07



 ふたりに引っ張られるようにして現場にたどり着くと、そこにはあゆむと思しき金髪が、数人の男子生徒と男性教師によって取り押さえられ、廊下の床に首を押さえつけられて身動きが取れなくなっているところだった。
 そして、その向こう側にはやはり取り押さえられて、あゆむの数倍冷静ではあるものの口の端に血がにじんでいる、花田くん。

「テメェら離しやがれ! ぶっ殺すぞ!」
「うわっ、真中やめろって」
「あゆむ!」

 喉は、泣き疲れて思ったよりかすれていた。
 それでも、床にひれ伏す彼には届いたみたいだ。ぴくん、と首から上が跳ねて、彼を押さえる男子生徒をにらんでいた瞳がひゅっと、わたしを捉えた。

「ひよ……」
「なんでこんな……」
「るっせぇよ」

 駆け寄って、持っていたぐちゃぐちゃのタオルで、あゆむの腫れた額からにじむ血を拭き取る。
 抵抗されるかと思ったけれど、おとなしくされるがままなのを見て、あゆむを取り押さえていた人たちは恐る恐る彼の上からどいた。あゆむは動かない。
 様子からして、あゆむが花田くんに喧嘩をふっかけたのは間違いないだろう。喧嘩のせいなのか諌められた時の抵抗のせいなのか、あゆむは体中に大小さまざまな傷をつくっていた。
 あゆむが喧嘩早いのは前から知っていた。それでも最近は、些細なことでは怒らなくなったのに。
 理由がなんであれ、喧嘩なんか絶対にしないでほしいのに。

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