OMAKE
最愛
朝起きたら、隣には小さな明るい毛色の猫が寝ていた。
さらさらとした毛並みに、お上品なヒゲ。体に見合う小さな耳は、小さな物音に反応して時折ぴくぴくと動いた。
比奈……?
ドアの向こうに、小さく呼びかけてみた。
返事はなかった。
あの、小さい、喉が震えるほどにいとおしい、かわいいかわいい女の子。全部全部なにもかも、夢だったのだろうか。
猫が、目を覚ました。
真っ黒な瞳は、吸い込まれそうなほどに澄んでいた。
おまえ、どこから来たの?
猫は、甘えるように体を擦り寄せて、かわいく鳴いた。そっと抱いて、そのつややかな毛並みを撫でてやると、猫は気持ちよさそうに、ごろごろと喉を鳴らした。
比奈、比奈。
何度も呼ぶと、猫が俺の手の甲に爪を立てた。
ああ、なんだ。ここにいたんだね。
猫の耳に柔らかなキスをする。
世界で一番大切な、君。ずっとずっと抱いていてあげる。もう離したりしないから。
20080212