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「あと、なんだろうなあ……、サボり常習で、髪の毛はいつもお団子で、面白くて、天然で」

 天然じゃねーし! あたしじゃねーし! お団子でちょっと期待したのに……。

「食べすぎで倒れたり、雪の日に浮かれて散歩に出かけたり、弟と顔がそっくりだったり……」

 ん?

「……こんだけ言っても誰のことか分からない?」
「…………あたし?」

 東堂くんが黙って頷く。へ? あたし? ちょ、ちょっと待ってよ、情報を整理しよう。東堂くんの好きな人は、あたし? あ、整理するほど情報なかったわ。

「ま、またまたご冗談を……へへへ……」
「で? 真中さんの好きな人、誰?」
「へへへ……言わなきゃ駄目?」
「言わなきゃ課題破り捨てるよ」
「ひいっ……んーと……背が高くてー、恥知らずでー、でもけっこう優しくて、そんで……バスケが得意なのかな? よく知らないけど」
「それ、ヨシのこと?」
「ヨシ?」
「知らない? 奈央ちゃんの幼馴染み」
「あー、あの無愛想くんね。全然違うってば! あたしが好きなのは東堂く……あ」

 東堂くんが、ぽかんと口を開けてあたしを見ている。……言っちゃったよー!
 教室が、夕陽で真っ赤に染まる。あたしの赤い頬も隠してくれてればいいな……こんなに顔赤いの自覚したの、初めてだよ……!

「真中さんは、俺が好きで、俺も真中さんを好き、ってこと?」
「そそそうなっちゃうかな? かな?」

 東堂くんが真面目な顔をした。うわあ、キラキラオーラだよおおお。

「真中さん、好きです。付き合ってください」
「は、はひ……」

 ふっと東堂くんの顔が近づいてきた。急にアップとか反則だから! レッドカード! 東堂くん退場! たーいじょーう!
 そんなことを思っているうちにも、東堂くんの顔は容赦なく近づいてくる。
 ぐうう、きゅるきゅるきゅる……
 東堂くんの顔が止まる。あたしは自分の腹を押さえる。

「お、おなかすいた……あはは」
「あはは。ムードぶち壊し」
「ム、ムード……それよりおなかすい、っん」

 東堂くんが、ぷちゅっとあたしにキスをした。ああああ、あたしのファーストキッス! こんな情けない状態で奪われるとは……。がっくし。

「すず、好きだよ」
「……」

 ぷしゅう。あたしは顔中真っ赤にして、こくこく頷くしかできなかったのである。
おなかすいた……。

 ◆

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