胸からブローチをひとつ外して彼に渡す。
それはブチャラティの手の中で僅かに脈打っていた。
ジョルノのゴールド・エクスペリエンスの能力で生命を与えられたてんとう虫のブローチは探知機の役割を果たしてくれる。
それはジョルノとブチャラティの間で取り交わされた約束の目的の為だった。

「では、行ってくる」

ブチャラティはトリッシュを連れて、ボスの待つ教会へと入っていった。




Invia a tutti i membri(メンバーに一斉送信)

Dal:Ghiaccio(差出人:ギアッチョ)

Attualmente sono nella Basilica di
San Giorgio Maggiore
(現在、サン・ジョルジョ・マッジョーレ大聖堂にいる)
.
Ombra è all'ombra di Trish(オンブラはトリッシュの影の中だ).
Lei ha bisogno di te,Illuso(彼女がお前を必要としている、イルーゾォ).
I membri di Venezia dovrebbero
aspettare nel mondo degli specchi
(ヴェネツィアにいるメンバーは鏡の中で待機せよ)
.





prev | next

back
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -