罪重ね(FT/モブジーク※

評議員×ジークレイン



相変わらず生意気な猫だ。初老に差し掛かった男はそう言った。白いシーツを引っ掛けたまま寝そべるジークレインは頬杖をついて顔を男の方へと向ける。情事の後の気怠い色香を隠そうともせず、濡れた瞳で男をじっと見上げている。汗ばんだ白い頬に薄く張り付く長い髪は窓から差し込む月の光に晒されて青色に輝いていた。ベットの淵に腰掛けている男の手には上等のカットグラスとそれを満たすに相応しい上等の酒。一口、と男の手にあるそれをねだる。口元に差し出されたグラスを男の掌ごと握り込み、少し傾けた。舐める様にして口に含んだブランデーは人肌程度にぬるく、強烈な味が舌を刺す。未だにぼーっとしたままの頭を覚醒させるには十分な刺激を受けて、ジークレインは瞬きをした。
「でも嫌いじゃねぇ、だろう?」
悪戯にふふ、と笑ってやれば男は決まりが悪そうにふん、と息を吐いた。ジークレインの手から引き剥がしたグラスをそのまま自分の口元にやり、一口飲むとサイドテーブルに置こうと身を乗り出す。その拍子にぎい、とベットが軋んだ。
「あーあ」
もう一口欲しかった、とぼやきかけた唇を男の唇が塞ぐ。無遠慮に重ねられた唇を押し開く様に舌が差し込まれ、さして抵抗することもなくジークレインは唇を開いた。舌を絡めとり歯列をなぞる男の舌先はねちっこく、強烈なアルコールの味がした。いつの間にかベットに乗り上げ、再びジークレインを組み敷いた男は先程までの情事の名残を色濃く残すジークレインの身体に指を這わす。シーツ一枚の防御は容易く破られ、節くれだった硬い指の腹が白い肌をうっそりとなぞっていく。右手は胸の飾りを擦り、カリカリと二、三度引っ掛かれただけでそこはぷっくりと芯を持った。そうしている間にも左手はジークレインの身体の上を滑り、肋骨、脇腹、そうしてごつり、と出っ張った腰骨の上へと辿り着く。そこに確かに骨があるという事を確かめる様に、ゆっくりと指は動き、その緩慢な動作にジークレインの背をゾクゾクと歓喜が駆け抜けた。やんわりと勃ち上がったジークレインの中心に気が付いて男は好色そうな双眸を細める。そのまま下腹部を滑った左手はジークレインのそれを包み込み、裏筋に指を這わせた。
「ッ…ァァ…」
思わず口から声が溢れる。女の様に高くはした無い嬌声が男の左手が与える刺激に呼応する様に次々と引き出されては部屋に響いた。意識が全て下半身にもって行かれている隙を男は見逃そうとはせず、芯を持ち固くなっているジークレインの右胸の飾りをきゅ、と摘まんだ。
「ァアア…ッ」
思いがけない刺激にジークレインの背中が反り、一際大きな嬌声があがる。上気した頬が紅に染まり、いつも人を見下した様な色をした瞳は生理的な涙に濡れていた。そうだ、その声がその顔が見たかった。生意気な猫が手の内に収まっているのだと実感できるこの表情が。完全に勃ち上がったジークレイン自身を掌で握り込む様にして、擦り上げてやればアァァ…と女の様にその細い喉を晒して呆気なく達した。息を荒げ、薄い胸を上下させるジークレインを見下ろして、何とも言えない充足感が込み上げる。
「相変わらず女の様に敏感だ」
「…うるせ、え」
左手に絡んだ男の欲の残滓を見せ付ける様に眼前に晒してやればジークレインはふい、と目を逸らす。減らず口を叩く薄い唇はきゅ、と結ばれていて普段からそうしていればまだ可愛げがあるものを、と思う。残滓を潤滑油代わりにして、尻の窄まりに指を這わす。まだ中には差し入れず、淵をなぞり、皺の一つ一つを押し開く様にゆっくりと指先を動かせばその焦れったい動作にジークレインの腰が揺れた。ぴくぴくと張った素足がシーツを掴みくしゃり、と皺をつくる。ふたたび荒くなり始めた息、そうしてそれを耐えようと固く結ばれた唇を乱す様にいきなり指を突き入れた。
「ッ…や、あ」
情事の名残を色濃く残したそこはいとも簡単に男の指を飲み込んだ。貪欲な女の蜜壺の様に、生暖かい内壁は男の指を咥えこんで離さない。一本、二本、と増やしていくたびにジークレインの背は反り、喉を震わせて戦慄いた。再奥に処理される間もなく残っていた先程自分が吐き出した欲の残骸は内壁を自在に動き回る指によってかき混ぜられる。くちゅくちゅと卑猥な水音を立てるそこは、ジークレインの羞恥をひどく煽り、同時に男の中の征服欲を満たした。
「中から溢れてきて、まるで女の様だ」
わざとジークレインの自尊心に爪を立てる様な真似をする。そうすれば彼の身体はいつだって敏感に反応し、中がきゅうと締まるのを知っていた。
「はぁ、ゃ…あぁあ……!!」
そこを見計らって、前立腺を擦り上げてやれば一際大きく嬌声があがる。大きく怒張して、いまにも達しそうなジークレインの陰茎を指で輪を作る様に握り込んだ。
「え、あっ…ゃ…め…」
先走りに濡れそぼったそこを手でやわやわと揉みしだきつつ、射精はさせない様にと堰き止める。解放を邪魔され行き場のない熱に魘される様にジークレインはかぶりを振った。男にしては長い、透ける様な青の髪が真白のシーツに散らばる。いやいや、と子供の様に駄々をこねるが、それでも指を咥え込んだ穴は緩むことも無く、それどころかより一層男の指を締め付けてくる。
「ゃっ…あ、やめ…っ」
薄い胸が大仰に上下し、逃げをうつ腰を力でもって押さえつけた。せめてもの抵抗にと男の肩口を押し返そうとする両腕には最早力など無く、尻の窄まりに入れたままの指でくちゅ、と中をかき混ぜてやればひぃ、と喉を震わせて両腕はシーツに落ちた。
「どうしたい?言わねばわからんぞ」
ァ、ァ、と小刻みに震える身体はじっとりと汗ばんで苦しそうに身悶えしている。陰茎をわざとキツく握り込んでやれば、シーツに張った両脚が痙攣する様に震えていた。ジークレインの喘ぎ声ばかりを紡ぎ出す唇が戦慄いて、どうにか言葉をつくりだす。
「ィ、きた…い…ぁ…っん」
人を食ったような低音はこの時ばかりはなりを潜め、熱に浮かされた様に素直にはした無い欲望を口にする。
「良く言えたな」
男はそれに下卑た笑みを返し前立腺を押し潰すようにして擦りあげれば、ジークレインは呆気なく達した。はぁはぁ、と肩を震わせて荒い息を繰り返すジークレインの肌に浮かぶ玉のような汗が月光に反射してまたたいている。女の様に白い、女の様に細い、それでいて鍛え上げられた肉体は美しい曲線を描いていた。顔を覆う両腕の隙間から、上目遣いに此方を伺う眼は黒に近い金をしている。それが月明かりの下ではよりいっそう輝きを増していて、男は情事の合間にその瞳を見詰めるのが好きだった。未だ荒い息を繰り返すジークレインの両脚を抱え、一息にその中心を穿つ。待て、という声が聞こえたきもしたが、それも直ぐにか細い喘ぎに混じって消えた。ぐずぐずに解れた秘所は比喩で無く女の様に男の陰茎を飲み込み、ぎちぎちと締め付ける。
「…相変わらず、お前の中は良い、な」
「ふざ、け…んん…ッ」
ゆっくりと腰を動かせば堪らない、というふうにジークレインの腰が揺れた。もっと、とねだるような強欲な動きに自然口元が緩む。律動を早めれば全身を快楽にわななかせて、ジークレインは嬌声をあげ続けた。断続的なその音は広い部屋に吸い込まれては消えていく。結合部はくちゃくちゃと卑猥な水音を漏らし、痙攣する様に震え始めたジークレインの腿に男は彼が達する気配を感じた。自分もそろそろ限界が近い。ぐい、と改めて膝裏を抱え直せば、一際深く楔がジークレインの中を穿った。
「ァ……ひ、ん…ッ」
その衝動で彼の中がきゅう、と収縮し男もつられる様にして欲望を彼の中にぶちまけた。ジークレインも綺麗に割れた腹の上に白濁を撒き散らして、放心した様に瞼を閉ざしている。ずるりと萎えた陰茎を彼の中から引き出す時、余韻に縋るようにジークレインの身体は一度ぶるりと震えた。
「くっそ…また中に出しやがって…」
ぐい、と男の身体を押し退けてジークレインは上体を起こす。そうして結合部から溢れ出ている白い液体を指先で救うと唇に運んだ。真っ赤な舌が細く長い指をちろり、と舐め上げる。卑猥だ、猥雑だ、と男は思った。
「まっず…シャワー借りていくぜ」
先程までの情事の余韻など忘れ去ったような淡白な声音で勝手に此方の許可を取り付けるとジークレインは生まれた侭の姿でベットから降り立ち、シャワールームへと続くドアへと歩いていく。ぺたりぺたりと月明かりしか差さない部屋を移動する白い影は、やはり美しい。均整の取れた、男として完成された肉体がそこにあった。ドアノブに手をかけたところで男の視線に気が付いたのか、ジークレインはくるりとベットの方を振り向いた。そこにはいつもと変わらない、人を食った様な笑みが浮かんでいる。
「今日はもうしねーぞ」
冗談めかしたその口調に男はいつも会議の席でする様に、つい条件反射で眉を潜めた。こら、ジーク。よさんか、そう次の言葉を口に出しそうになって漸く気が付く。此処は別に評議院の円卓では無い。そんな男の様子をひとしきり笑った後、ジークレインは漸くドアの向こうへと消えていった。バタン、という音。暫くして聞こえてきた水音と微かに聞こえる歌声。年頃の青年らしいその声を聞きながら、男は先程までの自らの行いを振り返る。本来なら評議員同士が密な関係を持つのは良く無い、それをあろうことか此処までの関係を持ってしまうとは。それも、孫程の年の差のある青年相手に。露見すれば大事になる、議員としての責任だけで無く倫理的も糾弾されるだろうことは想像に容易い。何度この関係を終わりにしようと思ったことか、けれど男がそう思うその度にジークレインはふらり、と男の部屋に現れて、あの蠱惑的な微笑みで男を誘うのだ。良い酒が手に入ったんだ、あんたも飲むよな?とか最もらしい理由をつけて。ソファに腰掛け、何処そこのギルドが、政府の人間が、闇ギルドが、それよりも評議会の下部組織が、と他愛も無い世間話を繰り広げているうちにジークレインの首元が寛げられているのに気がつく。普段頑なに晒される事の無い喉元は眩しい程に白く、目の毒だった。さらに話が進むうちにジークレインは酒気が回ったのか、暑い、と上着を脱ぎ出す。想像するよりも細い手首だとか、青年期独特のまだ幼さを遺す関節だとか、そこまでいくともう駄目だった。何度目かの終わりにしようという決意を忘れ去ってしまう。今日の様に、いつもの様に。そうして気が付けばベットの上に押し倒しているのだった。

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