「うん。教えてー」
「青子にはまだ早いよー。高校生なんだから、そのぷにぷにお肌、大事にしなきゃ」
「ちょっとだけ! ナチュラルメイク!」
「うーん」
青子はなんだか悔しかった。雅美の顔や、今日の夕方ショッピングビルでミキに声をかけてきた女の顔を思い浮かべる。きれいに化粧をしていた。
せっかくミキと仲良くなったのに、自分の居場所はそこにないような気がしてしまい、さびしかったのだ。だから、せめて少しくらい、と青子は思ったのだ。
春菜に化粧を教えてもらい、朝はミキのモーニングコールで起きたあと、のんびりせずにきびきびと準備をし、化粧をする時間をつくった。女の人って大変なんだなあ、などと思いつつ、チョコレートのかおりがするマスカラをちょんちょんとまつげに塗ってみた。
だがしかしミキはあまり反応してくれなかったのだ。可愛いとは言われたが、言わせたようなもので、その自覚は少々青子にもあった上に、彼はきれいだとは言ってくれなかった。
いつもどおりミキとショッピングビルのゲームセンターで遊んだ帰り道、青子は唇を尖らせた。
「ミキちゃんって、女の子の知り合い多いのかなあ」
なんとなく、そんな気がする。ちょっともやもやするが、そのもやもやの発生原因が分からない。なぜ私はこんなにもやもやしているのだろう?
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