ギリシア彫刻が微笑う
04

 困りきった表情に、まだ曰くには続きがあるのだと理解する。ややあっておじさんは、右手を軽く上げて三本指を立てた。

「入居者が、三人連続で変死を遂げまして……」
「変死?」
「急な心臓発作と、通り魔事件の被害者と首吊り自殺……」
「ふーん。ねえ拓人、俺ここでいいや」
「なんだって?」
「だって家賃サンゴーなんですよね?」
「いや、ヨンゴー」
「サンゴーですよね?」

 思い切りのいい笑顔で、おじさんには申し訳ないがちょっと勉強していただくことにする。

「……」
「おいヒサト、さすがに三人は……」
「大丈夫大丈夫、俺悪運は強いから。あ、ちなみにペットって」
「OKですけど……ここはほんとうにおすすめできない……」
「タマと一緒に住むのが大前提だしね」

 反対するおじさんと拓人を振り切り、半ば無理やり拓人を頷かせる。自分が住むわけでもないのに半泣きで契約する拓人に、悪いことをしたかな、と少し思う。彼は俺の身を案じてくれて半泣きでいるわけだし。
 でも、正直悪霊が出ようが住人が変死を遂げていようが人が死んだ部屋だろうが、俺にはどうってことない。ほんとうに悪運だけは強いし、拓人に言ったように足のない人間よりも生きている人間のほうが怖いのだ。