「なんでだ…」
ある雑誌を見つめわなわなと震える一人の男、いや星霊。その雑誌は星霊界の人気雑誌。もう1つは人間界の人気雑誌。二つを見比べてみるとどちらも表紙は同じ人物像でありどちらもその表紙の人物の大特集なんて書かれていたりして。
「なんでだぁ!!!!!」
「どうしたんだい、スコーピオン。」
後ろからキラキラとしたオーラをまといながら爽やかな笑みを浮かべるのは、獅子の王子。その身から漂う物腰の柔らかさにスコーピオンは腹が立ち、何をそんなに怒っているか気が付かず笑みを浮かべるレオに読んでいた雑誌をつきつけた。
「いてっ…」
「賄賂だな!!」
「…何を怒って………」
「賄賂を使ったんだろ!!!さあ吐け!!俺様がお前に負けるはずない!!」
いきなり意味のわからない脈絡なしの罵声を浴びたレオがむっとしながらつきつけられた雑誌に目を向けると、そこには自分の写真と記事が大きく載っていた。そういうことかと苦笑いを浮かべる。
「ああ、これはこの間の…。一位だったからインタビュー頼まれたんだよね、はは。」
「納得いくかよ!!なにが【爽やかな笑顔と甘い声、優しさ溢れる皆の王子!!】だ!!!なんでお前ばっかりがこんないい思いするんだ!」
そう声を荒げ、ライバル心を剥き出しにするスコーピオンのランクは3位。ちなみに2位はニコラだった。(そこも彼は納得がいかないらしい。)昔から何かとレオと張り合うスコーピオンをいちいち相手にするのも疲れるので放っておくのだが、どうも腐れ縁らしくこちらが放っておいても向こうが放っておいてくれない。いやこれ本当にスコーピオンは自分のこと好きなんじゃないかと思う程に。(前に聞いてみたら殴られそうになったのでもう聞かないことにしたが)
「まあしょうがないよ、皆がそう思ってるんだから。」
「…その、僕はかっこいいからしょうがない発言!!見てろよレオ!!次は絶対に俺様が王子だぜ!!」
決意を叫びレオを指差すスコーピオンに苦笑いで応えながら、早くこの男が自分と張り合うのをやめてくれることを密かに願うレオだった。
「……なんてことがあってさ。」
「仲いいのね二人は。」
まるでナツとグレイみたい―そう言ってレオの話を聞くルーシィの鏡ごしに見える表情は優しい笑顔だった。髪を梳かす彼女を後ろからふわりと抱き締めれば、風呂上がりの石鹸とシャンプーの香りが鼻腔を擽る。
「…レオ?」
「あんな雑誌なんて、別にどうだっていいんだ。」
誰が一位だとか彼氏にしたいだとか、そんなの自分には関係ない―レオにとって大切なのは、今自分の腕の中にいるルーシィ唯一人だけなのだ。出逢ったときからそう感じていた想いが確信に変わり、永遠を誓い命を捧げることを覚悟したのは死を前に彼女に救われたあの日。
「…皆の王子も悪くないけど、」
「きゃっ…」
ふわり、とルーシィを抱き上げて額に優しくキスを落とすレオ。頬を朱に染め上目遣いで自分を見つめてくる彼女がどうしようもないくらい可愛い。
「僕はルーシィ限定の王子でいたいな。」
「……………ばか///」
言葉とは裏腹に、ルーシィの表情には嬉しそうな笑みが浮かんでいる。そのままどちらからともなく唇を重ねれば、部屋には甘い空気が漂い始めた。
君さえ居れば他には何もいらない
「僕が雑誌に載った時どう思った?」
レオがにやにやしながら、いやへにょりと笑いながらルーシィの顔を覗きこむとぷうっと膨れたような顔で「自慢の彼氏だなって思ったわよ?」と、あ、こりゃ本心は違うなと取れることを言うものだから本当は?と意地悪く聞くと、ルーシィは下を向いてむくれたまま、うーと唸る。
「……あたしだけのレオだもん、って、思ったかも…///」
何言わすのよレオの馬鹿アホすけべ、とぽかぽか腕をたたくルーシィを可愛いなあと微笑ましく見つめるレオは、次回も一位になっちゃおうかなと企んだのはお約束。
きみ限定王子志望
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