02
何着か試着してもらって、あゆむに一番似合う色と柄を見極め、レジに持っていく。あゆむの顔がますます不思議そうなそれに変わる。きちっと、お店に並んでいたのじゃない、新しいTシャツを出してもらって包んでもらう。
「おい、ひよ」
「お誕生日、おめでと!」
眉を寄せているあゆむに、そんな言葉とともに紙袋を手渡すと、ぽかんとした。
「は?」
「やっぱり気づいてなかったあ」
携帯で日付を確認しているあゆむが、納得したように、ああ、と呟いて紙袋を素直に受け取る。それと同時に、頬をつねられた。
「いひゃい!」
「余計な気ィ回しやがって」
余計だったの!? うれしくないの!?
つねられたところを手で押さえてあゆむを見ると、ちょっと笑われた。あ、うれしいんだ。そうなんでしょう。
「あとはー、あゆむの好きなとこ行こ!」
「……ここ、スイパラある?」
「うーん、分かんない……探す?」
んん、可愛い! スイパラだって! 甘いもの好きだもんね!
結局スイパラはなかったので、適当にカフェに入っておいしいケーキを食べて、あゆむの誕生日のお祝いをして、今日は珍しくおうちコースでもなく、普通に別れた。ちょっとさみしい。あゆむは絶対、俺の誕生日なんだから何でもしてくれるだろ、的な要求を突きつけてくると思っていたのに。
という愚痴を、翌日学校であゆむの友達の日野純太くんにぶつけると、日野くんは少し考えて呟いた。
「……逆にそういうことしなさそう」
「えっ」
「理由つけないと女抱けない! とかカッコワルイこと言わなさそう!」
「あっ……なるほど……?」
分かるような、分からないような……。とりあえず日野くんがあゆむをある種羨望の目で見ているのは分かった……。
20100321
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