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 担任に、出席日数が少なすぎて点をつけられない、お前は留年だ、という話をされたミキは、実家を追い出され、従兄の家へと転がり込んだ。
 
「え、留年?」
「うん」

 ミキは、この従兄のことをずいぶんと慕っていた。と言うのも、この従兄は元暴走族の一員で、今でこそ普通の生活をしているが、若いころはかなり派手だったのだ。日々女遊びやけんかに勤しみ、改造バイクで環状線を走っていた。
 男は一度は不良に憧れる。ミキも例外ではなく、そんな従兄を畏怖の対象としていた。そしてその敬愛の結果がこれである。

「ミキも、しばらく見ないうちにでっかくなったねえ」
「去年会ったばっかじゃねえか」
「ま、この家にあるものは好きに使っていいよ」

 ミキは、暴走族などには所属していないし、バイクの免許もバイクそのものも持っていないが、女遊びは激しい。どこかの不良とけんかするまでではないが、女絡みで何度か血を見たこともある。
 そして、ミキがこの従兄の家にやってきてわずか数週間が経ったころ、従兄は突如大きな荷物を持ってどこかへ行ったまま、しばらく帰ってこなかった。
 ミキは気にはなったが、きちんと留守番をしていた。そして、二週間ほどして帰ってきた従兄に、テレビを見ながら聞く。

「何、女?」
「まあ、そんなとこ。半同棲みたいな」
「ふーん」

 そんなこんなで、ミキが再び高校一年生をやる羽目になった四月ごろ、従兄はほとんど帰ってこなくなった。ラッキー、と思いつつ、ミキは今年こそきちんと進級しなければ、とまじめに学校に通っていた。時々、留年仲間と理科室で悪いことをしていたが。
 そんな折、ミキは運命の相手に出会ってしまったのである。

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