アリエスは悩んでいた。
というより困っていた。一体なににかというと、契約者であるルーシィのことだ。

いつも可愛がってもらって大事にしてもらっているし、アリエスもルーシィのことは大好きだ。しかし、先程から自分を着せ替え人形のように、クローゼットに大量に収められている服を次々に出しては着てみなさいと言ってくる。もう30着目のこの試着に、アリエスは疲れの色を隠せなかった。

「あのぉ、ルーシィ様…」
「ん〜…こっちも素敵なんだけど、ちょっとなあ…やっぱりここはいつも控え目なアリエスには、ちょっと大胆にお色気、いや、セクシー風味にね。」

納得したように頷き、最後の試着よと服を押し付けてくるルーシィに、不満や疑問をぶつけることもできず、アリエスはただ頷くばかりだった。

最後の試着に体を通しながら、理由はわからないがそれでも、こんな風に、人間とおなじように扱ってくれる契約者に出逢えて本当に良かったと、アリエスは少し笑みをこぼす。

(だから、レオはルーシィ様を好きになったのね。)

自分以上に自身を責め、人間不信だったであろう獅子宮の星霊が、命をかけて守ると誓った少女。

「…すごいよなぁ、ルーシィ様は…」

アリエスが鏡の中の自分をぼーっと見ていた時、扉があきルーシィがひょいと顔を出した。

「もこもこちゃ〜ん!!!!」
「うきゃぁっ…」
「あ、可愛いじゃない!」
「…え、」

丈の短いショートパンツと、片方の肩だけが出るデザインのゆったりした鍵編み調の薄手のベージュ寄りの白いニットに身を包んだ牡羊座の星霊に満足気に頷いている。急に恥ずかしくなり、アリエスはもじもじと落ち着かない様子を見せた。

「あ、あのぅ、ルーシィ様ぁ…突然このようなこと…どうかされたのでしょうか…」
「ん?あれ、言わなかったっけ?明日デートだって。」
「…え?だ、誰と…」
「あ、た、し!」
「ル、ルーシィ様が…?え、レオと、ですか?」

戸惑うアリエスにルーシィは一瞬きょとんとしてからぼっと紅くなりなんであいつが出てくるのよ!と喚く。

(あれ、違うんですね、じゃあルーシィ様は誰と、)

「アリエスと、あたしで出掛けるのっ。」
「…………わ、私?」
「そうよ、私1人っ子だからこうゆうの夢だったのよ〜っ。服買ってぇ、ランチしてスイーツ食べて、本屋も行きたいし欲しい雑貨もあるし!」
「……ルーシィ様ぁ…」

ギルドのみんなとあなた達だと距離感が違うのよね、とぶつぶつ呟いているルーシィだったが、じわっとアリエスの瞳に涙が浮かびギョッとした。慌てて彼女に抱き付き謝ると、アリエスはにこり、と微笑む。

「私、う、嬉しいです…」
「……アリエス…」
「僕は妬けちゃいます、姫。」

アリエスはルーシィの肩越しに、後ろからがっちりと彼女の肩を抱き締めてややふてくされ気味の星霊を確認して微笑んだ。ルーシィはといえば、また勝手に出てきて!と迷惑そうにしながらも満更ではない様子。

「ああ、アリエスよく似合うよその服。」
「あ、ありがと…」
「でもルーシィは駄目だからね絶対!」
「は?」
「ルーシィはこれを着ていくこと!」
「ジーンズぅ?って、セーターなんか時期はずれなんですけど!?」

厭々ながらもとりあえずそれを受け取るルーシィはやっぱりどこか嬉しそうだ。いつも星霊界でルーシィに関しての恋の悩みばかりレオから聞いているが、実際に彼と絡む主人は、ただの仲間とか家族とか、そんな言葉で片付けられるような気持ちで彼を意識していないことが見てとれる。気付いていないのは情けなくも彼だけだが、主人が素直になるにはまだ時間がかかりそうだ。アリエスは二人のやり取りにこういうのが幸せっていうのかな、と、胸が温かくなるのを感じていた。





その恋に祝福を、バンビーノ


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