04



 飯を食い終えたあと、空は昼寝モードに入ってリビングのラグの上ですっかり夢の中だった。それを横目に俺は頼子に言う。

「空はさあ」
「ん?」
「ちょっとわがままだよな」
「……あゆむが、そんなこと言うの?」
「俺別にわがままじゃねーだろ」
「あはは」

 あははってなんだ、失礼すぎるだろ。
 長男の達樹は、ほとんどイヤイヤとかわがままとかを言わない。言えば分かる、そんな利口なやつだ。まだ小学校二年生だけれど、なぜか繰り下さがりのある引き算ができる。誰も教えてなんかいないのに。
 それに比べてこの次男坊は、口を開けばわがまま放題、人の言うことは聞きやしないわ、天邪鬼だわ。

「おんなじDNA受け継いでんのに、こうも差が出るもんか?」
「皆違って皆いい、だよ」
「達樹の物分かりよすぎるのも問題だと思うから、ちょっとこう、二人を足して割る感じに……」
「あははは!」

 頼子が、膨れた腹を揺すって笑う。今度はどうやら女の子らしくて、名前の候補もいくつかあって。無事に生まれてくればなんでもいいけれど。
 女の子だったら、俺よりは頼子に似たほうがかわいくなるよなあ、と自分とほとんど同じ顔をしている姉を思った。別に姉ちゃんがブスとは言わないが、小生意気であるのは間違いないからだ。

「空は、あゆむにそっくりだよ」
「はあ?」

 俺に似ると将来不安だなあ、喧嘩とか喧嘩とか喧嘩とか。
 そんなことを思いながら、俺は頼子の腹に手を置いて、すうすう規則正しく寝息を立てて大の字になっている空を見た。


20150630

prev | index | next