※腐向けと微グロが割と標準装備ですので苦手な方はご注意ください。



NINJA☆kid

ご注意!

※映画べすときっどのパロディです。

※ストーリーに「母」とか「少女」とか出てきますが、女体化でなくスカートをはかせた男性として描いています。(でも本人達は女性として生活しています)

※漫画もどきと小説もどきが入り混じったかたちになっています。

1
古びたアパートのこざっぱりとした廊下の真ん中で、少年が大きなスーツケースに体を預けながら柱を睨んでいた。下から日に焼けて薄れた文字で、彼の成長の軌跡が記されている。

「佐助!支度はできたのか!」

ドスのきいた母の声。
佐助曰わく、彼女はどうにもせっかちなのだ。長年親しんできたこの家に別れを伝える間も与えてくれない。

「へいへい…もうすぐですよっと」

やれやれと身を起こし、柱に背中をくっつけて頭のてっぺんの位置を確認した。ボールペンで最後の成長を記す。『佐助、12歳』。

――柱よ、さいなら。俺様はもうアンタに身長を書き込んでやれないんだ。

佐助は労うように柱を手のひらで撫でた。

2
母・信玄の転勤で、アメリカから中国へ引っ越さなければならなくなった。父は数年前に亡くしている。家族は信玄と佐助の二人だけだ。
長時間のフライト、親しい友との別れ、慣れぬ土地・言葉・人間への不安…
母の膝の上で一時の睡眠を貪る佐助は疲労や寂しさでグルグルと胸中を渦巻かせていた。

3
これから暮らすことになる我が家に着くなり、母の大声が佐助を呼ぶ。

「おおい佐助!シャワーが壊れておるわ!水しか出ないと、管理人の風魔殿に伝えてきてくれい!!」

この国の言葉はまだほとんどわからないし、こちらでも佐助たちの言葉はわかってもらえることは少ない。だがありがたいことに、この集合住宅の管理人・風魔という男は言葉が通じるらしい。空港からここまで案内をしてくれたガイドがそう言っていた。
1階に降りて、常駐する警備員に シャワーが壊れているので見てもらいたい。管理人はどこか。 と訊ねるが、やはりわかってもらえない。常駐している人間にすら言葉が通じないことに、佐助は心が折れそうになった。

「え〜と…ふうま…風魔さん。どこ?」

名前だけは聞き取ってもらえたようで、扉を指でさされる。別の場所に管理部屋でもあるのだろうか。会釈をして外に出た。
出口から壁沿いに歩いて角を曲がると、物置のような小さな戸を見つけたので開けてみる。中は戸に見合った狭い空間で、男が一人食事をしているようだった。

「アンタが管理人の風魔さん?305に越してきた武田です。シャワーが壊れてるみたいで水しか出ないから、見てもらいたいんだけど」

男は一瞬だけ動きを止めたが、返事は無い。振り向くこともない。ズルズル…と、麺をすする音が再開された。

「…聞こえなかったかな…あの!シャワー、水しか出ないんですけど!」

改めて大きな声で言い直すが、それでも男は食事の手を止めず、やはり振り向かない。

――困ったことがあれば風魔さんに…って、ガイドさん言ってたよな……

言葉が通じるとも言っていたはずだが、もしかするとその情報は間違っていて、実はてんで通じない可能性はないだろうか。そもそもこの男が風魔という管理人なのかも確かではない。不安が襲う。

「…やり方さえ教えてくれれば、自分でするけど…」

だいぶ控えめにお願いをしてみるものの、やはり無反応である。頷くことすらしてもらえないのだから本当にお手上げだ。佐助は肩を竦め、諦めて部屋を出た。

4
風魔の態度で佐助はドッと疲れてしまった。トボトボと新居へ戻ろうとするが、シャワーが水のままでは母にどやされるかもしれない。想像するだけでさらに疲れが増すようである。
顔を上げると公園が目に入った。

――気分を変えよう

ふらり。足を踏み入れる。
なかなか大きな公園だ。バスケットゴールや卓球台、運動器具などがあちこちに設置してあり、大人も子供もそれぞれに楽しんでいる。
ふと佐助の目がベンチに向いた。イヤホンを耳にはめて、なにか楽譜のようなものを一所懸命に見つめている少女が座っている。その瞳があまりに熱心でキラキラしていたので、魅力に吸い寄せられるように佐助は彼女の目の前に立っていた。
楽譜に集中していた彼女がそれに気付き、イヤホンを外す。大きな瞳でみつめられて、話しかけようにも言葉が出てこないことに焦ってしまう。そういえば飛行機の中で母が中国語の教本を見ながら「あなたのお名前はなんですか」と練習していたのを思い出す。「お元気ですか」とも。しかし佐助は不貞腐れてまともに聞いていなかったのでいまいち覚えていない。もっと真剣に聞いておけばよかったと後悔しても今更である。間違っていようが構わない、と、挑戦してみるが、やはり違ったのかキョトンとされ吹き出されてしまった。

「くくく。それは何語だ?」
「あ…なんだ、英語わかるの?はは。俺様、佐助。それ、なに聴いてんの」
「これか。バッハだ」

訊ねたものの、まるで知らない単語である。「あー…ああ、バッハ!あのバンドね!超クール!いいよね!」なんて、早口でテキトーに誤魔化してしまった。

「ははは!おかしな男だな、お主」
「へへ…ねえ、アンタ名前なんていうの」
「幸村だ。旦那、と呼ばれたりもする」
「ゆきむら…だんな?」
「あだ名だ」
「ふーん。旦那、ね。よろしく!」

5
幸村とのお喋りを楽しんでいると、右に眼帯をした少年に肩を押されむりやりに退かされてしまった。
「政宗」と呼ばれた彼は佐助になにか言うでもなく幸村と激しい言い合いを始める。二人とも、こちらの言葉で叫ぶような早口だ。何を言っているのかてんで理解できなかったが、この政宗とやらはどうやら乱暴者であるように佐助は感じた。

6


7


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9
政宗は何か格闘を習っているようだった。単なるケンカしか経験の無い少年にはとても相手になるような状況ではなかったが、一度挑発に乗ってしまえば佐助のプライドが退くことを許さなかった。ただ殴りにかかるしかない佐助の足をとり、何度も転ばせてしばらくからかった後、それに飽きた政宗は最後に馬乗りになって躊躇なく一発顔面を殴る。
その痛みと、腹に食らった蹴りの苦しさ、それに情けなさに苛まれ、政宗が去った後しばらく佐助は起き上がれなかった。

「佐助、大丈夫か…」
「俺にかまわないでくれ!」

心配げな幸村の声も突き放してしまうほど、頭に血が上る。
こんなにも力の差を見せつけられるようなケンカはしたことがない。
来たくも無かった場所に来て早々、自分はなんて不幸だろう。そう思えて仕方が無かった。

10
翌朝は早速の登校日である。
転入する学校の制服も気に入らないし、母の派手な色をしたタイトドレスも気に入らない。通学路を速足で進む母に急かされながら、佐助は帽子を目深にかぶり直した。

「だからさ…大将(佐助は母をこう呼ぶ)。ついてこなくていいって…仕事行きなよ」
「何を言う!副校長の上杉先生に挨拶をせねばなるまいて」

なるほど、だから母は気合の入ったドレスを着ているわけだ。聞こえぬように溜息をつく。
校門にたどり着けば、上杉先生とやらは生徒たちを朝の挨拶で迎えていた。

「おお、あれが上杉先生だ。佐助、挨拶せい」
「…おはようございます、上杉先生」
「これはこれは、武田さん。おはようございます」

キリリと吊りあがった目元が厳しそうである。その目でジッと見つめられ、佐助は「まずい」と顔を伏せた。

「武田さん、制服は制服着用日のみ着てもらうものなのですよ」
「ほほう、そうでしたか!明日からはキチンとさせましょう」
「それから…帽子も校則で禁止しています」
「む。これは申し訳ない!」

帽子を取り上げられ、伏せていた顔を見られてしまった。

「…佐助。お主、化粧などしておるのか?」

昨日殴られた部分が目立つので、母のファンデーションをその部分だけ塗りたくったのだ。顔を上向かされて、よくよく見つめられてしまう。異変に気付いた母の形相が険しくなっていくのがわかった。「失礼」と上杉先生にことわって、母は佐助を道の端に引きずっていく。がっしと肩をつかまれ、強い瞳で問いただされる。

「なんだその痣は、ケンカでもしたのか!」
「…柱にぶつけた」
「嘘を申せ。誰にやられた!ワシの息子を怪我させるような者は、この母が断じて許さん!」
「――っ、だから言わないんだよ!」
「……!」
「これは、ぶつけた!柱に!ケンカじゃない!」
「…わかった…」

腑に落ちないような顔をしながらも、なんとか母が興奮を治めてくれたことに佐助は安堵した。
再度上杉先生に向き直ると、やりとりを聞かれていたようで注意を受ける。

「ケンカも絶対に禁止です。厳しく罰することになりますよ」
「先生、これは柱にぶつけたのです。断じてケンカではありません」

母がどっしりとした声で否定する。涼しげな目がジッとその顔を見据え、

「…そうですか。それは変わった柱ですね」

見逃すことにしたようである。
視線を佐助にうつすと空気を切り替えるように「では、武田さん。教室へ」と促された。ひとつ頷いて校舎への階段を登り始めると、「佐助!」と母に呼ばれ振り返る。

「愛しておるぞ!我が息子よ!」
「……うん……」
「愛しておる!返さんか!」
「――俺も、愛してるよ大将!わかったっての!」
「ふはは。よく励めよ」
「ったく」

登校中の生徒たちの視線を集め、佐助は顔から火が噴き出しそうだった。

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