02



「ただいま」
「お、お、おかえり」

 あゆむが、仕事から帰ってきた。わたしは夕ご飯をつくっていたところをすっ飛んでいっていつものように出迎えようとしたけど、あゆむの顔を見た途端ぎこちなくなってしまった。

「何?」
「あ、あのね」

 フライ返しの柄をいじっていると、あゆむが靴を脱いで部屋に上がる。そして、その辺ではいはいしている達樹を抱き上げて、リビングのテーブルの上にあった例のものを見て、わたしを見て、ああ、とうなずいた。

「届いたんだ」
「あの、あゆむ」
「中、見た?」
「見てない……あの、その……」
「とりあえず着替えてくる」

 達樹を抱っこしたまま、あゆむが寝室に消える。
 わたしは、とりあえずお魚が焦げてしまわないようにキッチンに戻って、あゆむが来るのを待った。
 着替えてさっぱりした顔のあゆむは、達樹を抱っこしたままわたしに一瞥もくれずその封を切った。

「聞いたら、思ったより安いプランあるらしいから」
「……」
「達樹一緒には厳しいから、うちの家に預けてもいいし」
「……」
「母さんたち、達樹の面倒見たいっぽいし、たまにはいいだろ」
「……」
「聞いてんの?」
「あ、あのさ」

 なんだか、たまらなくなって、くるりと振り返ってあゆむを見ると、彼は平然とした顔で資料に目を通していた。……フォトウェディングの。

「あの、なんで急に?」
「別に、急じゃなくね?」
「急だよ! だってわたし何も聞いてないもん!」
「だから、資料請求してんじゃん、いきなりスタジオ連れてきてるわけじゃねえんだから。ここでやるって決めたわけじゃねえし、そもそもやると決めたわけでもねえよ」
「でも……」
「……写真、撮りたくねえの?」

 眉を寄せて、不機嫌そうに聞いてくる。

「とっ……、でも……」
「やりたくねえなら、やんねえけど」
「……」
「俺は、お前が花嫁さんとかそういうの好きそうだって思ったから、勝手にこれ頼んだだけだし」

prev | index | next