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「すずおはよー」
「おはよう!」
「……」
「どうしたの?」
「いや、すず、なんか、ん?」
「何? あたしどっか変?」
「その口調が変」
「ああ、もうヤンキーの真似事はやめたのさ」
「は?」
「あたしこれから恋に生きる!」
「……どういう心境の変化?」

 訝しげに、奈央があたしを覗き込んでくる。へっへーん、昨日までの真中すずとは違うんだぜ! 落としてみせるぜ、東堂里玖!

「昨日あーちゃんと話し合ってね」
「殴り合いの間違いじゃなく?」
「失礼だよ、奈央」
「うわーなんかさぶいぼなんですけど、その喋り方」
「うるさいなー、そのうち慣れてくるって!」

 お団子にした髪の毛を揺らし、奈央に笑いかける。とりあえず、東堂くんに挨拶をば……。まだ来てないのか。

「おう、里玖、ハヨ」
「おはよ」

 来たー!

「東堂くん、おはよ!」
「あ、おはよう真中さん」

 にっこり笑ったそのスマイル! 輝いてますぜ!

「すずー」
「何?」
「気合い入れるのもいいけどさ、明日から冬休みだよ?」
「えっ?」

 携帯を取り出して、日付を確認する。今日は十二月二十二日……。

「えーっ!?」
「ま、冬休み明けに頑張りな」
「聞いてないし! 明日から冬休みとか聞いてないし!」
「真中さん」
「へっ?」

 後ろを向くと、東堂くんが立っていた。

「な、なあに?」
「今日は髪の毛お団子なんだね」
「まあね、伸ばしてるだけじゃつまんね……つまんないし」
「似合ってる。可愛いじゃん」
「……」

 褒められた? 今褒められたよね? 頑張って団子つくってきたかいありましたー! 朝あーちゃんに変な目で見られてたの知ってたけど、すべてがこれによりチャラでございます! 帰りあーちゃんにカステラ買ってってやろ!

「こ、光栄です……」
「光栄って……」
「東堂くんも、茶髪きれいだよね」
「ああ、自染めなんだけど、どうかな」
「いけてます!」

 東堂くんが苦笑する。ああ、その笑顔でご飯三杯がっつりいけるよ!

「里玖ー」

 むっ、この声は。
 東堂くんが向かった先を見ると、やはりまりんちゃんが立っていた。
 めっちゃ化粧濃いけどめっちゃ可愛いまりんちゃんは、男子の人気者。しかしあたしや他の女子は知っている。まりんちゃんが化粧を落とすと、眉がなくなることを……。ついでに、微妙なにきび痕もたくさんあることも。ていうか逆にメイクで努力してんのは素直にすごいと思うけど!
 東堂くんはまりんちゃんと談笑している。さすがの東堂くんもまりんちゃんのメイク技術には気づかないか。はやく気づけボケ!
 じりじりと視線を送っていると、まりんちゃんがそれに気づいて、あたしに手を振った。とりあえず笑って振り返す。東堂くんがこっちを見て笑う。ああっ、キラキラオーラが眩しい!

「すずー?」
「悶絶……」
「ったくもう」

 冬休み明けから、がんばるぜ!


 ◆

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