▼08:ジョルノとベッリーナ
街の見回りが済みいつものリストランテに向かう途中で、アデレードはジョルノに話し掛けた。
「どうしてジョルノはギャングになったの?」
「人に質問するってことは自分も同じ質問をされても答えられるってことですよ、アデレード」
「私の理由なら初日に言ったでしょ?成り行きよ」
「奇遇ですね。僕も成り行きです」
互いに顔を見合わせてから同時にプッと吹き出して笑う。
チームに同時期に加入したジョルノとアデレードは年齢は違えども気兼ねせず話せる間柄になっていた。
15歳にしては大人びたジョルノと奔放なアデレードは不思議と息が合い、今日のような見回りはふたりで行くことが多い。
「……でもね。成り行きって言ったけれど、最後はきちんと自分で決めたのよ。まぁ選択肢なんて生きるか死ぬかしかなかったけど」
アデレードが肩を竦めて昔を思い出すように笑った。
ジョルノはそんなアデレードの横顔を見詰めながらひとつ提案をする。
「ねぇ、アデレード。少しゲームでもしませんか?」
「ゲーム?無駄なことが嫌いなジョルノが珍しいわね」
「無駄?アデレードと一緒にすることに無駄なことなんてひとつもありませんよ」
「末恐ろしい子ねぇ」
「誉め言葉として受け取っておきます」
アデレードがしげしげとジョルノを見て眉を下げた。
15歳にして気品に満ちた美しい容姿ですらすらと口説くジョルノの言葉に、アデレードは提案を飲む。
「いいわ!どんなゲーム?」
「これからリストランテに着くまで、嘘をついてもいいっていうルールです」
「嘘?」
「そう。本当のことを言ってもいいし嘘をついてもいい。但しそれが本当か嘘か追求してはいけない」
「Ho capito.」
「じゃあ行きますよ。さっきの話の続きです。僕も成り行きだと言いましたが、そのきっかけは僕にとってとてもラッキーでした」
「そのきっかけって何?」
「ブチャラティとの出逢いです。彼は僕を始末しに来たギャングでした」
「中々刺激的な出逢いね」
「僕からも質問します。以前にどこかのチームに所属していましたか?」
「Si.……と言っても見習いみたいなもの。だから正式に上からの指示で配属されたのはブチャラティのチームが初めてよ」
「どのチームですか?」
「Assassino.」
「それはまた……中々刺激的ですね」
「次は私の番。嫌いなものや怖いものはある?」
「怖いもの……は思い付きませんが、嫌いなものは無駄です」
「そうだったわね。怖いものがないなんて羨ましいわ」
「あぁ、そうだ。あなたに嫌われるのはとても怖いですよ」
「嫌われるようなことをしたの?」
「これからするかもしれないので」
「本当に怖い子」
「怖がらないで。あなたに避けられたら僕は生きていけない」
「それこそ嘘だわ」
「追求してはいけないルールですよ」
「おっと!」
ジョルノの指摘にアデレードは口に手を当てた。
「次は僕の番ですね。同じように質問をアデレードにもします。嫌いなものや怖いものは?」
「嫌いなものは汚いもの、汚れること。怖いものは……本当はまだ少し夜が怖いわ」
「……本当は?」
「追求してはいけないルールよ」
「そうでしたね」
ジョルノも先程のアデレードと同じように口に手を当てる。
「ジョルノ。さっきブチャラティとの出逢いはラッキーだったと言ったけれど、ギャングになってまであなたがやりたいことって何?」
「この街の浄化です」
「手段は厭わないのね」
「ギャングですから。アデレード……もし僕がボスになったら僕を支えてくれますか?」
「Certo.」
「約束ですよ。アデレードにも何か理由が?」
「次はジョルノの番じゃあないわ。それにリストランテに着いたわ。もうゲームはおしまい。楽しかった」
「……ええ、僕も」
でも肝心の質問には答えてもらえなかった。
手強いな、とジョルノはアデレードの後ろ姿を見詰めながら思った。
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