「初詣、って知ってる?」

なんて言い出したのは僕の契約者であり恋人でもある可愛い可愛いお姫様。新しい年になったつまり一月一日になったわけで、世間は皆神社にお参りにいく、うん、一番最初にお参りする初詣。僕だって知ってる。でも今までなんでわざわざ寒い中に神社なんか行かないといけないんだ人もいっぱいいるしと避けて通ってきたし興味もわかなかった。けど今年は可愛いお姫様もいるわけだし、彼女が行きたいと言ったら連れてこうかな、なんて。そりゃ彼氏だし、彼女が喜ぶ顔見たいし。だけどツンデレいやツンツンツンツンツンツンツンデレ、ないやまあ簡単に言えば素直じゃない、つまりなんてゆうかただの照れ屋さんなだけな彼女がさ、そう簡単に自分から行きたいから行こうなんて言ってくるわけもなく。予想していた通りの切り出し方に知ってるよ、と相槌を打てば新しい年に皆お参りに行くんだって、とこれまたなんつー遠回しな、初詣行きたい攻撃。いやわかるけどさ、超スーパー受け身なルーシィが自分からどこかに行きたいなんて、食材やら日用品の荷物持ち以外に言ってきたことがない。うん、そうゆう子なわけですよ、ま、そこが可愛いんだけどね。可愛いからつい意地悪したくなって、僕は簡単に誘ってあげないことにした。(たまには意地悪したっていいでしょ。)

「ふーん、知ってるけど言ったことはないなあ。」
「え、そう、なの?」
「うん。あんまり興味なかったしね。」
「興味、ないん、だ…?」

あ、きた、萌えですね今耳垂れ下がってますね、バックにしょぼーんなんてかいてあるよほらよく見て。明らかに残念そうな、じゃあ行けないかなと諦めたようなルーシィに僕は内心くすくす笑いながらも、でもと付け加える。

「屋台も出てるって聞いたから今年はちょっとだけ行ってみたい気もするけど。」

あ、出たよ尻尾がぴん、と立ちましたこれ萌えフラグ。僕の一言一言に表情がコロコロ変わるルーシィがなんともまあ可愛くて、どんなフウに育ったらこんなに可愛くなるんだ詐欺だよ騙されてるよ僕だけどルーシィになら騙されてもいいかな、なんてまあ馬鹿なことを思考していると、ルーシィはもじもじしながら上目遣いで僕を見上げてくる。ちょっとだけ頬が赤かったりして。なんだこの可愛い生き物。ずっきゅーんって古典的な表現がぴったりなそんな心境。僕は理性を保ちながら、無心なふりして爽やかに、優しく、どうしたのとルーシィに笑いかけた。

「ん、あのね、レビィちゃんは、ガジルと行くんだって。」
「……うん?」
「…グレイはアリエス誘っておいてくれ、ってあたしに言ってきたし。」
「へえ、そうなんだ。」
「エルザはジェラールと行くみたいで…」
「あ、僕も知ってる。1日だけ解放してもらえるんでしょ、良かったよね。」
「そうよね、ずっと解放してくれればエルザも毎日笑ってられるのに…って、ちがう!!いや違わないけど今はちがううう!!」

きーっと怒り出すルーシィにああ可愛いなあこれだから彼女をからかうのはやめられないと思いながらも何怒ってるの?と尋ねると、べべべ別に怒ってなんかいないわただそのあの…と言い訳なんかしてくる、僕だったらすぐに出てくる誘い文句だって全然出てこない初な少女。どこまで萌え死にいやキュン死にさせるつもりなんだとサングラスの下の目を細めるけど彼女はそんなことには気が付かない。僕の目の前であーだのうーだの相変わらずもじる姿に気の強いルーシィは感じられなくて思わず吹き出してしまった。

「な、なんで笑うのよ!」
「あ、ごめん…くく…だってルーシィ、可愛いから…」
「…!ま、まさか最初からわかって…///」
「…さあ?」

真っ赤なルーシィがわなわなと震えて口を開く。その小さな桜色の唇に指を添えて黙らせ、にこりと微笑み「姫、」と耳元で囁いた。

「初詣に参りましょうか?」



素直じゃないお姫様をエスコートして差し上げます


「ルーシィはいくら投げるの?」
「1ジュエル。」
「…随分少な…げふんげふん、いや十分だよね。」

マグノリアの中で一番大きい神社に初詣に来た僕らはあふれかえる人の多さにげんなりしながらも楽しんでいた。ちょうど前の列の参拝が終わり、自分達の番になったので賽銭を投げて手を合わせる。ちらり、と、隣でぎゅっと目を瞑り何かを懸命にお願いしているふうなルーシィに笑みをこぼしてから前を向き、静かに目を閉じた。

「終わった?」
「うん。」
「あんなに必死に何お祈りしたの?」
「や、やだ、見たの?!」

ああもうやっぱりロキだわとぶつぶつ言っているルーシィに、横顔も綺麗だったよと伝えれば赤い顔がもっと赤くなった。なな何言ってるのよ馬鹿ねそんなこと言っても何も出ないわよ、なんて照れながら前を歩いてくルーシィがおかしかったからぷくくって笑えばどうやら聞こえたらしく「また笑って!」と頬を膨らませていた。これ以上拗ねたらもうロキなんか知らないと言われかねないそれは困る。ルーシィの頭にぽんと手を乗せた。

「おみくじでも引く?」
「うん!」

早く早くと僕の腕をひいていくルーシィ、単純…いや、可愛い。お金を支払いくじをひくと、ルーシィは激しく落胆していて彼女のくじを覗きこむとこれまたある意味ついてるよ普通出ないよってくらいな大凶の2文字。

「内容はそんなに悪いこと書いてないんじゃない?」
「…そうだけど…金運…結果と比例せず苦労するって…」
「器物損害で報酬パーになるってことかな?」
「またそんな一年になるの?!!」

今年は絶対ナツと仕事なんかに行かないんだから!と豪語してるけどまあ無理だろうな、と苦笑いしてみたりして。ああ楽しいな幸せだな、ルーシィは僕がそんなふうに感じてるなんて今は思いもしてないだろうけど。まだ落胆しているルーシィに、他にも何か変なこと書いてあった?と問いかけると、恋愛運の箇所を指差し冷たい視線を僕に投げ付けてきたのでああこりゃまずいと顔を思わず引きつらせる。だって書いていたのは相手方のよそ見注意。いやあははは、うまいことかいてますなっとくるりと背中を向けてくじを結びにいこうとしたけどマフラーをぎゅっと掴まれて逃げられなかった。

「ロキよそ見なんかするのね。」
「いや、ただのおみくじだよ。」
「でも当たってるわ。」
「うーん、あ、そうだほら。」

なによ、と少し不機嫌なルーシィに僕の大吉(ラッキー)を開いて恋愛運を見せてあげる。

関係良好。将来を描く年。

「僕のここがいいから僕らは大丈夫じゃない?」
「……馬鹿。」

僕もルーシィと似たようなことが書いてあったら洒落にならないとゆうかルーシィごめんなさいって感じだけど。僕はルーシィの大凶を一番高いところに結んでその隣に僕の大吉を結んだ。鼻を少しだけ赤くして、これで大丈夫かなあと首をかしげるルーシィに自分がしていたマフラーを巻き付けて手を繋ぐ。

「今年もよろしくねルーシィ。」
「…うん、こちらこそ。」

はにかんだように笑うルーシィは僕の手をギュッと握り返してくる。ああ、幸せだなあ。願わくは神様、どうか彼女の隣にずっとずっといられますように、彼女の笑顔が絶えることがありませんように。

―僕はあの時そう、祈っていた。



素直じゃない誘い方


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