―彼女に触れるのが怖い。


「ねえ、ルーちゃんとロキって、どこまでいってるの?」
「?」
「だからあ、恋人として…最後までした?」
「ぶーっ!!!!!!」

穏やかな休日−午後の昼下がりに、ルーシィは仲の良いレビィと二人でカフェに来ていた。同じ年のため、よくお茶をしたり家に招き招かれたりするし恋話もするがまさかの質問に思わず飲んでいたカフェオレを吹き出してしまったルーシィ。

「な…なにを…」
「大丈夫?服汚れてない?てゆーか、その反応…もしかして、まだ?」
「…………/////」

テーブルを拭きながら顔を真っ赤にするルーシィ。そう、レビィの言う通りまだロキとそういったコトはしていない。それどころか、彼はルーシィにあまり触れようとしなかった。

「あのロキが意外!!会ってその日に女の子を虜にしちゃうヤツなのに…」
「そ、そうなの?」
「あはは、そんな不安そうな顔しなくても大丈夫だよ。それだけルーちゃんに本気ってことじゃない。」
「……」

本当にそうなんだろうか。
ルーシィは表情を曇らせる。ロキと付き合って3ヶ月経ち、もちろん彼は前と変わらず優しいし、ただの星霊とオーナーという絆ではなくもっと深いところで結ばれているはず。けれど、ロキに何か違和感を感じるのも、3ヶ月彼の傍にいて事実だった。実際、ロキはめったにルーシィに触れない。触れる時も、どこかためらいを感じる。
夕方、レビィと別れ帰宅したルーシィが部屋に入ると、そこには呼んでないのにロキの姿。この光景も日常になったなあ、とルーシィはにこっと笑ってロキに「ただいま。」と声を掛けた。

「おかえりルーシィ。」
「もお、呼んでないけどね…」
「はは、でも嬉しいだろ?」
「……嬉しいけど……そんなに頻繁に自分の魔力使ってこっちに来てて怒られない?」

心配そうなルーシィに、ロキは柔らかく微笑み彼女の頭に手をぽんっと乗せようとする。が、その手はギリギリのところで止められそのまま彼の横に戻された。その瞬間、ルーシィのブラウンの瞳が寂しげな色を見せたことにもちろんロキは気付いている。

「大丈夫だよ、別に自分の魔力を使うことで怒られることはないさ。」

そうして、またソファーに座ろうと背を向けたロキに、ルーシィは後ろからぎゅっと抱き付いた。あまりにも突然のことにロキは体を硬直させる。

「ルーシィ?」
「………ロキ…触れていいのよ。」

ぽつりと、ルーシィの口から出た言葉にロキは目を丸くすると同時に彼女への罪悪感に苛まれた。

―ずっと彼女は違和感を感じていたんだ…。

カレンという存在が、ルーシィに触れることを躊躇させていた。いくら事故とはいえ、自分は彼女を死に追いやった存在。そんな自分が、この純情無垢で優しい少女に簡単に触れてしまうのには些か抵抗がある。歯止めが効かずに彼女が壊れるまで、その存在を求めてしまう気がしてならない。そうなった時に変わらず自分のことを愛してくれるのか…ロキの中で、言い様の無い不安と迷いがずっと消えないでいた。それが、ルーシィに触れることを躊躇させてしまっている。

「……ルーシィ…僕は…」
「あたし、触れて欲しいの、本当は。ロキを…近くに感じたいの。」

そう言うや否や、ぎゅっと抱き締められルーシィの顔がロキの肩に埋まる。こんなにきつく抱き締められるのは初めてで、自ら触れていいと言ったものの心臓が爆発しそうなくらいドキドキしてしまっていた。

「……僕、ルーシィが大好きだよ。」
「……うん。」
「……怖かったんだ。君に触れれば、もっと君を求めちゃう気がして。」
「………馬鹿ね。」

―頬を真っ赤に染めて、僕の大好きな彼女は腕の中で呟いた。

「あたしはもう、とっくにロキを求めてるのよ。」


(ねえ、昔は女の子を会ったその日に虜にしてたって本当?)
(…誰に聞いたの。)
(…レビィちゃん。)
(…昔はね。今は僕が虜にされてる方だよ。)
(え?)
(ルーシィに、ね。)
(……ばか。)




躊躇しないで、私に触れて。


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