ギリシア彫刻が微笑う
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興味津々の女の子たちと言い、あゆむに純太と言い、みんなちょっと失礼なんじゃないのか。俺は彼女をつくってはいけないのか。
というわけ、ってほどでもないのだが、というわけで女の子たちにより、俺と比奈ちゃんのことは瞬く間に学校中に広まった。
梨乃ちゃんによると、連日俺の恋人を見ようと詰めかける生徒たちに、比奈ちゃんは不思議そうにしながらもおどおどしているらしい。女の子ならまだいいが、男もたまに見に来るらしく、しかも話しかけられたりもするのでずっとびくびくしているのだとか。想像すると可愛いけど、困りものだ。
「あの子が好みだったら、どーりでうちらと付き合ってくれないわけだ」
「タイプ違いすぎだもんねぇ」
なんて言われたりもしたが、別に比奈ちゃんは好みでもなんでもなく、むしろ正反対だ。俺自身はもうちょっと……いやかなり、ボリュームがあるほうが好きだ。そりゃあ小さくて可愛いとは思うけど、稚児趣味だと思われても困る。
「もしかして尚人、ロリコン?」
マザコンの自覚はあるがロリコンではないです、はい。
ああいうタイプじゃなくて、比奈ちゃんが好きなだけです。そこんとこは誤解のないようお願いします。
いろいろ尋ねられるたび、そう切り返していると、なんだかますます彼女を好きな実感がわいてくるようで、これなら噂も悪くはないかな、と少し思った。
「最近、なんだかみんなに見られている気がするです」
「……気のせいじゃないと思うよ。ごめんね」
「どうして先輩が謝るですか?」
「見られてるのはほとんど俺のせいだから」
「ふーん……」
いつものように手をつなぐと、一瞬の戸惑いののちに手に力が込められた。この瞬間がたまんないんだよなあ。
今日もタマに会いに行くと言って笑う比奈ちゃんに、笑顔を返して、学校の近くに部屋を借りて、ほんとうによかったと思う。ちなみに今のところ、災いもないし幽霊も出てきてない。
比奈ちゃんにお札とかを見せたらなんだか二度と俺の部屋に来てくれなくなりそうなのでとりあえず黙っておこう。
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