OMAKE
思い出ぽろぽろ

「うわあ……」
「どうだ、可愛いだろう!」

 比奈の家に遊びに行くと、お兄さんがいた。この間休日出勤した代わりに有休を取ったらしい。このあと仕事上がりの亜美さんとデートするんだそうだ。
 比奈がトイレに行っている間に、お兄さんが部屋に侵入してきた。いいのか、おい。と思っていると、お兄さんは抱えていた何冊かの大きな本を俺の前にばさっと置いた。

「これなんですか?」
「見りゃ分かんだろ、アルバムだよ、アルバム」
「アルバムってこんなんなんだ……」

 初めて見た。ページを開くと、生まれて間もない様子の赤ん坊が泣いている様子が写真におさめられており、その横には丁寧な字で「妹誕生!」と書かれている。ははあ、なるほど、お兄さんのお兄さんによるお兄さんのための比奈のアルバムというわけか。
 こちらを見て笑ったり泣いたりしている赤ん坊は、正直今の比奈とは似ても似つかない。が、首がすわって、離乳食を食べたり、はいはいしたりしているゾーンにくると、くるっと丸い目や小さな口元がなんとなく比奈を思い起こさせる。

「0歳〜1歳……」

 タイトルを入れる部分にはそう書かれている。まさか、この分厚いアルバムが、一年ごとに更新されているのか。ちょっとぞっとして、残りのアルバムのタイトルを見ると、年々年齢の幅が広がっている。ちょっと安心。
 俺は、3歳〜5歳のアルバムを開いた。

「かっ……!」

 可愛い!

「ふっふふー、あれ、お兄ちゃんなにやってるのー……あ! 比奈のアルバム!」

 比奈が戻ってきた。真っ赤になった比奈が慌ててアルバムを回収しようとしているので、俺は慌てて12歳〜15歳を開いた。

「ぶっ」
「先輩見ちゃいやだー!」
「可愛いだろう! どうだ! セーラー服!」

 犯罪だ……セーラー服を着て、黒い髪の毛を肩まで伸ばしている比奈が悶絶可愛い。コスプレとか興味ないけど(嘘。ほんとはちょっとある)、この比奈なら淫行条例とかロリコンとか言われても関係ないくらい、いける。
 比奈が取り返そうと必死なのをかわしながらページをめくる。ああああ可愛いよ可愛すぎてどうしたらいいのか分からないああああ可愛い可愛い可愛い可愛い……

 そして現在。

「彩奈、こっち向いてごらん」
「ぱぱー」
「はい、いい子ー」

 パシャ!

「さっちゃんは、彩ちゃんにぞっこーん!」
「写真を撮ってさ、昔懐かしむときが楽しいじゃん」
「比奈もうーつる!」
「いいよ、ふたりとも、笑って」

 愛くるしい幼児の彩奈にぞっこんの尚人であった。


20110409