男子会(FT

ロキとグレイは悪友っぽいな。ってのとジェラールをそこに混ぜてみたいなっていうのと。
直接表現はないけど少し下世話。



グレイだって年頃の男の子だ。自画自賛する訳ではないが、それなりに顔は良いと思っているし、モテている自覚もある。クエスト先で後腐れ無いイイ一晩を過ごしたことだって何度となくあった。それでも、それでも此処まで爛れてはいなかったぞ、とグレイは思う。いまだ
「うっわジェラールくんサイテー」
「お前にだけは言われたくないな」とゲラゲラ笑っている彼らと一緒にされたくはない。酔いが回っているのだろうか、ジェラールは何時になく饒舌だ。こいつこんなに喋るやつだったのか…。隣でバンバンと床を叩いているロキは何時も通り。酔っ払った彼は笑い上戸になって、時折ジェラールの肩を揺する。ジェラールの方も為されるが侭に体をゆらしながら、グレイが買ってきたツマミを口に運んでいる。空になった酒瓶がゴロゴロと床には転がっていて、明日起きたら片付けが面倒そうだ、とグレイは思ったが此処はジェラールの家だ。自分には関係ない、そう結論づけて、テーブルの上の瓶を一つ取ると直接口を付けて中の酒を全て呷った。ひゅー!とジェラールとロキが横で囃し立てている。こんな下ネタが蔓延した空間で何が悲しくて自分だけ素面でいなければならないのか。腹を括ったグレイは理性をかなぐり捨てて、女性が聞いたら眉を顰めるような二人の会話に加わった。
「でさ、その時口説いたのが誰だっけ?何とかって評議員の孫娘で…」
「ああ、あれお前だったのか。レイジだろ?めちゃくちゃ怒ってたからな。あの眼鏡」
「で、実際のとこどうだったんだよ?」
「サイアク。向こうから誘ってきたのに全然。生娘かよって」
「サイアクじゃん」
「しかもマグロ」
「なんでお前がしってんだよ、ジェラール」
「お前と穴兄弟になる日が来るとは思っても無かった」
そう言えばこいつは元評議員だった。レイジとかいうジジイの孫娘と知り合いでもおかしくはない。
「同僚の孫娘食ったのかよ」
「不味かったんだから許せよ」
「しかも1度ヤッたくらいで彼女面。僕はその街には任務で寄っただけだったから置いてきちゃったんだけど。あ、もちろん宿代は払って置いたよ?」
「キャーロキくんやさしー」
「で、お爺ちゃんに言い付けてやる、ってあの惨状?フェアリーテイルにまで苦情がきてマスターが怒ってたぞ」
「やっぱり遊ぶなら後腐れない、そーいうの割り切ってる子に限るね」
「そう言えばお前はどうなんだ?グレイ。お前だってその顔で遊んでないなんて言わないだろ?」
「あー、グレイはね、よくクエスト先で助けた女の子と一晩を楽しく過ごしてるよ」
「役得ってやつだな」
「うっせ。…そう言えば、それで一度酷い目にあったんだよ」
「夜だったから綺麗に見えたけど朝になったらとてつもないブサイクだったとか?」
「ちげーよ、いや、それはそれで恐ろしいけどよ。そのクエストは村に出るっつーモンスターを倒せってヤツでよ、その依頼自体は大したことなかったんだよ。夜も遅いし、ってんでその村に一泊させてもらうことになって」
「で、その時夜這いかけてきた娘が実はモンスター」
「ちげぇってんだろ、ロキ」
「その娘は良かったんだよ、美人だったし胸も大きかったし、若ぇし」
「最高じゃん」
「何が不満だったんだ」
ジェラールは手元の酒瓶が空になったのか、新しい瓶を取り出すと魔力の衝撃波を与えて栓を切り落とした。横にコルク抜きがあるだろ、横着するなよ。
「問題は翌朝。その村では初体験を捧げた相手と契る、ってのがあってな」
「つまり結婚させられそうになったと」
「それでそれで、どうしたの?グレイ。まさか式あげちゃった訳じゃないでしょ?」
「あげるか、バカ。報酬は既に貰ってたから逃げてきた」
「えーグレイくんひどぉーい」
「結婚を約束した子を置いてくるなんてー」
息がピッタリな二人に腹が立つ。お前ら人のこと言える様な御身分じゃねーだろ。腹に一発見舞ってやろうか、と思ったが大虎相手にそれをしては胃を逆流した何かによって大惨事に見舞われる様な気がしてやめた。
「そもそも依頼受けてきた人間を無理矢理結婚させようって方が酷いっての」
そうこう言っているうちに俺の握っていた缶も空っぽになっていた。ロキが手際よく新しいのを渡してくる。プシュ、プルタブを持ち上げれば軽い炭酸の音。
「それ、こないだクエスト行った街でジェラールが貰って来たやつ。その地方の麦酒だって。美味しいよ」よく見ればロキの手にも同じ色の缶が握られている。
「それにしてもジェラールがこう言うネタイケる口だとはねーもっとこう、潔癖?なのかと思ってた」
「あー確かにな。なんつーの?ギルドの女達が『王子さまみたーい』って言ってたしよ」
裏声を使って彼女達の言葉を再現したグレイにロキが「きっも」と引いてみせる。
「今はエルザ一筋だからね」
ふふ、という微笑みは昼間のギルドで見せるのと同じそれ。
「そうそれ!その顔に皆騙されてやがんだ」
ギルドでジェラールがこんな下世話な会話を自分とロキと一緒になってしていたと暴露しても誰が信じるだろう。日頃の行いって大事だ。ずるいなちくしょう。
「あーー今の会話ギルドでキャーキャー言ってる女共にブチまけてやりてー」
「やめろ」
「女の子は俺やグレイみたいな肉食っぽいのも好きだけど、王子さまみたいなのには無条件で弱いからね」
そう言えば、とジェラールが思い出したように手を打った。
「王子様というより暴君だけど、お前らはラクサスとは飲んだりしないのか?」
「ラクサス?」
「なんで此処でアイツ?」思いがけない名前にグレイとロキは疑問符を飛ばす。彼とはジェラールよりもよっぽど長くギルドにいた仲間ではあるが、本の少し前まであまり親しいとは言えない仲だった。主にラクサスがグレイ達と付き合おうとはしなかったせいなのだが。
「いや、ねーな」
「僕も、そういえば彼と飲んだことはおろか一対一で話したこともあまりないかもしれない」
過去を回想するように首を捻る二人を見てジェラールも首を傾げた。
「そうなのか、てっきり…。いや、あいつと飲むのは中々に面白いぞ?」
「ジェラールお前、ラクサスと飲んだりするのか?」
「たまに、な」
「意外だな、ラクサスって丸くなったとは言えあまり人付き合いしない質だと思ってたよ」
「ならば、今度あいつも誘うか?こう言う下世話な話でもあいつは乗ってくる」
「まじかよ」
「酒が入ってればな」
意外と言えば意外な彼の一面を聞いロキがうずうずしだす。彼の周りには空になった酒瓶が幾つも転がっていた。
「そう言えばラクサス、今日はマグノリアに帰って来てるって言ってたよね?」
「おいまさか、今から行こうってのか?ラクサスん家」
一応咎める様な言葉を口にしてみるものの好奇心には勝てない。既に腰が半分浮いていた。
「ちょうど酒も無くなりかけてきたし、途中で買っていこう」
ジェラールは何時の間にか手元に財布を用意していて、確実に出掛ける気でいる。
「ここの片付けは?」
「俺がやっとくよ、どうせ明日は暇だし」
ならば、とグレイも立ち上がる。ロキは飲みかけの酒缶を片手にフラフラと玄関に向かっていた。慌てて追い掛けて肩をかしてやる。その後を部屋の電気を落としたジェラールが追い掛けてきて、三人は夜の街に、新たな酒と話のネタを求めて繰り出した。


「ラックサスくーん、あっそびーましょ」


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