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 次の日、青子はまるでいつもどおりだった。ミキのモーニングコールで目を覚まし、昼休みはミキのつくった弁当をもきゅもきゅと食べ、おいしーね、と言って笑った。そして、自販機で買ったいちごみるくをちゅうちゅうすすっている。

「青子、ついてる」
「ん」

 青子の頬についた米をミキがすくって口に入れる。いつもの風景だ。社会科準備室の床にふたりで座って、食事をする。いつもの風景だった。
 ミキは、青子に今日のこと、墓参りに行くのかとか、そういうことを聞こうか聞くまいか悩んで、結局言葉は出なかった。なんと言えばいいのか、口下手でボキャブラリーが少ないミキには、うまい言い回しが思いつかなかったのだ。
 青子はにこにこ笑っているし、天気はいいし、それでいいではないか。などと柄にもないことを考えたりしていた。実際、それでいい気がしたのだ。
 窓から見える四角い空は、青くまろく切り取られている。


20120601
20160625

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