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「うひゃ!」
「……ん、あれ? すず……?」

 なんの夢を見ていたのかいきなりあたしを抱き寄せて、油断していたあたしはりっくんの胸に頭を激突、思わず声が出てしまい、りっくんはその声に反応して起きてしまったようだ。
 いたずら終了。ぐすん。

「起きてたの……?」
「うん」

 りっくんは、窓の外を眠そうに見て、『今日泊まってくでしょ? 電話しといたから』と言って伸びをした。やっぱり! 些細な気配りが素敵!
 そして伸びをした拍子に、例のそれが存在を主張した。
 ……。
 ぽちっとな。

「わ、なに!?」
「え……これ、ほしいなー、て思って」
「は? 何言ってんの?」
「でも、男の子しかないんだよねー……」

 自分のそこを触ってみたけど、なんにもない。
 いいなぁ男の子は、と思ってため息をつくと、上からさらに大きなため息。

「……喉仏なんか、あってもなくても一緒でしょ」
「でも、動くじゃん!」
「……え? あ、あー……動くかもしれないけど……」
「ほしいなー」
「……これがすずについたら、声が俺みたいに低くなっちゃうかもよ?」
「え、それやだ」
「それどういう意味? 俺の声がいやってこと?」
「りっくんの声好き」
「そう?」

 残念だけど、生きてる間は我慢してね、と諭すように言われてしまい、子ども扱いされているようだけどやっぱりその通りなので、黙る。

「じゃ、ご飯つくろっか。何食べる?」

 りっくんが立ち上がって、そこらへんに脱ぎ捨てた服の中から下着を探す。
 りっくんには恥じらいってものがないから(すずだってないだろ!)、部屋の中を平気で素っ裸で歩く。
 最初のうちは、両手で目を覆って指の隙間からチラチラ見てたんだけど(そうだったの!?)、最近は慣れてしまったので大丈夫、むしろ凝視できる(しなくていいから!)。
 ……。

「……それほしい」
「……すず、何言っちゃってるの? 喉仏よりもまずいよ」


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