03



 まだ遊ぶ、と言う空に、腹減らねえか、と聞くと素直に頷いたので、腕を引いて連れ帰る。相手も、眠たそうにしていたので昼寝の時間だったのかもしれないで、帰っていく。

「おかえり、あゆむ、空」

 頼子はすでに帰宅していて、ちょうど飯ができそうになっているところだった。台所から醤油を焦がす匂いがする。チャーハンだな。
 空の、砂や泥でぐちゃぐちゃになった服を着替えさせているうちにチャーハンの盛られた皿がテーブルに並べられて、頼子がにっこり笑って言う。

「パパと公園、楽しかった?」
「たのしくなかった! じゅんぺいがいた!」

 頼子の目が丸くなる。それから、そう、と呟いて。

「楽しかったんだね」

 たぶん、日頃仕事をしている俺より、頼子のほうが当然空の公園通いの回数は多くて、あの男の子と出くわす機会も多いのだろう。俺にも、空は楽しそうに見えたのだから、じゅんぺいがいた、その事実を聞いた頼子が楽しかったのだと結論づけたのはある意味当然に感じる。

「じゅんぺいが、ぼくにすなかけた!」
「でもきっと空も純平くんに何かしたよね?」
「してないよ!」
「さ、ごはん食べよう」

 唇を尖らせて、しぶしぶ空が席につく。そして米を散らかしながらチャーハンをぱくぱくと口に入れつつ、俺を見る。

「とーさんとあそんでも、たのしくない」
「悪かったな、俺も楽しかねえよ」
「……」
「あゆむ、遊んであげたの?」
「いや?」

 俺はただひたすら空と男の子が遊ぶのを見ていただけだ。時折、母親としょうもないやり取りをかわしながら。
 頼子がくすくす笑って、一緒に砂のお城をつくってあげなくちゃ、とあっさり無理強いしてくる。

「俺たぶん、こどもがやる遊び向いてねえんだよ」
「そうかなあ……」

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