海に恋して君に恋して
13

「……すぷ」
「予想通りの展開だね」
「ほんとですね」
「疲れたんだろうな」

 帰りの電車の中で、比奈ちゃんはすっかり夢の中だった。遊び疲れたのだろう。少し日に焼けて赤くなっている頬が愛らしい。
 梨乃ちゃんの肩に頭をもたれかけ、すうすうと規則正しい寝息をこぼす姿に、思わず苦笑したくなるような気持ちになる。

「癒されるなあ」
「ストレスあったんですか」
「失礼な……今を生きる若者はいつでもストレスに晒されてるんだよ」
「フフ」

 あまりに失礼なことを言うので文句を言えば、隣に立っていた拓人がくすりと隠れて笑った。この野郎。
 まだ明るい夏の夕方の景色は、金色に輝いては電車に追い越されて姿を見覚えのあるそれへと変えてゆく。
 地元に着いても寝ているのを起こすのがしのびなく、拓人がその小さな体を抱え上げると、比奈ちゃんはうっすらと目を開けた。

「起きた?」
「ふ……? わあ!」

 拓人に抱えられていることに気付くと慌てて暴れ出したので、地面に降ろされる。
 比奈ちゃんは改札を通るとたたっと小走りで出口に向かいながらくるっと振り返った。

「ばいばいです! またね!」
「待って、送っていく」
「えっ」

 俺も改札を通ると、比奈ちゃんがきょとんとした顔で俺の背後を見た。振り返ると、まったく改札を通る気がなさそうな二人が突っ立っている。
 拓人はともかく梨乃ちゃんがそんなの珍しい、と思いながらも、俺は比奈ちゃんの横に並んで二人に手を振って歩き出した。

「楽しかったです!」
「うん、俺も」

 歩きながら比奈ちゃんがご機嫌なのを見て、なんとなくほっこりしてしまう。比奈ちゃんがふらふらと歩くので時折俺の手と彼女の手が触れて、なんだか妙に、くすぐったかった。

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