今夜の冷蔵庫 1


 泣く子も黙るクリスマス。
 俺はもくもくと目の前に山積みになった仕事と戦っていた。
 ついでに教えてやると、昨夜クリスマス・イブも、深夜まで残業していた。
 みんながウキウキして、彼氏だ彼女だ恋人だレストランだ夜景の見えるホテルだ、と騒いでる時分に、俺はプレゼン書類と戦っていた。な〜にがウキウキじゃ、貴様らはお猿さんか。
 恋人がいる奴はもれなく滅びていただきたい。友達以上恋人未満の浮ついた関係の奴らは、タンスの角に小指をぶつけていただきたい。

 ◆

 同期であり上司である男への怨恨を原動力に、仕事は7時に片付けてやった。
 明日出社したら覚えていやがれあの恋人ボケが。
 ぶちぶちと文句を垂れながら会社を出た直後のことだ。
「…………うそーん」
 バケツをひっくり返したような土砂降りに見舞われた。
 お天気お姉さんの話を聞き忘れたせいなのか。途方に暮れたような顔をしている奴は極少数で、皆やれやれといった風に傘を広げて去っていく。
「チクショー野村覚えてやがれぇ!」
 鞄を傘代わりに、同期兼上司へ暴言を吐き、真冬の雨の中を走り出す。
 革靴の中に、凍てつくような温度の水が浸入してきて、気持ち悪いし、痛い。きっと鞄の中も、目も当てられない状況になっていることだろう。
 神様が本当にいるのなら、自分の誕生日にお楽しみ、なんていう不謹慎なカップルどもを粛清してくれたっていいのに。

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