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ふわりと髪がたおやかに梳かれた。その優しい手つきにまどろむ世界がゆるりと顔を上げる。そうっと目蓋を開くと、ベッドに肘をつけて寝転ぶ玲央が、甘く微笑みながら俺を見つめていた。


「……れお」

「おはよう」

「……うん、おはよ……」


力の入らない笑みを浮かべると、玲央は口元を緩めながら今度は耳たぶを撫ではじめた。
自分の口から漏れ出る声が可哀想なくらい枯れていて、喉を擦ると困ったように玲央が口を開く。


「悪いな、無理させて」

「んーん……平気、嬉しかったよ?」

「へぇ? そりゃ良かった」


まるで獣のように互いを求め、玲央を体内で感じたあと、それでも足りないと俺を求める獣はしかし、ひたすらに甘く俺を抱いた。涙や鼻水や唾液に塗れた俺の顔中に舌を這わせ、男のくせに感じる乳首を愛で、もう精液も出なくなった俺の物をゆるく扱き、玲央を求めて離そうとしない中をもどかしいほど時間をかけて慈しんだ。
言葉数は少なく、そのくせ合間合間に俺の名を呼び、目が合うたびに絡む舌はなよらかに俺を溶かした。あんなに甘くて蕩ける時間は刻むほどに俺を駄目にしたが、いつしか気を失ってから目覚めるまでの今、体の汚れも失せ、シーツも新しくなっていると分かればまた、俺がぐずぐずに溶けてしまう。


「……れお、好き」

「知ってる」


滴るほどに潤った瞳が俺を捕え、弧を描いた。それがあまりにも綺麗で、思わず身を寄せると耳たぶを撫でていた手が俺の肩を抱き寄せる。
あぁ、気持ちがいいなぁと落ちそうな意識を奮い立たせ、ゆっくりと口を開いた。


「玲央……あのさ」

「あ?」

「結婚のこと、なんだけど」


なんだか顔を見るのが怖くて、つい石けんの香りがする胸板に額を押しつけると、玲央がそんな俺の首筋を撫で上げる。


「しなくても、俺は玲央のこと信じてるよ?」

「そう言うと思った」

「え……わっ!?」


頭上で息の漏れる音が聞こえたかと思うと、あっというまに玲央に押し倒されていた。両手首を掴んでベッドに押しつける玲央の眉間には、不機嫌そうにしわが寄っている。




 


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